【怖がり】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/16 PM 5:35
「なぁ、真夜(よる)。
宵と古結(こゆい)は、趣味嗜好が
だいぶ違う感じがするけど、
共通点ってあるのか?」
コンビニで買い物をしている2人を
外で待ちながら、天明(てんめい)が
聞いてくる。
「……あるよ。2人とも、お化け屋敷とか
ホラー系、全くダメ」
「――ふはっ……。……そうか、2人とも
怖がりなのか。それは可愛いな」
幼い頃、お化け屋敷の中で
オレにしがみついて大泣きしていた
宵と暁を思い出す。
思えばあれも、オレが2人を守らないと、
と、強く思った要因のひとつだった。
【星が溢れる】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/14 PM 6:45
「うわぁあ~! 真夜(よる)くん、
これ何? すっっっごくキレイ!」
暁が真夜から受け取った
ホワイトデーの贈り物を見て
興奮気味に問いかけている。
「《クリスタルハーバリウム》って
いうものだよ」
「なんだか名前もオシャレだね!
お花がいっぱい詰まって
キラキラしてる……ほんとにキレイ。
ね、宵ちゃん! これ、スゴいね!」
「そうね、確かに……綺麗だわ」
「ありがとう~、真夜くん!
お部屋に大切に飾らせてもらうね」
「気に入ったなら、良かった」
「気に入らない訳がないよー!」
「……ああ、ちなみに。部屋を暗くして
ライトで照らしてみると、また違った
感じになるみたいだよ」
「えっ、試してみたい!」
暁に言われるがまま、真夜が部屋の
電気を一度消す。
「……わ、暗闇の中でライト当てると、
中のお花のキラキラが
更に強まる感じがするね~!
ロマンチック!」
スマホのライトをかざしながら、
暁が更にハーバリウムに見入っている。
暁のハーバリウムは、
柔らかなオレンジ色のバラを
メインに、白いブバルディアや
ライスフラワー等で構成されていて。
アタシのハーバリウムは
濃い色のブルーローズをメインに
ブルースターやかすみ草等で
構成されている。
闇の中、たくさんの花々が
光っている様子は、
まるで星が溢れているようだった。
【安らかな瞳】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/12 PM 2:50
「――あ、インターホン鳴ってる」
暁が音に反応して、ゲーム画面から
視線を外してオレの方を見る。
「お荷物でも届いたの?」
「いや、天明(てんめい)が
来たんじゃないかな」
「……は?」
玄関へ向かおうとしたのか、
ソファから腰を上げた宵が
そのまま固まった。
「宵と暁に用があるって言うから、
なら、うちに来れば? って
LINEで住所送っておいたんだよ」
「……やるねぇ、真夜(よる)くん」
ニコニコ笑っている暁とは対照的に、
宵は呆然と立ちつくしたままだったので、
オレが玄関へ向かうことにした。
「いらっしゃい、天明。
迷わず来られた?」
「ああ、学校から近くて
分かりやすかったよ。
――お邪魔します」
リビングへ戻ると、暁がひらひらと
手を振って天明を迎える。
「いらっしゃーい、天明くん。
わたしたちに用事って聞いたよ~」
「悪いな、急に」
「全然悪くないよ。どうしたの?」
「あー……。フライングになるけど、
バレンタインのお返し渡しに来たんだ」
「そうなんだぁ。
……けど、どうしてフライング?」
「それは……。俺、バレンタインの時、
気持ちに応えられないから、
受け取れないし、お返し出来ないって、
基本的に断るスタンスだったんだよ」
「でも、押し付けられまくってたね」
「まぁ、そうだったんだけどな。
一応全員にお返し出来ないって言った
手前、学校で古結(こゆい)たちに
お返しを渡すのは控えた方がいい気が
したんだ」
「……ん? あれ? ……それって、
わたしたちだけに、お返ししようと
思ってくれたの?」
「……そうだな。古結たちには、逆に
しないって選択肢が俺の中になかったな」
「わ~。天明くんて義理堅いっていうか、
友情に篤いっていうか……。
ふふ、ありがとう、とっても嬉しい。
ね、宵ちゃん」
「え、あ……そう、ね? ……ありがとう」
じゃあこれ、と、天明が2人に
お返しを差し出す。
暁にはホワイトショコラの中に
苺ガナッシュが詰まったトリュフ。
宵には猫の肉球の形をしたクッキーと
フィナンシェの詰め合わせ。
しっかり好みが把握出来ているな、と
思う。
「美味しそう!」と喜ぶ暁と、
「可愛い」と思わず呟く宵を見て、
天明はほっとしたような、
安らかな瞳で2人を見つめている。
どうやら天明にとっても、
2人はもう、特別な存在に
なっているのかもしれない。
【ずっと隣で】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/11 PM 3:05
「宵ちゃん、真夜(よる)くん、
紅茶淹れたよー。
2人がコーヒー党なのは
重々承知してるけど、このお店の
マドレーヌにはセイロンティーが
イチオシだから!」
「「暁」」
「うん?」
「アンタはアタシたちの側にいなさい」
「ずっと隣で、笑ってて」
「ええー!? 2人とも急に
どうしたの!? 嬉しいけど!」
「……ここのマドレーヌ、美味しいわよね」
「紅茶も美味しいよ、暁」
「う、うん。……え、わたし、
幻聴でも聞いたかな……?」
【平穏な日常】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/11 PM 3:00
「♪僕が隣にいない方が
君は幸せかな
そんな事話したなら君は
バカだなって笑うかな♪」
暁がCDプレーヤーから流れてくる
歌に合わせて歌っている。
「……バカね」
「バカだな」
上機嫌で歌いながら、キッチンで
紅茶を淹れている暁には聞こえない
くらいの声で、宵とオレは呟いた。
暁がオレたちの隣にいない。
その方が幸せなんて、
そんな事はあり得ないのに。
勿論これは歌の歌詞で、
暁自身が言った訳じゃないけれど。
でももし、暁がそんな事を
言い出したら、歌詞の通り、
バカだな、と言って笑うしかない。
キミと過ごす平穏な日常を、
宵とオレがどれだけ大切に
思っているか。
一体どこまで自覚出来ているんだろう。
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暁が歌っているのは
『明日、世界が終わる前に』という、
40mPさんの曲です。
曲もシャノさんの優しい歌声も癒しです。