【愛と平和】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/10 PM 5:00
「愛が欲しい」
「……天明(てんめい)ー、千颯(ちはや)が
気持ち悪いこと言い出したー」
部活が終わって、部室で着替えていると、
翼(つばさ)が俺の方へ逃げながら
言ってきた。
「気持ち悪いって何だよ!」
「いや、脈絡なく面と向かって
そんなこと言われたら怖いからね?」
淳(じゅん)が翼を庇って
千颯をたしなめる。
「ちげーよ! 翼に愛を寄越せって
言ったワケじゃねーし!」
「なんだ、びっくりさせんなよー」
「なんで急に愛が欲しいなんて言い出したの」
「そりゃ愛が足りねーからだよ。
俺だって青春を謳歌するために
彼女が欲しいんだよ!」
「部室で吠えられてもなー」
「翼の言う通りだよ。
彼女が欲しいなら、部活の見学に
来てる子たちに声かけてみるとか
すればいいんじゃないかな」
「明らかに天明目当てだろーが、
あの女子の群れは」
「……まぁ、確かに」
「あ、じゃあ、天明に星河(ほしかわ)さん
紹介して貰うとか?
気になってるんだろー?」
「宵様は彼女になって欲しいっていうより
俺の心の女王様みたいな存在だけどな」
「……悪い、千颯。どう考えても、
宵たちの平和な日常を脅かしそうで
紹介出来ない」
「……ふっ、まさか、お人好しのお前から
こんな冷酷プレイを食らうとはな……。
腕を上げてるじゃねーか、天明」
「変な褒められ方してるなー、天明」
「このメンツはある意味
平和で良かったね、天明」
「(良かったのか……?)」
【過ぎ去った日々】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/9 PM 5:00
「お金より大事なものなんて、
この世にあると思う?」
部活が終わって、ボールを整理カゴに
片付けながら、綾音(あやね)が言う。
昨日、晩ごはんを一緒に食べながら、
真夜(よる)と暁もそんな会話を
していたことを思い出した。
「それはまぁ、あるでしょ。夢とか」
「愛とか?」
「健康とか」
「信用とかかしらねぇ」
バスケ部のメンバーやマネージャーの
暦(こよみ)先輩が口々に答える。
「あ、宵は言わなくていいわよ。
どうせ真夜くんと古結(こゆい)っち
だろうから」
「(決め付けが強いわね……)」
否定はしないけれど。
「……そういえばさぁ、宵。
サッカー部の槇(まき)くんとは、
どういう関係なの?」
「あっ、それ、私もずっと気になってた!
練習試合、見に来てくれてたよね?」
美羽(みわ)が話題を急変させる。
それに興味津々の様子で心愛(ここあ)が
乗ってきた。
「話、逸れたわよ、綾音」
「自分で話振っといてなんだけど、
もう正直どうでもいいわ。
あたしもあんたとイケメンの
関係の方が気になるし」
「関係、と言われても……」
――槇くんと知り合ったのは去年の12月。
それから今日までの過ぎ去った日々を
思い返せば、いつの間にか一緒にいる
ことが多くなった人、という印象で。
でも、どういう関係なのかは、
よく分からない気がした。
何しろ今まで、アタシたち3人と
ここまで近しく……親しく?
なった人はいなかったから。
「……恩人?」
「なにそれ、どういうこと?」
「暁を助けてくれた人なのよ。
だからアタシも真夜も、槇くんには
感謝しているし、話をしたり一緒に
行動することが多くなったというか……」
「要は付き合ってるとか、
恋バナ出来そうな関係じゃなく、
今の所ただの友達ってこと?」
瑠宇依(るうい)が簡潔にまとめてくれた。
「友達かぁ。それでも羨ましいかも。
あんなイケメンと仲良く話せるって」
「そうだよね! 槇くんてイケメン過ぎて、
気軽に話しかけにくいもんね。
だからバレンタインにここぞとばかり
女子が群がったんだろうねー。
話をするチャンス! みたいな」
「推しとして、遠くから眺める位で
ちょーどいいタイプじゃないの?
あのイケメンは」
「はい、今日はこの辺でおしまい。
片付け終わったら体育館出るわよ~」
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女子バスケ部員
巽 綾音(たつみ あやね) → PG
有澤 美羽(ありさわ みわ) → SG
岩崎 心愛(いわさき ここあ) → PF
荻原 瑠宇依(おぎはら るうい) → C
暦 優花(こよみ ゆうか) → マネージャー
【お金より大事なもの】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/8 PM 7:30
『貴方にとって、お金より
大事なものは何ですか?』
「お金より大事なものだって~。
真夜(よる)くん、宵ちゃん以外にある?」
テレビから聞こえてきたインタビュアーの
問いかけに、暁が反応して訊ねてくる。
「暁」
「わぉ。真夜くんは優しいねぇ」
暁はよくオレのことを
優しいと言うけれど、
オレはただ、優先順位が
はっきりしているだけだ。
宵と暁以外は、何もかも
取るに足りないものなだけ。
【月夜】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/7 PM 9:00
暁が「宵ちゃん、月が綺麗だよ」と
電話してきた。
その言葉につられて、窓から夜空を
見上げたら、皓く輝く満月があった。
「今日って満月の日だったのね」
「そうみたいだね~。
今夜みたいに綺麗に見えるお月様も
好きだけど、朧月も素敵だよね。
柔らかくほのかに霞んで見えるのが
こう……いかにも春! って感じで」
「まぁ、風情があるわよね」
「急にあったかくなって、今年は桜の
開花も早くなりそうだって言うし。
春休みになったら、月夜にお散歩して
夜桜見物するのも良さそうじゃない?」
月と桜、綺麗の相乗効果が
ありそうだよねぇと
歌うような口調で暁が言う。
「……真夜(よる)にも伝えておくわ」
「それってOKってことだよね。
やったー、楽しみにしてるね!」
【絆】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/4 PM 3:00
「やっぱり、鬼滅は何回見ても
兄妹の絆の強さに感動するねぇ」
「……そうね」
「まぁ、わたしたちの絆も
なかなかのものだから、誰にも
引き裂けないと思うけど!」
「それはどうかしらね」
「ちょっ、宵ちゃん!
そこも素直に『そうね』でいいから!
否定されたら、わたしがスベった
みたいになっちゃうでしょ!」
「はいはい」
「……真夜(よる)く~ん」
「心配しなくても、誰にも引き裂けないよ。
オレがさせる訳ない」
「……うん、安心した。
さすが真夜くん、全くブレがない」