【過ぎ去った日々】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
3/9 PM 5:00
「お金より大事なものなんて、
この世にあると思う?」
部活が終わって、ボールを整理カゴに
片付けながら、綾音(あやね)が言う。
昨日、晩ごはんを一緒に食べながら、
真夜(よる)と暁もそんな会話を
していたことを思い出した。
「それはまぁ、あるでしょ。夢とか」
「愛とか?」
「健康とか」
「信用とかかしらねぇ」
バスケ部のメンバーやマネージャーの
暦(こよみ)先輩が口々に答える。
「あ、宵は言わなくていいわよ。
どうせ真夜くんと古結(こゆい)っち
だろうから」
「(決め付けが強いわね……)」
否定はしないけれど。
「……そういえばさぁ、宵。
サッカー部の槇(まき)くんとは、
どういう関係なの?」
「あっ、それ、私もずっと気になってた!
練習試合、見に来てくれてたよね?」
美羽(みわ)が話題を急変させる。
それに興味津々の様子で心愛(ここあ)が
乗ってきた。
「話、逸れたわよ、綾音」
「自分で話振っといてなんだけど、
もう正直どうでもいいわ。
あたしもあんたとイケメンの
関係の方が気になるし」
「関係、と言われても……」
――槇くんと知り合ったのは去年の12月。
それから今日までの過ぎ去った日々を
思い返せば、いつの間にか一緒にいる
ことが多くなった人、という印象で。
でも、どういう関係なのかは、
よく分からない気がした。
何しろ今まで、アタシたち3人と
ここまで近しく……親しく?
なった人はいなかったから。
「……恩人?」
「なにそれ、どういうこと?」
「暁を助けてくれた人なのよ。
だからアタシも真夜も、槇くんには
感謝しているし、話をしたり一緒に
行動することが多くなったというか……」
「要は付き合ってるとか、
恋バナ出来そうな関係じゃなく、
今の所ただの友達ってこと?」
瑠宇依(るうい)が簡潔にまとめてくれた。
「友達かぁ。それでも羨ましいかも。
あんなイケメンと仲良く話せるって」
「そうだよね! 槇くんてイケメン過ぎて、
気軽に話しかけにくいもんね。
だからバレンタインにここぞとばかり
女子が群がったんだろうねー。
話をするチャンス! みたいな」
「推しとして、遠くから眺める位で
ちょーどいいタイプじゃないの?
あのイケメンは」
「はい、今日はこの辺でおしまい。
片付け終わったら体育館出るわよ~」
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女子バスケ部員
巽 綾音(たつみ あやね) → PG
有澤 美羽(ありさわ みわ) → SG
岩崎 心愛(いわさき ここあ) → PF
荻原 瑠宇依(おぎはら るうい) → C
暦 優花(こよみ ゆうか) → マネージャー
3/9/2023, 5:00:20 PM