紗夢(シャム)

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2/27/2023, 3:49:03 PM

【現実逃避】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/26 PM 3:00
「現実逃避したいねぇ~」
「……してるじゃない。今まさに」
「え~? 違うよ、宵ちゃん。
 わたしにとって、ゲームは
 現実逃避じゃなくて、習慣」
「じゃあ、暁にとっての現実逃避って?」
「みんなでディ○ニー○ンドに
 遊びに行きたいねぇ、ってこと」
「はぁ?」
「え? だってあそこは夢の国でしょ?
 現実から逃れた場所でしょ?」
「……あのテーマパークに遊びに行く
 ことを、現実逃避って……アンタの
 言語感覚はどうなってるのよ……」
「天明(てんめい)くんは絶叫系大丈夫かな。
 部活の予定と一緒に聞いてみよー」
「(誘うのは決定なのね……)」

2/26/2023, 4:33:09 PM

【君は今】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/26 PM 0:15

「やっぱ部活の後は、これだよなー」
「そうだな。天明(てんめい)、
 もうそっちもひっくり返していいぞ」
「了解」

 サッカー部行きつけのお好み焼き屋。
 今日も部活後に数名で昼飯を取るために
 訪れている。
 牛玉、豚玉、えびいか玉、
 明太もちチーズ、と注文はバラバラだ。

「そういや天明さぁ。
 古結(こゆい)さんとは、
 その後どーなってんの?」
「ん?」
「ほら、動けなくなってた古結さんを
 保健室に連れてったことあったろー?
 あれ以来、結構一緒にいるとこ
 見かけるから、付き合ってんのかな、
 って思って」
「ああ、あの時は翼(つばさ)も
 いてくれて助かった。
 ――確かに、あれ以来よく話すように
 なったけど、付き合ってる訳じゃないな」
「マジか。あのシチュエーション、
 絶対恋が始まりそうだったろー。
 もっとグイグイ攻めろよ、
 FW(フォワード)だろ、天明」
「いや、FWだろって言われてもな……。
 基本的に、古結と二人きりってことは
 ないからな?」
「それだよ!」

 ダンッ! と、それまで俺と翼の会話を
 聞いていた千颯(ちはや)が、勢いよく
 ヘラをお好み焼きに突き立てる。

「おおおー? 急にどーしたー? 千颯」
「宵様と仲良くしてんの、
 うらやましすぎるんだよ……!」
「は……?」
「千颯は、星河(ほしかわ)さんに
 気があるみたいだよ」

 突然エキサイトした千颯とは対照的に、
 冷静にお好み焼きをヘラで切り分けながら
 淳(じゅん)が言う。

「へー、そうだったのか。
 っつーか、宵様って。
 なんでそんな崇めてる感じ?」
「馴れ馴れしくしようもんなら、
 超冷たい瞳で睨まれて踏まれそうだろ」
「――いやちょっと待て!
 それは誤解にも程がある!
 宵、そんなヤツじゃないからな!?」
「……くっ、呼び捨てとはやるな……。
 自分がそんなことしようものなら、どんな
 調教されるか、考えるだけで恐ろしい」
「あ、これむしろ蔑んだりされたいやつか。
 天明、言うだけ無駄っぽいぞー?」

 言うだけ無駄と言われても。
 宵本人だけじゃなく、真夜(よる)にも
 絶対聞かれたらマズイ内容な気がする。

「天明、君は今、何考えてる?
 ……ま、何にせよ、お好み焼き、
 焼けたからね。
 熱くて美味しい内に食べなよ」

 淳が綺麗に切り分けたお好み焼きを
 皿に乗せてくる。
 何を考えているかと言ったら、
 それはもう、宵のことだ。

 (本当にごめん、宵)

 千颯が変な誤解をしていることを、
 酷く申し訳なく思う。
 なんとか誤解を解きたいけれど、
 どうにも骨が折れそうな予感がした。

====================
 サッカー部員
 蘭 翼(あららぎ つばさ) → MF
 守崎 千颯(もりさき ちはや) → GK
 桜ノ宮 淳(さくらのみや じゅん) → DF

2/26/2023, 6:32:50 AM

【物憂げな空】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

12月某日

 その日は朝からずっと、いつ雨が
 降り出してもおかしくないような、
 どんよりとした暗雲が垂れ込める
 物憂げな空模様の寒い日だった。

 (あ……やばい)

 急に視界が白くなる。
 立っていられなくなって、
 思わず階段に座り込んだ。

 (……くらくら、する。貧血、なのかな)

 とにかく、今動くのは危なそう。
 そう判断して、目を瞑って
 じっとしていたら。

「――大丈夫か!?」
「…………?」

 耳鳴りがしていて、よく分からなかった
 けれど、多分、大丈夫かと聞かれた。
 ゆっくりと目を開ける。

 (……うわ……)

 目の前に、とんでもなく
 イケメンな人がいた。
 わたしと視線を合わせるためか、
 しゃがみ込んでくれている。
 え、なにこれ、変な幻見てる?

「天明(てんめい)、どうしたー?」
「具合悪そうな子がいるんだよ」
「マジか。……あれ、古結(こゆい)さん?」
「知り合いか?」
「同じクラスだけど、話したことは
 ないかもなー。双子の星河(ほしかわ)
 兄妹と一緒にいるのをよく見かける」
「そうか。……俺の声は、聞こえる?」

 聞き取り辛いけれど、
 聞こえてはいたので、頷いた。

「顔色かなり青白いな」
「動けないんだと思う。
 ――悪い、抱えるな」

 (…………え?)

 温かさと浮遊感。
 それを感じたと思ったら、
 お姫様抱っこされていた。

 (……ええええ?)

「ごめんな、なるべく
 揺らさないようにするよ」
「古結さん、天明背がでかいから
 抱っこされんの高くてちょっと
 怖ぇーかもしんないけど、
 落とさないから心配しないでいいよ」
「翼(つばさ)、一緒に来てくれるか?
 保健室のドア開けて欲しい」
「っつーか、先に行って
 保健のセンセーに話通しとく」
「頼む」

 ・
 ・
 ・

2/26 AM 11:30

「……っていうのが、天明くんと
 友達になったそもそもの
 きっかけだったんだけど」
「……そんな乙女ゲーみたいな出会いを
 自分の娘が体験してるとはね……。
 恋に落ちる音が聞こえそうなくらいよ」
「実際は、めまいと耳鳴りが酷くて
 きゅんとしてる余裕はなかったな~」
「その出会いでフラグが立たないのも
 驚きだけどね。……お昼はレバニラ
 炒めにするわよ。鉄分取りなさい」
「はーい。苦手だけど頑張って食べる」

2/25/2023, 8:59:19 AM

【小さな命】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/24 PM 5:30

「え、部活でその話をしたの?」
「うん。だって過去一サプライズだった
 プレゼントはやっぱりそれかな~って
 思ったから。合唱部のみんなのことも
 驚かせちゃったみたいだったけど」
「当たり前でしょ……」
「確かに、婚姻届はすごいな」

 暁の誕生日の話から、
 オレに婚姻届を貰ったことがある
 という話になったと、暁が帰り道に
 宵と天明(てんめい)に語っている。
 宵は完全に呆れモードだが、
 天明はすごいなと言いつつ
 笑っているあたり、
 さほど驚いていないのかもしれない。
 
「もしかして、宵も貰ったのか?」
「おおお~、天明くん、ビンゴ!
 真夜(よる)くんのこと、
 分かってきてるね~」

 ――天明の予想通り、
 暁に婚姻届をプレゼントした時、
 オレは宵にも婚姻届を渡した。
 その時も、宵は『将来結婚するか
 どうかなんて分からないじゃない』と
 呆れていたけれど。

 きっと結婚だけが幸せの条件じゃない。
 でも、愛せる人と出会って、結婚して。
 時を経て新しい小さな命とも出会う。
 それだって、間違いなく
 定番の幸せの形ではあるだろう。
 オレは、どうしたって宵と暁の幸せを
 祈らずにはいられないから。
 婚姻届は、いつか2人が結婚したいと
 思える相手に出会えますようにという
 願いの象徴。
 ただそれだけのことだ。

2/23/2023, 4:01:47 PM

【Love you】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/24 PM 4:20

 部活の休憩時間。
 暁の誕生日が近いことが話題になった。

「3月1日だったわよね」
「うん、そうだよ~。
 しぃちゃん、覚えててくれたんだ」
「……なんか、欲しいもんあるのか?」
「え、なになにとっしー。
 もしかしてサプライズ誕プレとか
 してくれるの?」
「言ったらサプライズにならねーよ」
「それもそっか~」

 あはは、と無邪気に笑う暁は、
 相変わらず可愛くて。
 今日も十詩希(としき)は
 心を奪われっぱなしのようだった。

「ちなみに、これはサプライズだった、
 って思うプレゼントってあったのか?」
「んーとね……。――あ、婚姻届!」
「――は!?」

 十詩希が驚くのも無理はない。
 あたしだって驚いたし、聞きつけて
 しまった他の合唱部員も唖然としている。

「知ってる? 婚姻届って、
 役所で貰える基本的なもの以外に、
 キャラクターものとか、オリジナル
 デザインなものとかあるんだよ!」
「初耳だわ」

 十詩希が絶句してしまっているので、
 仕方なくあたしが会話を繋ぐ。

「わたしも偶然テレビでそういうのが
 あるよって特集してたを見たの。
 でね、その時見た、美女と野獣を
 イメージした婚姻届がすごく素敵で。
 シルエットで描かれたイラストも、
 Love you foreverのフォントも綺麗で、
 将来こんな婚姻届を出せたら
 いいなぁって思ったんだけど、
 わたしが結婚する頃にもこのデザインの
 婚姻届、販売されてるかな~って
 心配だったんだよね」

 ああ……この先はなんとなく
 予想出来てしまう。

「そうしたら、真夜(よる)くんが
 プレゼントしてくれたの。
 結婚する頃まで待たなくても、
 今買って、必要になる時まで
 保管しておけばいいだけだよって。
 とっても嬉しかったけど、いきなり
 婚姻届渡された時はびっくりしたし、
 ちょっとドキドキしちゃったよー」

 そんなものを躊躇いなく
 プレゼントしてしまう
 星河(ほしかわ)くんが、
 心底恐ろしい。
 そして、こんな人が恋の障害な
 十詩希が、心底不憫だと思った。

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