【物憂げな空】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
12月某日
その日は朝からずっと、いつ雨が
降り出してもおかしくないような、
どんよりとした暗雲が垂れ込める
物憂げな空模様の寒い日だった。
(あ……やばい)
急に視界が白くなる。
立っていられなくなって、
思わず階段に座り込んだ。
(……くらくら、する。貧血、なのかな)
とにかく、今動くのは危なそう。
そう判断して、目を瞑って
じっとしていたら。
「――大丈夫か!?」
「…………?」
耳鳴りがしていて、よく分からなかった
けれど、多分、大丈夫かと聞かれた。
ゆっくりと目を開ける。
(……うわ……)
目の前に、とんでもなく
イケメンな人がいた。
わたしと視線を合わせるためか、
しゃがみ込んでくれている。
え、なにこれ、変な幻見てる?
「天明(てんめい)、どうしたー?」
「具合悪そうな子がいるんだよ」
「マジか。……あれ、古結(こゆい)さん?」
「知り合いか?」
「同じクラスだけど、話したことは
ないかもなー。双子の星河(ほしかわ)
兄妹と一緒にいるのをよく見かける」
「そうか。……俺の声は、聞こえる?」
聞き取り辛いけれど、
聞こえてはいたので、頷いた。
「顔色かなり青白いな」
「動けないんだと思う。
――悪い、抱えるな」
(…………え?)
温かさと浮遊感。
それを感じたと思ったら、
お姫様抱っこされていた。
(……ええええ?)
「ごめんな、なるべく
揺らさないようにするよ」
「古結さん、天明背がでかいから
抱っこされんの高くてちょっと
怖ぇーかもしんないけど、
落とさないから心配しないでいいよ」
「翼(つばさ)、一緒に来てくれるか?
保健室のドア開けて欲しい」
「っつーか、先に行って
保健のセンセーに話通しとく」
「頼む」
・
・
・
2/26 AM 11:30
「……っていうのが、天明くんと
友達になったそもそもの
きっかけだったんだけど」
「……そんな乙女ゲーみたいな出会いを
自分の娘が体験してるとはね……。
恋に落ちる音が聞こえそうなくらいよ」
「実際は、めまいと耳鳴りが酷くて
きゅんとしてる余裕はなかったな~」
「その出会いでフラグが立たないのも
驚きだけどね。……お昼はレバニラ
炒めにするわよ。鉄分取りなさい」
「はーい。苦手だけど頑張って食べる」
2/26/2023, 6:32:50 AM