紗夢(シャム)

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2/2/2023, 5:18:30 PM

【勿忘草(わすれなぐさ)】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/6 PM 0:50

「そういえば、古結(こゆい)たちは
 その青色が好きなのか?」

 学食で昼飯を食べ終わって、
 教室へ戻る道すがら、ふと聞いてみた。
 古結の着ているスクールカーディガンの色。
 柔らかで明るい青ではあるけれど、
 冬に身に纏うには寒そうにも見える。
 思い出してみると、宵の着けていた
 スヌードと、真夜(よる)のマフラーも
 こんな青色だった気がする。

「あ、この色? これはねぇ、勿忘草色に
 近いのを選んだんだ~」
「勿忘草?」
「うん」

 確か、英語では『forget-me-not』。
 『私を忘れないで』という意味を持つ花。

「勿忘草の花言葉は、『私を忘れないで』
 だけじゃなく、『真実の友情』って
 いうのもあるんだよ」

 すかさず真夜が解説する。
 それを聞いて、花言葉の意味も含めて、
 この色でお揃いなことが、3人にとって
 重要なのだと分かった。

2/1/2023, 5:04:30 PM

【ブランコ】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

2/4 AM 11:00
「お母さーん。ピザが食べたいです!」
「あるわよね。
 ピザって、無性に食べたくなる時」
「お昼、ピザ注文してもいい?
 それで、宵ちゃんと真夜(よる)くんも
 呼んでピザパしていい?」
「好きにしなさい」
「やったぁ。……天明(てんめい)くんは
 今日部活かなぁ。聞いてみよっと」
「……知らない子が出てきたわね」

2/4 PM 0:00
「こんにちは」
「お邪魔します」
「いらっしゃい、真夜くん、宵ちゃん。
 いつもうちの暁の面倒をみてもらって
 申し訳ないわね」
「面倒と思ったことはないです」
「……ありがとう。本当に2人には
 感謝してるわ」
「宵ちゃーん、真夜くーん、おはよー。
 ピザもついさっき届いた所なの。
 熱い内に食べよ~」
「はいはい、今行くわ」
「……旭(あさひ)さん。
 これ、うちの母から渡してって
 頼まれたものです」
「『ブランコ』ね。
 さすが夕月(ゆづき)、いいセンス」
「何もらったの? お母さん」
「ピザに合うスパークリングワインよ」
「へぇ~。じゃあ、お母さんも一緒に
 乾杯しよ? わたしたちはコーラで!」
「(確かに親子でしゅわっとした飲み物が
 好きだけど……。なんていうか
 真夜くんたちの面倒見の良さは、
 やっぱり夕月からの遺伝なのかしら)」

1/31/2023, 4:26:13 PM

【旅路の果てに】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/31 PM 7:30
「ただいまー、暁」
「あれ? お帰りなさい、お母さん。
 お仕事、一段落ついたの?」
「まぁなんとか目処は立ったわ」
「お疲れ様~。ご飯食べる?
 それとも先にお風呂入る?」
「とりあえずビール」
「はーい、持ってくるね。
 ……お母さんの会社は、
 いつ働き方改革実施されるの?」
「そんなものは、政治家の描く絵空事よ」
「わぁ、世知辛い」
「……あんたは相変わらずクイックセーブ&
 ロードを駆使して進めるようなキャラ攻略
 ゲームばかりやってるのねぇ。
 たまにはRPGとかやりなさいよ。
 世界中を巡る旅路の果てに辿り着く
 感動ってものもあるのよ?」
「え~? でも、そういうゲームは
 もう少しで終わっちゃいそう! って
 思うと、最後の町で止まっちゃって、
 そのままクリアしないで放置になりがち
 なんだもん」
「そんな半端なとこで放置するなんて、
 ゲームプログラマーの母に
 ケンカ売ってるのかしら、この娘は……」
「売ってないよ~。尊敬してます。
 ……それで、ご飯どうするの?
 何かリクエストある?」
「……オムライス」
「オムライスでいいの?」
「私の思い出のゲームの中では、
 疲れて家に帰ると、パワフルで優しい
 ママが、ゲーム開始前に自分が設定した
 好きな食べ物を作ってくれたの」
「それがオムライス?」
「そう。いつだって私を勇気づけて、
 元気をくれるママだった」
「へぇ~。ちなみにパパは?」
「パパは遠くにいて、
 電話で話すしか出来なかったわね。
 ぶっちゃけ、セーブポイントなんだけど。
 冒険に必要なお金を振り込んでくれたり、
 たまにおせっかいを焼いてきたり」
「……お父さんとほぼ一緒だね」
「……私も言っててちょっとそんな気がしたわ」
「ふふふ。じゃあ今夜は思い出のママの
 代わりにわたしがオムライスを作るね!
 真夜(よる)くんが作ってくれた
 ハッシュドビーフもあるから、
 ハッシュドビーフオムライスにしちゃおう」

1/30/2023, 3:57:44 PM

【あなたに届けたい】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/31 AM 8:05
「ついこないだ新年になったと思ったら、
 もう1月が終わっちゃうんだねぇ」
「そうね」
「来月はバレンタインがあるね!
 真夜(よる)くんにあげるのは当然として、
 今年は天明(てんめい)くんにも
 チョコ渡すでしょ。どんなのがいいかな~」
「なんで決定事項になってるのよ……」
「えっ、まさかあげないつもりなの?」
「別にアタシたちがあげなくても、
 槇(まき)くんは大量に貰いそうじゃない」
「あ~、確かに。机の上に大量に積まれてる
 チョコの山、実際にちょっと見てみたい。
 天明くんならあり得るかも」
「だから、いらなそうでしょ」
「宵ちゃん、それはそれ、これはこれって
 やつだよ。せっかくのイベントなんだから
 楽しまないと」
「――天明」
「ん? ――あぁ、真夜か。
 宵と古結(こゆい)も。おはよう」
「おはよう」
「おはよー、天明くん」
「……おはよう」
「? なんか、宵、複雑な表情してないか?」
「あ、大丈夫。今ね、宵ちゃんと、天明くんに
 どんなバレンタインお届けしようか? って
 話をしてたの」
「ぶはっ。……ヤバ、ツボった……。
 それ、本人に言うのか」
「あれ? ダメだった?」
「いや……、そういうことなら、
 楽しみにしてる。よろしくな、2人とも」
「うん! 真夜くんも楽しみにしててね」
「わかった」
「(……ああもう……)」

1/30/2023, 4:40:01 AM

【I LOVE...】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】

1/29 PM 3:30

 宵ちゃんとわたしのお気に入りの、
 ケーキの美味しいカフェ。
 祝勝会といえばここが定番で。
 宵ちゃんと真夜(よる)くんはオペラ、
 わたしはショートケーキ、
 天明(てんめい)くんはチーズケーキを
 注文した。

「残り時間2分切った所での逆転劇、
 すごかったね~。惚れ直しちゃう」
「……逆転のシュートを決めたのは
 アタシじゃなくてSGの
 美羽(みわ)なんだけど」
「もー、謙遜しなくてもいいのに。
 その直後の宵ちゃんの3Pシュートが
 止め刺したようなものでしょ?」
「言い方……」
「いや、でも実際あれが決定打だったと
 俺も思う。いいシュートだったし、
 いい試合だったよ。勝てて良かったな、宵」
「…っ…」

 天明くんに言われて、宵ちゃんが一瞬
 言葉に詰まる。
 思わず視線を逸らして「ありがとう」と
 呟く頬がほんの少し紅い。

 (照れてる照れてる。かわいいなぁ)

 宵ちゃんの可愛さが、天明くんにもっと
 伝わればいいなと思いながら眺めていると、
 お店のBGM代わりの有線放送から
 知っている歌が聴こえてきた。

「あ、この歌好き。
 特に、イレ~ギュラ~♪ の部分が
 気持ち良くて」

 甘いケーキと甘いラヴソング。
 なんだかとても贅沢で幸せな気分になる。

「タイトルが『I LOVE...』で
 寸止め感あるからかなぁ。
 だから余計に《イレギュラー》の
 解放感がとんでもないっていうか。
 そこだけ何回もリピートしたく
 なっちゃうんだよね」
「変な聞き方」
「え~、そう? だって、それまでの
 自分の世界が変わっちゃうほど、
 特別で大切な人が現れたことを
 《イレギュラー》って言葉で表現するの
 ステキって思うけど」
「ロマンチストね」
「そこは女子力って言ってよ、宵ちゃん」

 わたしにツッコミを入れている内に
 宵ちゃんが平静さを取り戻す。
 チョコレートにコーヒー風味の
 ほろ苦い大人びたケーキが好きな
 宵ちゃんだけど、最近はわたしより
 よっぽど宵ちゃんの方が乙女だと思う。
 それはきっと、天明くんが宵ちゃんに
 とっての《イレギュラー》な人だから。

 今はまだ、戸惑っているだけ。でも。
 その内、恋やLOVEになるかもしれない。

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