「夢を見てたい」
もう大人なんだから夢ばかり見るな、現実を見ろ、とよく人は言う。
けれど私は、その通りに生きたいとは思わない。だって、夢を追いかけている人は、小さな子どもでも、還暦を迎えたベテランでもキラキラと輝いている。彼らを見ていると、純粋に夢を追いかけるその姿勢こそが、人間本来の姿なのではないかと思うのだ。
もちろん、現実を見ることも大切なのだろう。しかし、そればかりでやりたい事や夢をあきらめてしまうのはつまらない。
だから私はいくつになっても夢を見てたい。誰になんと言われようとも、夢を見て、追いかけて、いつまでも輝いていたいと思うのだ。
「ずっとこのまま」
雨が上がった空から暖かな太陽の光が差し込んで地上を照らす。遠くには七色のアーチがかかっている。そんな雨上がりの光景を、2人で肩を並べて見ている。お互いに何も言わない。けれど、繋いだ手の温もりから優しさが伝わってくる。
ずっとこのままで、時間が止まってしまえばいいと思った。だけど時はいたずら者で、2人の穏やかな時間を奪う。
「じゃあ、行ってきます」
不安も恐怖も身体いっぱいに感じているだろうに、そんな表情など一切出さず、あなたはいつものように笑った。その彼の姿を見ていると、いてもたってもいられなくなって背を向けたあなたの手を取って強引に抱き寄せた。
ずっとこのままでいたい。
そんなシンプルで簡単な願いさえ、叶えられることはない。
「寒さが身に染みて」
体の中の寒さを逃すように吐いた息は、白くなって消えた。暗い冬の夜。冷たい空気の中で、私は2時間、1人であなたを待っていた。
きっともう来ないだろう。でも、私が帰った後に来ていたらどうしよう。そんな思いが交互に訪れ、その場を離れることができない。もしかしたら来てくれるかもしれない。そんな希望を捨てることができないのだ。
そうして待ち続けて、日付が変わった。もう来ないだろうと、私は家の方へと歩き出した。手はすでに感覚がなく、寒さが身体の芯まで染みている。
今まで感じた中で一番寒く感じる夜だった。
「20歳」
20歳。それは、私にとって超えたくない壁だった。その壁を越えれば、大人であることを強制され、これまでの思い出が全て過去になる。周りはみんな成人式だ、お酒だと浮つく中、私だけがずっと後ろを向いていた。
そんな思いを抱えながら20歳を迎えて1ヶ月が経った。
今も、私は大人になりきれないまま毎日を不安の中で生きている。
「三日月」
ベランダから空を見上げると、まだ明るさの残る空に三日月が浮かんでいた。満月の姿からは考えられないほど細く、誰かに奪われたみたいに穴が空いているようだ。その姿が、私の心の形と重なるように見えた。幸せだったのに、満たされていたのにいつの間にか蝕まれ奪われて気づけば大きな穴が空いていた。
月はまた、段々と満ちていく。
けれど、私の心が満月になる日が再び訪れる日は、きっとしばらくは来ないだろう。