川原

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5/23/2024, 12:48:29 PM

「逃れられない」

それはもう
身に染みている
根っからの不幸体質に
漂うエサっぽさに

多分もう完治はしない
のっぴきならない事情から
逃れられない

だけど同じくらい
幸せな出会いもあって
泣きたくなるような優しさも沢山浴びて
今ここに立っていられる

いつだって逃げたい気持ちと戦いながら
不幸すら添え木にして
どうにか踏み止まっている

ぬかるみにしっかと立って
さて 次の目的地は何処だ









5/22/2024, 2:14:35 PM

「また明日」

このテーマを見て愕然とした

今 この会社に、そう言いあえる人が誰もいない
去年までは三人居た
転勤や退職で皆去ってしまった

クリスティーじゃあるまいに
そして誰も居なくなった

皆 此処を去る時には
変化が億劫で此処にいる私の
きっと何倍もエネルギーを使った
私もいつかは此処を去るけど 
その前に

また明日と また誰かに言えたら良いな


5/21/2024, 1:48:26 PM


「透明ーとうめいー」
と書かれた絵の具のチューブの蓋を
ゆっくりとねじって
パレットに絞り出す
やまぶき色とビリジアンの隣

微かに薄荷の匂いがした

そのまま筆でくるくると溶いて
描きかけの絵の上から
まんべんなく塗っていく
封印していた記憶ごと
凍結していた哀しみごと
密かな痛みごと

透明になれ
ただの過去になれ
消し去りはしないし忘れてもやらぬが
ただの記憶になれ

及ばずながら
貴方の痛みも塗り潰せたらと
また ゆっくりと蓋を戻す
涙にも似た透明な絵の具

5/20/2024, 10:59:44 AM

「理想のあなた」

10代の終わり 夢の中に出て来た人を
密かに運命の相手だと思っていた
知らない人達と海に行って
お決まりのスイカ割りや花火をしながら
その人は私に何かを言いかけた
何故か運命の人だと思った

いつかはその人に巡り合う気がして
ノートに似顔絵を描き留めたりなんかして
なんて可愛かったのだ 乙女な私
その後すぐに 
夢の人とは似ても似つかぬ薄情者を好きになり
嵐の海へ漕ぎ出すようなドツボな恋を
5年も続ける事になろうとは

あれから随分時が流れて
夢の人の顔も覚えていない

もう何処かで出会っているのかもしれない
これから出会うのかもしれない

とっくにノートは捨ててしまったので
理想のあなたに会えても もう私には分からない


5/19/2024, 10:34:53 AM

「突然の別れ」

突然の別れ
覚悟はしていた
だけど少しでも 
お別れの日を引き延ばしたかった

沢山の人に愛されていた
同じビルの隣の会社の人にまで

その人はお母さんと二人暮らしで
亡くなったと聞かされて 家に帰って
お母さんに知らせたら お母さんの方が驚いて

「二人で号泣したのよ
母は 一度も会った事もないんだけどね」
去年、持病が悪化して勇退した後も
普段の食卓に 何気ない会話に
その人とお母さんの話題には上っていたのだろう
「父が亡くなった時は泣けなかったのに
父よりも彼女の死がこんなにも辛いなんてね」

悼みを声に出す事が弔いで
思い出が救済だと
幾度となく
私達は知らされて
皆でぽつり ぽつりと
雨垂れのように哀しみを分け合っている
雪の日に身を寄せて丸くなる雀達のように


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