川原

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9/14/2024, 12:54:49 PM

「命が燃え尽きるまで」

どこかで自分の命のろうそくが
燃えている
落語の「死神」のように

時々 炎が大きくなったり 消えかけたり

災害や戦争で沢山の火が消えた
暗闇にずらりと並ぶ蝋台の奥に残る
小さな灯火を 繋いで 繋いで
まだ火が点いたばかりの長い蝋燭に
寄り添って 半分の長さで2本
囲むように また数本
寄り添いあって 命を繋いでいる

愛おしいその灯の中に
私の灯火も 確かにあって
繋いで 繋いで 何処かの誰かも
照らす光になっている

9/10/2024, 2:48:07 PM

「喪失感」

誰もが悲しんで悼んでいたけれど
本当は
この喪失感さえ 
誰とも分かち合いたくなかった
自分こそが一番親しかったと思いたかった

でもお別れの時に
ご遺族ご近所の温かい輪にがっちりと
包まれているのを見て
私の存在なんてモブクラスだと思い知ったの

この痛みはなんだ
何故消えてなくならない
モブの分際で
何故いつまでも悲しい
手離せば楽になるのかな

一生会えなくなっても良いからさ
ずっと温かい輪の中で
元気でいて欲しかった






9/8/2024, 5:24:55 AM

「踊るように」

自分の中にどす黒い者が滲み出てきたな
タイムラインに流れてくる批判の相手が
自分の事だと思ってしまう

発言者のアカウントをミュートしたり
また戻してみたり
ああいやだ
自分が嫌だ

もっとサラッと 上手に世の中を渡って行きたい
踊るように
歌うように
飄々と生きて行きたい

単純に暇だから
ネットに張り付いているのであって

お茶でも飲んで 流せば良いのだ
踊りながら
歌いながら
黒い自分ごと 愛せば良いのだ




8/10/2024, 11:27:07 AM

「終点」

最終電車で寝過ごして
見知らぬ駅のホームに降りた
見知らぬ改札 初めての街
気付けば荷物も何も持たず
幼な子になって 誰かを待っている

追い越して行く人達は皆
いつかどこかで見たような横顔

私は誰を待っている
そもそも何処へ行こうとしていたのか

不意に名前を呼ばれた気がして
それが誰の声ならと期待した瞬間に
すべてを悟った

最期まで手を握ってくれていたのが
貴方であればと




7/18/2024, 11:00:41 AM

「私だけ」

春からうちの会社に来た人は
とても明るくて好奇心旺盛で
多趣味で 物知りで
少し 羨ましかった

話していてもしやと思っていたら
家族構成ちょっと似ていた
うん 何となく
誰かに頼る道を選んで来なかった
そういう親近感はあった

取引先の人がキツイという噂話の後に
ぽつり
「私 人が 苦手なんだよねえ」と
その人は言った

意外 
でもわかる
私も

私だけだと思ってた
真っ黒な自分を見せたくなくて
明るく 鈍感に振る舞っていた

同志
でも同僚以上に親しくはならない
お互い人が苦手だから
心の奥では人を信用していない
裏切られて傷つかないよう
笑顔の仮面を被っているから

同じ湖の上で別々のボートに乗り
それぞれの岸を目指す私達が
目配せしながら見上げる夜空よ


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