川原

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10/11/2025, 3:00:19 AM

「一輪のコスモス」

ふとした機みに 足元に黒い穴が空いて
その穴がだんだん大きくなってくる
そんな不安に駆られる時 

貴方の言葉が
ちょっとしたやり取りが
穴を少し埋めてくれる

ここからは自分で埋めよう
最後に一輪 花を植えよう

その花が 
いずれ誰かの心にも咲くと良い
落ちないように 目印になれば良い

9/13/2025, 9:44:53 AM

「台風が過ぎ去って」

台風が過ぎ去っても
また 次の台風が来るわけで
人生の何度目かの嵐

私も あなたも
何度も 雨を凌いで 風に立ち向かって
それだけ選択肢も多かった

あの時 こういう道もあったかと
心を担保にそれでも進んで来て
自分を信じる力も尽きかけた

だけどだから 
物凄く頑張ったし ピカピカに輝いているよ
その辺の若造には
なかなか真似出来る事じゃない

週末のファミレス
ドリンクバーのお代わりを飲みながら
両手の拳をグーにしたら
テーブルの向こうで
やっと 彼女は笑ってくれた

8/9/2025, 3:32:27 PM

「風を感じて」

概ね準備は整った

半身を乗り出して 
林の向こうの水平線に目をこらす
早くこの岬まで来い
膝の感触を確かめながら
ゆっくりと立ち上がる

あしもだいじょうぶ
こえもだせるようだ

私によく似た顔が 涙目で頷き
掠れた声で じゃあねと手を振ってくれたが
その手は次の瞬間私の手に代わり
受け継いだばかりの身体に
あなたの記憶だけが残された

そして代わりに手を振る 沖に浮かぶ船に
わたしはここだ 
わたしたちのはなしをつたえるために
お前をよんだ


やれやれ 次の回収先で休憩にしよう
作業員はモニターに視線を戻した

テーマパークの自動音声機器のメンテナンスが
こんなに面倒だとは思わなかった
さっきも無人島を模した岸壁の上に一瞬
人影が見えた気がしたが
きっと疲れているのだろう
















8/3/2025, 1:11:04 PM

「ぬるい炭酸と無口な君」

君が好きだったレモンのサイダーは
まだ買えずにいる
いつか飲めるようになるのだろうか

皆 行ってしまった
わたし一人になっても
日々の暮らしは続く

ご飯を食べて 茶碗を洗い
湯を沸かし 洗濯物を干して

窓を開けて 風を確かめる

大丈夫 どうせなら図太く生きるよ
だからせめて 時々は
声を聞かせて貰えないかな
夢の中でいいから




5/29/2025, 11:30:22 AM

「渡り鳥」

昨日の私は別人
全部リセットして
次の街へ行こう

嫌な事があっても
好きな人につれなくされても
その時辛くても
時が経てば案外平気になる事を
大人の私は知っている

別の自分になったと思えば良いのだ
知らんぷりしてひとり 
群れを離れて悠々と
空を游ぐ

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