「理想のあなた」
10代の終わり 夢の中に出て来た人を
密かに運命の相手だと思っていた
知らない人達と海に行って
お決まりのスイカ割りや花火をしながら
その人は私に何かを言いかけた
何故か運命の人だと思った
いつかはその人に巡り合う気がして
ノートに似顔絵を描き留めたりなんかして
なんて可愛かったのだ 乙女な私
その後すぐに
夢の人とは似ても似つかぬ薄情者を好きになり
嵐の海へ漕ぎ出すようなドツボな恋を
5年も続ける事になろうとは
あれから随分時が流れて
夢の人の顔も覚えていない
もう何処かで出会っているのかもしれない
これから出会うのかもしれない
とっくにノートは捨ててしまったので
理想のあなたに会えても もう私には分からない
「突然の別れ」
突然の別れ
覚悟はしていた
だけど少しでも
お別れの日を引き延ばしたかった
沢山の人に愛されていた
同じビルの隣の会社の人にまで
その人はお母さんと二人暮らしで
亡くなったと聞かされて 家に帰って
お母さんに知らせたら お母さんの方が驚いて
「二人で号泣したのよ
母は 一度も会った事もないんだけどね」
去年、持病が悪化して勇退した後も
普段の食卓に 何気ない会話に
その人とお母さんの話題には上っていたのだろう
「父が亡くなった時は泣けなかったのに
父よりも彼女の死がこんなにも辛いなんてね」
悼みを声に出す事が弔いで
思い出が救済だと
幾度となく
私達は知らされて
皆でぽつり ぽつりと
雨垂れのように哀しみを分け合っている
雪の日に身を寄せて丸くなる雀達のように
「恋物語」
かつて身を焦がすほど
好きだった人が 人生の中で何人いたか
初恋から遡って数えて
私の年齢を割ったら
平均して 7年に1人
新規で好きになる計算だった(笑)
あと何年 生きて 残りの人生で
何人 好きになるのか
そう考えたら 相手が異性でも同性でも
動物でも 無機物でも
好きになれること
それ自体が貴重な体験だな
自分を好きになって慈しんで
誰かを好きになって恋を紡いで
あと何年生きて
いくつの物語を描けるのだろう
「真夜中」
真夜中はわたしの友達
眠れなくても気にしない
夜中に目が覚めて
眠れなくなると
ネットが普及する前は
深夜映画や外国の通販番組を観てた
一人の時間
自由な時間
子供の頃から 真夜中は友達
静かで少し冷んやりとして
心地よい 秘密の友達
「愛があれば何でもできる?」
出来ませんね
何でもできると言う人ほど信用出来ないし
もし貴方がそんな事を言ったなら
百年の愛も冷めると思う
貴方はあなたの世界を大事にして欲しいし
私の世界も尊重してくれる
貴方だから愛するのだ