【好きじゃないのに】
宗教とか遺跡とかなんだか知らないけど、そんなの興味ないって言ってんじゃん。歴史なんか暗記科目だし一番勉強する意味わかんないやつじゃん。好きだって言ってる人、きみ以外見たことないよ。て言うか、そこまで来るともう変態だって。
そもそも、なんでそんなに私に語ってくるの? 私は別にきみのこと好きじゃないんだけど。しつこいし、そもそも顔タイプじゃないんだよね。
好きじゃない。好きじゃないのに。……数学できる自慢してくるきみの友人のことは胸を張って嫌いって言えるのに。
好きじゃないのに、嫌いじゃないよ。よくわかんないね。
【ところにより雨】
ゆっくりと息をする。気持ちの整理をつけるみたいに、なにかの暇乞いをするみたいに。あなたのことを考えるたびに、私の心は不思議と複雑になっていくようだ。
あなたが好き、と思う。なんだか認めたくない、と思う。好きになっていいのかな、と思う。絶対嫌われてる、とも思う。曇り、ところにより雨だ。
【特別な存在】
ナンバーワンとは言わないけど特別になれたらいいのにふと祈る
神樣がこの世界を創ったのは寄りかかりたかったのかななんて
【バカみたい】
「犯人はあなただ!」
探偵が勝ち誇ったように言い放つ。どよめく群衆は刺すような視線を犯人に向ける。近くの時計は規則的に音を立てている。意気揚々とアリバイだトリックだ、犯人の残したミスだのをだらだらと並べ始める。全てを語り終わると、日課を終わらせたような満足した顔で一直線に犯人を見つめていた。
「こんな大昔からあるような展開、いつまで擦るんだろ。もうみんな飽きてるでしょ」
つまらなそうに画面を見ながら、バカみたい、と彼女はつぶやいていた……。
あれはいつだっただろうか。少なくとも一年は経っている。現実的に考えて、今この時代、この国で探偵が推理を披露することなんてない。
「バカみたい」と彼女が言ったあの環境が現実だったらどんなに良かっただろう。登場人物の中に必ず被害者と加害者がいるのだから。
彼女が死んで、半月。轢いた犯人も見つからないこの世界で息をしていることが、ただただ辛くて痛かった。
本心を考えてみれば、「死」という言葉が簡単に口をつたった。どこか冷めていて口の悪い彼女なら、「バカみたい」だと言うだろう。
【二人ぼっち】
「たとえ世界中が敵になっても、君を愛し守り続けるよ」
かゆくなるような王道すぎる台詞を、恥ずかしげもなく言う君。思わず笑いそうになった。
桜がざわざわと揺れる三月。晴れすぎず、曇りすぎないちょうどいい空を流れる桃色の風が首に触れる。
「世界中を敵に回すくらい私が極悪人になるって言いたいの?」
「いや、そういう意味じゃ……」
意地悪に言った言葉もまじに受け取ってうろたえて。ほんとに真面目なんだから。
「嘘嘘、ありがとう。じゃあ、二人ぼっちだね」
火照りを隠すように手で顔をなぞって言う私を、君はすごく嬉しそうに見つめていた……。
私はもう君に触れられない。言葉をかけることも、会うこともない。見るだけだ。合わない目、差のある温度。
そんな私に君はこう言った。
「なろうよ、いつか言ってた二人ぼっちに。君と僕は一人じゃないんだから」