【夢が醒める前に】
ねえ待ってください。なんでそんなに生き急ぐんですか。どうせ醒めても、バイトに行くだけのつまらない日なんです。
俺にとってはそうじゃない? それはそうかもしれないけど……。でも、せっかく会えたじゃないですか。もっとゆっくりしていってくださいよ。私はもっと、……あなたと一緒にいたいんです。
…………この際だからもう言っちゃいますけど、好きです! あなたが! あー……人生初告白夢の中でやっちゃいました。恥ず……。
もう、無視しないでくださいよ。死んだらもう会えないんですよ、私とも。別に寂しくないって……言ってくれるじゃないですか。私は寂しいのに。
いいじゃないですか、夢が醒めるまでは。現実じゃあ会えないんだから。お側に置いてくださいよ。
夢が醒める前に夢だと気づいたらまずはあなたのまつ毛を知りたい
【胸が高鳴る】
早咲きの桜が美しい季節、あなたはきっと花粉に悩まされているでしょう。拝啓なんて書くほど改まった仲ではないのでありませんので割愛します。
春は出会いと別れの季節ですね。私は新たな友人との出会いに笑みをこぼし、旧知の想い人との別れに哀惜の念を募らせています。
なんて、文豪のように書いてみましたが、ただ春休みが始まったというだけです。一年間過ごしたクラスは、やかましくて迷惑で。当たり前で愛おしいものだったと感じています。毎年のことなのに、慣れない寂しさがまだ胸に残っています。
来年もまたこう思うのでしょう。去年もその前も、ずっとそうだったように。毎年が特別だなんて、なんて恵まれているのでしょうか。いろいろな感情でいっぱいの胸が高鳴ります。
あなたの春は、どんなものですか。
では、お元気で。
【不条理】
不条理を嫌がるのは、人間だけだ。何かで読んだその言葉が、僕はずっと引っかかっている。
生きるために動物たちは命を奪いあい、植物でさえ光を奪いあう。その競争に負けたものから滅んでいき、適応できたものだけがまた少しの未来を手に入れる。チャンスは平等にあり、結果は不平等に横たわる。しかしそれが道理だ。奪うことでしか生き残れないという意味では、確かにこれは不条理と言うべきものかもしれない。
でも、人間が使う「不条理」は、また別なんじゃないかな、と思う。僕は、人間が嫌いだ。傷つけ、蹴落とし、欺き、偽る。欺瞞、我儘、裏切り。そんなのばっかりだから。それが生きるためにどうしようもなくやるときなんてそう多くあるもんじゃない、と思うのは僕が恵まれているからだろうか。そう思わなくてもいい環境に置かれているからだろうか。
不条理って、何なのだろう。
【泣かないよ】
人間とは不思議なものだ。考えても仕方のないことばっかりだってことはわかっているのに、なんで考えてしまうのだろう。
最近そっけなくなったあの人のことも、仲がいいのにどこか他人行儀なあの人のことも。ずっと頭のどこかで考えてしまう。そればかりか、答えを知りたい、と思ってしまう。だれかのこころなんて、わかるはずがない。知れるはずがない。頑張っても、思うことしかできない。でも、話すのは怖い。だというのに、私は欲張りにもわかりたいと願ってしまう。ないものねだり、というやつだろうな。
無意味に考え続けて、頭の容量がいっぱいになっても、泣かないよ。いつか立ち向かえるときになったら、泣いちゃうかもしれないけど。それまでは、弱い私が頑張るから。
【怖がり】
最近、本当に思う。不思議なほど、私は臆病になったみたいだ。昔はお留守番の約束を忘れて、お母さんを探しに行くほど勇敢だったのに。
あの人といると、楽しい。落ち着く。最初はそんなふわりとした心地よい気持ちだった。だんだん話していないときにもあの人のことを考えるようになり、どこからともなくずきずきした不安が押し寄せる。友だちに抱いている安心感とかとは、何かが違う。依存ような安心感。説明はできないけど、何かが。……これが恋心なのかな。確信は持てないけど、そう思ってもいい気はする。
でも、思えば思うほど、話したいのに話せない。高嶺の花ってほどじゃないけど、やっぱり私とは釣り合わないかも。最近はそんな、誰に言うわけでもない情けない言い訳ばかりがふとよぎる。自分を守るために、諦めたい、と。
あーあ。あの人も、私を好きでいてくれたらいいのに。
私って、なんて怖がりなんだろう。