【泣かないよ】
人間とは不思議なものだ。考えても仕方のないことばっかりだってことはわかっているのに、なんで考えてしまうのだろう。
最近そっけなくなったあの人のことも、仲がいいのにどこか他人行儀なあの人のことも。ずっと頭のどこかで考えてしまう。そればかりか、答えを知りたい、と思ってしまう。だれかのこころなんて、わかるはずがない。知れるはずがない。頑張っても、思うことしかできない。でも、話すのは怖い。だというのに、私は欲張りにもわかりたいと願ってしまう。ないものねだり、というやつだろうな。
無意味に考え続けて、頭の容量がいっぱいになっても、泣かないよ。いつか立ち向かえるときになったら、泣いちゃうかもしれないけど。それまでは、弱い私が頑張るから。
【怖がり】
最近、本当に思う。不思議なほど、私は臆病になったみたいだ。昔はお留守番の約束を忘れて、お母さんを探しに行くほど勇敢だったのに。
あの人といると、楽しい。落ち着く。最初はそんなふわりとした心地よい気持ちだった。だんだん話していないときにもあの人のことを考えるようになり、どこからともなくずきずきした不安が押し寄せる。友だちに抱いている安心感とかとは、何かが違う。依存ような安心感。説明はできないけど、何かが。……これが恋心なのかな。確信は持てないけど、そう思ってもいい気はする。
でも、思えば思うほど、話したいのに話せない。高嶺の花ってほどじゃないけど、やっぱり私とは釣り合わないかも。最近はそんな、誰に言うわけでもない情けない言い訳ばかりがふとよぎる。自分を守るために、諦めたい、と。
あーあ。あの人も、私を好きでいてくれたらいいのに。
私って、なんて怖がりなんだろう。
【星が溢れる】
夢を見ていた。長くて繊細な夢、だった気がする。何もかも覚えているわけではないが、彼が出てきたのは覚えている。僕の憧れの彼が。夢に現れた大好きな彼は、なぜかただただ悲しそうだった。真っ暗な空の下、彼だけがわずかに光っているのだ。黒で縁取られた大きな瞳に宿る星が、行く場所を失ったようにあふれていた。いつも見ている彼からは、どこか妖艶さをも感じるのに、夢の彼は違って見えた。脆く、切なく、どこかに危うさをはらんでいるような。でも相変わらずとても綺麗だった。
なぜ泣いているのか尋ねると、彼は帰れないからだ、と言った。泣いているのにいつもと同じ声だった。
「帰りたい。僕が僕だった場所に」
空にいるには、眩しすぎる。彼は空からこぼれ落ちてきた星だった。
【安らかな瞳】
あんな噂を聞いたあとでは、平常心でいられるはずがない。鵜呑みにする気はない。その心とは裏腹に、変に意識してしまう自分がいた。……安らかな瞳は、持ち主の本心を語っている。いつも以上に優しく儚げで、どうしようもなく愛しい。でも、屈託がないと言えば嘘になる。本心を悟られまいと言わんばかりにちょっとこわばった顔をしても、いつも君を見ていた私の目はごまかせないよ。ほら、眉毛も困っている。
「バレンタイン、ありがと」
「え!? ありがとう!」
嬉しいけれど、どこか痛い。テンションは上げて言ったつもりだが、自分でもどこかわざとらしさを感じる。義理なんだろうな、と思ったのがバレてはいないだろうか。そんな痛みをちくちくと抱えながら、何かから逃げるように廊下に出た。
【あなたの隣で】
あなたの隣にいたい。あなたを守りたい。できるだけ、ずっと。永遠にとはいかないことはわかっているけれど、私はどうしてもそれを願ってしまうんだ。
どうしてそんな顔をしているの? なぜって、あなたが生まれて、私の世界は変わったからよ。あなたの人生の主役は、もちろんあなた。あなたが息をした日から、私の人生の主役もあなたになった。何があってもあなたを守りたいと、あなたを愛すと私自身に誓ったの。だからこそ……。
主役がいなければ、物語は成立しない。あなたのいない人生は、サブキャラとモブだらけ。本筋と何の関係もない駄作スピンオフ。そんなもの、続ける価値があるのかしら。また、隣に行くために。あなたに会うために。くだらないポエムももう終わりにするね。