【バカみたい】
「犯人はあなただ!」
探偵が勝ち誇ったように言い放つ。どよめく群衆は刺すような視線を犯人に向ける。近くの時計は規則的に音を立てている。意気揚々とアリバイだトリックだ、犯人の残したミスだのをだらだらと並べ始める。全てを語り終わると、日課を終わらせたような満足した顔で一直線に犯人を見つめていた。
「こんな大昔からあるような展開、いつまで擦るんだろ。もうみんな飽きてるでしょ」
つまらなそうに画面を見ながら、バカみたい、と彼女はつぶやいていた……。
あれはいつだっただろうか。少なくとも一年は経っている。現実的に考えて、今この時代、この国で探偵が推理を披露することなんてない。
「バカみたい」と彼女が言ったあの環境が現実だったらどんなに良かっただろう。登場人物の中に必ず被害者と加害者がいるのだから。
彼女が死んで、半月。轢いた犯人も見つからないこの世界で息をしていることが、ただただ辛くて痛かった。
本心を考えてみれば、「死」という言葉が簡単に口をつたった。どこか冷めていて口の悪い彼女なら、「バカみたい」だと言うだろう。
3/22/2026, 12:32:49 PM