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【二人ぼっち】
「たとえ世界中が敵になっても、君を愛し守り続けるよ」
 かゆくなるような王道すぎる台詞を、恥ずかしげもなく言う君。思わず笑いそうになった。
 桜がざわざわと揺れる三月。晴れすぎず、曇りすぎないちょうどいい空を流れる桃色の風が首に触れる。
「世界中を敵に回すくらい私が極悪人になるって言いたいの?」
「いや、そういう意味じゃ……」
 意地悪に言った言葉もまじに受け取ってうろたえて。ほんとに真面目なんだから。
「嘘嘘、ありがとう。じゃあ、二人ぼっちだね」
 火照りを隠すように手で顔をなぞって言う私を、君はすごく嬉しそうに見つめていた……。


 私はもう君に触れられない。言葉をかけることも、会うこともない。見るだけだ。合わない目、差のある温度。
 そんな私に君はこう言った。
「なろうよ、いつか言ってた二人ぼっちに。君と僕は一人じゃないんだから」

3/21/2026, 1:02:10 PM