いす

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9/29/2023, 10:41:09 AM

馬鹿だと笑っただろう?寂しく愚かで哀れな恋をしているのだと君は自分を笑っただろう?それがこのなにもない部屋に響いた唯一の愛だった。

9/28/2023, 11:03:28 AM

神さまのこどもに戻るらしい。お前だけが割を見ている。人間として終わるらしい。それにしてはどうやら悪魔じみている。その薄い瞼が呵責に震え続けたことを、俺だけが知っている。それは俺がおこなってきたしょうもない善行のなかでいっとう良いものに思える。お前の瞼に口付ける。別れの挨拶はこれがいっとうなのだと、俺は生まれた時から知っている。

9/27/2023, 10:24:39 AM

片側だけ降っている。獣は選んでそこを通る。君は晴れた道をゆく。ひどくひどく渇いている。涙はすぐに枯れ果てて、喉はとうに切れていて、首輪のついたあの獣は、先にエデンへ着いただろう。

9/26/2023, 11:37:28 AM

「お部屋は北向き、くもりのガラス、うつろな目の色、とかしたミルク、わずかな隙から、」囁きを聴いている。お前はずっと恐れている。誰もがこの女の声を褒め称える。この女の声に郷里を感じ、愛し、満たされ、来たる未来を祝福するようになる。女はお前を見上げ、季節を歌う小さな声を続ける。「誰かさんが誰かさんが誰かさんが見つけた」お前はずっと恐れている。郷里を持たず、祝福されうる未来のないお前にも、虚しく均しく秋は訪れる。

9/25/2023, 11:31:28 AM

窓そのものが心象風景である。開かない窓をずっと心に置いている。窓枠に触れる。またたきごとに硝子の向こうは青空になり、曇天になり、その下にぽつねんとクリーニング店があり、商店にかわり、車も人も通らない侘しい道路になる。目を瞑る。硝子に額をつく。窓枠を掻いた爪が割れる。あなたが迎えにきませんようにと祈っている。

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