【明日、もし晴れたら】
葉が風に揺れる音と試験勉強をする学生が他にもいるのかページをめくる音がかすかに聞こえる。
ここは大学図書館の一角。その窓際の席に座っていた。
机の上には開かれた教科書とノートが広がり、その横にはスターバッカスのカップが置かれている。
彼の名前は大輔。文学部の三年生で、専攻は日本文学。今日は期末試験のために図書館に籠っていた。だが、どうしても集中できないでいる。頭の中には明日のことがぐるぐると回っていたからだ。
明日は彼がずっと好きだった同じ学科の梨花に告白しようと思っていた。二人はよく図書館で一緒に勉強する仲で、梨花の優しい笑顔と知識に対する熱意に魅了されていた。だが、彼は内気な性格で、なかなか気持ちを伝える勇気が持てなかった。
明日、もし晴れたら…と彼は心の中で繰り返す。ときおり天気予報を見て拝んでいる姿は異様で明日の告白より、周りを気にした方がいいかもしれない。
後に、オカルト研究同好会から熱烈なスカウトを受けることになるのだが…それはまた別の話。
夕方になり、図書館が閉館する時間が近づくと、大輔は窓の外を見つめた。曇り空が少しずつ晴れ、薄い夕焼けが顔を出していた。その光景に、彼はふと両手を合わせ明日の天気が晴れることを願う。姿はなぜか様になっているが、頭の中は煩悩だらけだ。
何度も天気予報の内容を見てるので明日晴れることは分かっているはずだがすぐ忘れているのだろう。
翌朝、大輔は早めに大学に向かった。予報通り空は澄み渡り、太陽の光が輝いていた。天気に祝福された彼だが心の中は希望と緊張でいっぱいだった。図書館に向かうと、すでに梨花が窓際の席に座っていた。彼女も同じように試験勉強をしていたが、顔にはやや疲れが見えていた。
「おはよう、梨花」と、大輔はできるだけ平静を装って声をかけた。
「おはよう、大輔。今日も頑張ろうね」と、梨花は優しく微笑んだ。その笑顔に、大輔の心臓はドキドキと高鳴った。
彼は深呼吸をして、意を決した。「梨花、少し話があるんだけど、いいかな?」
梨花は少し驚いた表情をしたが、すぐにうなずいた。「もちろん、どうしたの?」
大輔は言葉を選びながら、心の中で何度も練習したフレーズを思い出した。「ずっと前から、君のことが好きだったんだ。もしよければ、これからも一緒に時間を過ごしてくれないか?」
梨花は一瞬驚いた表情をしたが、次の瞬間、顔を赤らめて微笑んだ。「私も、大輔のことが好きだったの。でも、勇気が出なくて言えなかったんだ。」
その瞬間、二人の間に新しい風が吹いたように感じた。図書館の静かな空間で、彼らは未来への一歩を踏み出した。明日、もし晴れたら──その願いが叶った日のことを、二人は一生忘れないだろう。
【花咲いて】
ある日のこと。
雲一つもない晴れの日の昼過ぎ、今日も平和な一日のはずだった___
そう、いきなり私の目の前で彼の首が落とされ、後を追うようにそこで私の意識も途絶えた。
彼と私は幼い頃から一緒で、生まれた日も場所も同じ。
兄妹と思われたりするくらい似ていて、どっちがどっちでしょ?とそろっていたずらするくらい仲が良かった。
私達は大きくなるにつれてお互いの個性がではじめる。最初は互いの変わり様にびっくりしたがすぐ慣れた。
そういえば、彼を意識しはじめたのはいつからだったか…気づいた時には意識していたのだろう。
2人とも動くのは苦手でよく並んで二言三言交わしながら景色を眺めたりしている。
ときたま彼に触れるたびに、私は内心爆発しそうになっていた。
途中で彼も私を意識している事を知った。
それからとてつもない幸福感とともに舞い上がってしまい彼を少し困らせてしまった。
そこからは早かった。
互いに遠慮もなくなり絡み合い。
この日がずっと続けばいいと思っていた。
そして__。
絡み合った私達は刈られたのだった。
「 コウノトリ。 」
【※批判的、妊娠中絶、堕胎等の内容がふくまれます。嫌な方は戻るかスキップして次の話を読んでください。】
私は考え無しのバカは嫌いだ。
後先も読めぬバカは嫌いだ。
アニメ・マンガなどフィクションだけにしてくれ。
無知が罪とは言わん。
だが、知ることができたはずなのにあぐらをかいて知ることを疎かにしないでくれ。
欲に駆られ流され、快楽に溺れ、行き着いた先、悲劇に堕ちてくのだ。
ピロロロロ...
...あぁ。
ピロロロロ...
.....あぁ、またか。
ピロロロロ...
また、命をすくことになるのか。
ピロ...
はい、もしもし__
そこは、裏路地にある小さな事務所。
手垢で汚れ使い古されているであろう固定電話機に一本の電話がなった。
はい、わかりました。はい、今日の午後四時、十六時ですね__
早速準備に取り掛かろう。
本来なら予約してから来てほしいが、早急にお願いされる事はたまにある。
ときにキミは堕胎という言葉を耳にしたことはあるだろうか。
似たようなものとして妊娠中絶があるが、その違いは期間と合法か違法かだ。
近年、母体保護法(旧:優生保護法)で合法化されているのが中絶。
日本では、公式の統計数だけでも年間三○万件ほどの中絶が実施されている。
中絶できるのは妊娠二二週未満とされているのだが、これを過ぎてもなお中絶をしたいという人達が居て、ヤミの世界で違法に堕胎をしている。
全くもって世話のない話だ。
母体保護法では、「経済的理由」による中絶も合法化してしまっているので、この条項の拡大解釈によって、バンバン中絶が実施されているのが現状だ。
望んでも子が出来ない方々からすれば、ツライ現実かも知れない。
もともと、母体保護法の前身である「優生保護法」は、「優生学」に根ざした法律だ。
優生学というのは....
「不良な遺伝子を持つ者を排除し、優良な国民のみを残して繁栄させる」
という思想に基づく学問で、要するに、不良な遺伝子を持つ者は子供を産んではいけない、不良な遺伝子を引き継いだ胎児はこの世に生まれ出てはいけない、という差別思想だ。
胎児は、立派な生命体の形をしている。妊娠が進めば、人間の形にどんどん近づいてくる。胎児に意思能力はないかも知れないが、ある段階以降は、感情らしきものも十分芽生えているはずだ...。
堕胎は極端に言ってしまえば "殺人" だ。
私は今日も金を貰い "殺人" をする。
やり方は中絶となんら変わりはない。
だが、前記のとおり感情がある生物を "殺す" のだ。
とはいえ来る人たちの大多数は考え抜いた末に最終的に自分の意志。
降ろしてほしくて来るのだ。
殺人という物騒な言刃は胎児も私自身も傷つく。
なので、私は考えを変えることにした。
"救い"。
そう、救ってる。
様々な理由で来る悩める子達の為に不運にも不遇な環境に生まれてこなくてはならない子達の為に救っているのだ。
私は今日も金を貰い不遇なる人たちを救う。
金が無いから産まないのに、どこから堕胎する金を捻出してるのだか。
大半は未成年の場合が多い。
そういったものたちはわかるが、三十路を過ぎている者たちもいるのだ。
いい大人して何やってるんだか、同じ大人として恥ずかしい。
今回来る患者は二三歳の大学生だそうだ。
大学に通える頭はあるのに性の知識は動物並みとは恐れ入った。
大学はときたま人を堕落させるとは聞くが...親が可愛そうだよ。
運が悪かったか退化したか...
日本の性教育を見直してほしいものだ。
私みいな人がいない世の中になるのが理想的だが....
愚痴はしてもし足りない。
そして、今日は騒がしい野鳥が見当たらない。
そう思いながら屋上の喫煙所でいつものようにココアシガレットをかじる。
残りカスのせいで砂糖の味がしないな。
ヤニは嫌いだが匂いは落ち着く.....
__施術は問題なく終わった。
黄昏時の喫煙所。
今日はやけに静かだな....
そう思い手すりに手を掛けて見渡す。
__気づけば、口の無い無数の子供が私を見ていた。
背中を押され屋上から堕ちた私は掻き出され赤子のようだった。
あぁ__。
野鳥はここに居たのか。
「行かないで。」
【 踊るように 。】
__宵闇の中、聞こえるは風切りの音と...
いち、に、さん、よん....。
__共に聞こえるは若人の声。
はちじゅう!いち、に、さん....。
__それは少しづつ早くなっていく。
にひゃく...ごじゅう...さんびゃく....。
__若人は一心に剣を振るう。
その剣の先には何があるのか、何が見えているのか。
若人。されども、堅実に努力をし続ける様は美しくとてつもなく輝いている。
宵闇の中にあるその姿はまさに" 月 "の様である。
__真月。
月のような輝きを放つ剣舞の名。
その光は若さゆえの輝きなのだろう。
踊るように舞うその姿が赤く塗られないことを祈るばかりである。