夏が始まったら
私は走り出すんだ
今は早歩きぐらいで進んでいるけど
この夏は
この夏だけは
駆け抜けなくちゃいけないんだ
最後の高校生の夏だから
最初で最後の青春だから
ここではないどこかに
もっと生きやすい場所はあるだろうか
君たちの考えは浅くて甘い
君はまだ何もわかっていない
君は出来ない人間だ
君はそんな器量じゃないはずだ
先生という存在は
たやすく言葉に期待と失望を込める
それらを受け取った側の
やり場のない劣等感も葛藤も気に留めずに
君と最後に会った日
私は最後とわかっていたはずなのに
言いたいことのひとつ言えずに
言おうとさえせずに
まるで君は見知らぬ他人だったかのように
最後の最後まで向き合わなかった
この途方もない寂しさから
全身全霊で逃げていたんだ
君がいなくなって
自分が保てなくなるのが怖いから
君がいなくなって
自分の愚かさに気づきたくないから
私が先に去った方が
私の傷は浅くて済むと思った
どんな時も私は
自分のことしか考えていなかった
君のことを考えている振りをして
常に自分を守ろうとしていた
繊細な花に愛情をかけた人がいた
儚いものばかりの世の中で
愛だけは離さないと誓ったその人は
優しくて哀しかった
その人は私に教えてくれた
別れることと手放すこと
そこには真の愛があると
その愛は繊細な花のように
脆く美しいものであると
守るべきものに守られて
好きなものに大切なものを奪われて
失って初めて得られるものがあって
愛を求めるほど虚しくなる
答えがほしいことほど矛盾している
そんな世界で
私はいつからか
心から生きられない呪いにかけられていた
でもきっと
その呪いに向き合う人は
なによりこの世界を愛したいと思っている
1年後
好きなあの子も
嫌いなあの子も
今みたいに一緒にいることはない
私がずっと好きだった人が
私だけの人ではないことが辛い
私は束縛されたくないと常に思っている
私は最低なエゴイストの遺伝子を持っている
私がずっと苦手だった人が
今日は人前ですごく頑張っていた
本番前にとても緊張していたのを私は知っている
ああこの人も私と同じ人間なのだと思った
どんなにその時は嫌だと感じても
たまらなく好きな時があっても
ずっと同じ気持ちでいられることはないんだ