本当に幸せな日だった
素敵なドレスで舞踏会に参加して
王子様と踊ることができたのだから
これからどんなに虐げられて
見下されて、ボロボロになっても
今日という日を思い出すだけで
きっと希望を持って生きていける
私は魔法のような一時に別れを告げて
城から飛び出して必死に走った
時計の針が重なって鐘が時を知らせる
私にかけられた魔法は徐々に解けて
夢から覚めたように全てが消えていく
やっとの思いで屋敷に辿り着いた時
私は片方の靴を落としたことに気がついた
曇天が覆う世界の隅で
最期の考え事をする
思えば、待ちぼうけの人生だった
誰にも愛されず
誰からも認められない
誰も来ないとわかっていながら
私を迎えに来る誰かのことを
ずっとずっと待っている
でも、これでもうお終いなのね
幸せにはなれなかったけれど
もう終わりで構わない
視界は次第に暗くなっていく
強い眠気に身を委ね、目を閉じる
結局、私を迎えに来てくれたのは
涙と永遠の眠りだけだった
雨の降る街の中、私たちはカフェにいた
話を聞いてほしかった
何も気づかないフリをして
愛をくれた人を邪険にして失ったことを
どうすれば、またあの人に会えるでしょうか
私がそう話すと、貴女は静かに呟いた
虹の架け橋を渡ると、大切な人に会えるのだと
そんなことできるわけがないと返すと
貴女は窓の外を見て、ただ悲しげに笑った
「そう、虹を渡ることはできない」
「失ったものは、もう二度と戻らない」
心が締め付けられるように痛くなった
雨は止むことなく酷くなっていく
本当はずっとわかっていた
後悔するには遅すぎたのだと
今さら何を願ったところで叶わないんだって
貴方が遠くへ行ってしまうと知った
ただ一言行かないでと言えていたら
今も言葉を交わせていたかもしれない
でも、ずっと怖かった
貴方に拒絶され、嫌われることが
もう二度と会うことはできないのに
意味のない希望を持って、恐れてしまった
もしも世界が終わるなら
あの時きっと、貴方に想いを伝えられたのに
思い出すことしかできなくなった
貴方の隣で笑えていた記憶を
何度も何度も繰り返して
以前の想いに囚われたまま
自分だけが取り残されていく
いつか私も全てを思い出にして
前へ進むことができるだろうか