Lacryma

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5/6/2025, 3:21:19 PM

月が美しく輝く夜

私はある歌を聴いていた

それは貴方が好きなラブソングだった

"唯一人のあなたへ、本当にありがとう"

"ずっとあなたを愛しています"

"これからも側にいて、支え合って生きていこう"

今の私を貫くような歌詞ばかり

自分たちによく似合う曲だなんて冗談を言って

幸せだと笑い合っていた日々が遠く感じるわ

でも、これでよかったんだよね

貴方はもう私を愛せなかった

きっと私も、もう貴方を幸せにできなかったから

だから、貴方を想うのはこれでお終い

私は替え歌を口ずさみながら帰路につく

"唯一の貴方へ、今までありがとう"

"ずっと貴方を愛していました"

"これからは別の道、互いを忘れて生きていこう"

5/5/2025, 3:05:09 PM

月のない夜だった

ふと机を見ると、一通の手紙が目に入った

それは私が貴女に送るはずだったもので

手紙を開くと「愛している」とだけ書かれていた

私は少し前まで、確かに貴女を愛していた

貴女といるだけで幸せだった

私はその幸せを愛せなくなってしまった

別れ際、静かに泣く貴女を見ても

涙を流すことなんてできなかったのに

どうして今になって涙が出てくるのだろう

もう貴女を愛せない

後悔しても意味などないのに

私は「愛している」の文字を消し

送ることのない手紙に言葉を綴った

"貴女へ、本当にごめんなさい"

"今まで私を愛してくれてありがとう"

"どうかお元気で、さようなら"

5/4/2025, 3:47:03 PM

同じ大地の上にいるのに

同じ空を見ているのに

貴方の声も姿も人となりも

私は何一つとして知らない

どこかでその瞳を見かけても

それが貴方だと気づけない

どうしてこんなに切ないのかな

きっと、これから先もずっと

貴方を知ることなんてないのに

どうしてそんなことが悲しいんだろう

5/2/2025, 6:26:42 PM

街の一角にある本屋で小説を探していた

今の私の心を代弁してくれる本が欲しかった

どうしようもなく悲しくて

心が壊れてしまうような後悔の物語を

店内を回っていると、ある一冊の本が目に入った

『sweet memories』と名付けられたその本は

二人の恋の成就を辿る王道の恋愛小説だった

どうせ最後はハッピーエンドなんだろう

「なんてくだらないの」

私は本を戻し、店を飛び出して当てもなく走った

酷い雨に打たれていることも気にならなかった

意味のない考え事ばかりが心を占めていて

ねぇ、行き場のないこの願いは

どうやって捨てればよかったんだろう

私だって報われたかった

好きな人に好きになってもらいたかった

こんな痛みに苦しめられるくらいなら

いっそ貴方を知らないままでいたかった

5/1/2025, 2:03:32 PM

「明日は遂に歴史に刻まれる瞬間となり

そして、私の最期の日でもあるだろう」

そう言い放った貴女の瞳は

覚悟と揺るぎなき信念に満ちていた

でも、その覚悟の裏にある恐れと憂いを

私はずっと知っている

「怖いのか、貴女が向かわんとする死の先が」

私が問うと、貴女は微笑んで頷いた

「怖いさ。私のように反乱を率いたものは

きっと天に迎え入れられることもない」

こんなに泣きたくなったのはいつぶりか

人々を救おうとした貴女の想像する未来が

あまりに報われないものであるように感じて

「天国は遠く在るものだ

近くに在っては皆すぐに行きたがってしまうだろう」

口をついて出た夢物語に己が呆れたが

「その通りだ」と笑う貴女に、私は心から祈った

願わくば、遥か先の平和な未来で

貴女が全てを忘れて幸せに生きられるように

それが、風とともに自由を謳う貴女への

唯一の手向けだっただろう

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