Lacryma

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街の一角にある本屋で小説を探していた

今の私の心を代弁してくれる本が欲しかった

どうしようもなく悲しくて

心が壊れてしまうような後悔の物語を

店内を回っていると、ある一冊の本が目に入った

『sweet memories』と名付けられたその本は

二人の恋の成就を辿る王道の恋愛小説だった

どうせ最後はハッピーエンドなんだろう

「なんてくだらないの」

私は本を戻し、店を飛び出して当てもなく走った

酷い雨に打たれていることも気にならなかった

意味のない考え事ばかりが心を占めていて

ねぇ、行き場のないこの願いは

どうやって捨てればよかったんだろう

私だって報われたかった

好きな人に好きになってもらいたかった

こんな痛みに苦しめられるくらいなら

いっそ貴方を知らないままでいたかった

5/2/2025, 6:26:42 PM