今日でこの想いに終止符を打つの
貴方だけを想っていたけれど
なんだかもう、疲れてしまった
なんと言われてもいい
私の想いを酷く拒絶しても
私はもういかなくてはならないのだから
ああでも、ひとつだけ
さよならは言わないで
叶わないとわかっていても
きっとまたいつかと願うだけで
どんな悲しみにも耐えられる気がするの
昔、大空を司る天の女神は
貴く輝く光に影を落とし
清く純心たる闇に灯火を射した
二つの世界は崩壊した
一欠片の秘宝だけを遺して
女神の大罪によって、世界は色を失った
だが、今も何処かに存在しているらしい
二つの秘宝が入り混じり、交互に訪れる
光と闇の狭間の世界が
貴女はすぐ側にいるのに
手を伸ばせば触れられるのに
まるで見えない壁があるように
貴女を振り向かせることができない
まるで心臓が掴まれているようだ
私と貴女の間に
こんなにも距離があるなんて
貴女に触れることができないなんて
もう随分と長い間
貴女を想って生きてきた
いつかこうなることはわかっていた
だって貴女は人間で
私は悠久の時を生きる種族で
貴女は私の人生のほんのひと時しか
この世界に存在していなかった
それでも私の心には
貴女の存在は大きすぎたよ
ずっと貴女の言葉に縋って生きているんだ
それが嘘だとわかっているのに
約束など果たせないとわかっているのに
貴女の声を、姿を、優しさを忘れても
最期の記憶だけは失くさないように
「泣かないで、大丈夫。きっとまたいつか」
と繰り返して
美しく輝く月を見ていたら
昔、貴方が話してくれた物語を思い出した
それは、戦士の少年と魔法使いの少女が
大切ななにかを探す旅の物語で
私はわくわくしてその話に聞き入っていた
でも、旅の最中
少年が魔物にやられて意識を失ってしまった
少女は必死に呼びかけたけれど
少年は何日経っても起きなくて
少女は奇跡を求めて一人歩き出した
暗黒の洞窟、不気味な森、陰鬱な迷路
どんなに心細くても
勇気を出して進んでいたけれど
少女はついに疲れ果てて
歩みを止めてうずくまってしまった
私はこの物語の続きを知らない
二人の結末を聞く前に
眠りに落ちてしまったから
ねえ、貴方も寝ていないで
彼らの物語の続きを待っているよ
何日も起きない貴方の頬に触れて
何度も呼びかけてみるけれど
貴方はまだ目を覚まさないのね
起きて
貴方が目を覚ましてくれないと
暗く寂しい闇の中で
少女は涙を流し続けているわ
ねえ、どうかお願いよ
まだあの子たちの未来を聞いていない
きっと幸せな結末を迎えるはずなのだから
彼らの物語を終わらせないで