Lacryma

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10/27/2024, 12:33:17 PM

貴方が好きだった紅茶の香りがする

一体誰がこんな悪質な悪戯をしているの?

今さら思い出させるなんて残酷ね

この香りを辿っていっても

貴方に会えることはないのだから

10/25/2024, 11:16:39 AM

ずっと独りだった。友達になってくれてありがとう

貴女はいつも私に言ってくれた

だから、つい目が眩んでしまった

お姫様を夢見た貴女に、少しでも喜んでほしくて

私は貴族の宝石に手を出してしまった

すぐに兵に見つかり、隙をついて走り出す

ごめんなさい、すぐに返すから

そう思った瞬間、腹部に鋭い痛みが走った

私は射られたのだ

宝石の持ち主は、私のもとに来て言った

卑しい盗人よ、顔を見せなさい

私は彼女の顔を見る

そこにいたのは、私の友達だった

あぁ貴女、私といたのは貴族のお遊びだったのか

言いたいことはたくさんあったが、力が抜けていく

それでも私は、声を絞り出して言った

ごめんなさい、私の、大切な友達

薄れゆく意識の中、最期に見えたのは

私の名前を泣き叫びながら駆け寄ってくる

私のよく知る、友達の姿だった

10/25/2024, 8:37:59 AM

さようなら、私の光よ、愛した人よ

貴方はそう言って微笑んで

静かに私に背を向けた

さようなら、愛しい人。きっと、またいつか

そう返事をして、私も貴方に背を向ける

だけど彼と違って

私は歩き出すことができなかった

きっといつかなど、ないのだから

私たちはここで終わるのだから

私はただ、苦しみを吐き出すように

行かないでと声にした

届かない言葉に嗤い、涙を拭いた

もう立ち尽くしている時間はない

たとえどのような結末になろうと

最期は笑って、この悲劇を終えるのだ

10/22/2024, 4:53:18 PM

もうじゅうぶん時間は稼いだ

皆は今頃峠を越えた頃だろう

追手が彼らに追いつくなど無理な話だ

私は息をつき、自らの足を見やった

きっともう、故郷に帰ることはできない

冷たい風が髪を揺らす

そういえば、衣替えの時期であった

足止めを遂行し未練などないと思っていたが

欲を言えば、美しく雪と舞う貴女を

たった一目でも、この目で見てみたかった

この願いはもう決して叶わないけれど

貴女が生きて、時折でも私を思い出してくれるなら

騎士としてそれ以上に望むことはないだろう

そのはずなのに

欲深い私は最期まで願ってしまう

もし、来世があるのなら

その時はきっと平和な世で、貴女の側に

10/21/2024, 5:16:24 PM

この戦いで愛する人を失った

彼女を失って初めて知った

誰かを失うということは

こんなにも苦しいものなのだと

英雄と呼ばれた私は、敵を悪だと信じ

一切の躊躇なくその命を奪った

だが、私は

私こそが、悪魔のようではないか

一体どれほど、誰かの大切な人を奪ってきたのだろう

私の隣で彼女に追悼を示している友は

ただ静かに、独り言を言うように呟いた

君は確かに、ずっと奪ってきた

誰かの希望を、光を、愛を

だが、忘れないでくれ

それは同時に、誰かの大切な人を守っていた

彼女はずっと、それを君に伝えたがっていたよ

その言葉を聞いて

私の心は哀惜と後悔に支配された

もう二度と会えぬ彼女への想いを叫ぶように

ただ、声が枯れるまで泣き続けた

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