Lacryma

Open App

もうじゅうぶん時間は稼いだ

皆は今頃峠を越えた頃だろう

追手が彼らに追いつくなど無理な話だ

私は息をつき、自らの足を見やった

きっともう、故郷に帰ることはできない

冷たい風が髪を揺らす

そういえば、衣替えの時期であった

足止めを遂行し未練などないと思っていたが

欲を言えば、美しく雪と舞う貴女を

たった一目でも、この目で見てみたかった

この願いはもう決して叶わないけれど

貴女が生きて、時折でも私を思い出してくれるなら

騎士としてそれ以上に望むことはないだろう

そのはずなのに

欲深い私は最期まで願ってしまう

もし、来世があるのだとしたら

その時はきっと平和な世で、貴女の側に

10/22/2024, 4:53:18 PM