Lacryma

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10/22/2024, 4:53:18 PM

もうじゅうぶん時間は稼いだ

皆は今頃峠を越えた頃だろう

追手が彼らに追いつくなど無理な話だ

私は息をつき、自らの足を見やった

きっともう、故郷に帰ることはできない

冷たい風が髪を揺らす

そういえば、衣替えの時期であった

足止めを遂行し未練などないと思っていたが

欲を言えば、美しく雪と舞う貴女を

たった一目でも、この目で見てみたかった

この願いはもう決して叶わないけれど

貴女が生きて、時折でも私を思い出してくれるなら

騎士としてそれ以上に望むことはないだろう

そのはずなのに

欲深い私は最期まで願ってしまう

もし、来世があるのなら

その時はきっと平和な世で、貴女の側に

10/21/2024, 5:16:24 PM

この戦いで愛する人を失った

彼女を失って初めて知った

誰かを失うということは

こんなにも苦しいものなのだと

英雄と呼ばれた私は、敵を悪だと信じ

一切の躊躇なくその命を奪った

だが、私は

私こそが、悪魔のようではないか

一体どれほど、誰かの大切な人を奪ってきたのだろう

私の隣で彼女に追悼を示している友は

ただ静かに、独り言を言うように呟いた

君は確かに、ずっと奪ってきた

誰かの希望を、光を、愛を

だが、忘れないでくれ

それは同時に、誰かの大切な人を守っていた

彼女はずっと、それを君に伝えたがっていたよ

その言葉を聞いて

私の心は哀惜と後悔に支配された

もう二度と会えぬ彼女への想いを叫ぶように

ただ、声が枯れるまで泣き続けた

10/21/2024, 1:19:11 AM

なぜ裏切ったの、なんて

貴方に聞いても答えないだろう

貴方は堕落し、私に刃を向けた

私の声など届かない

貴方を愛した、私の言葉など

思えば始まりはいつもこの場所からだった

私と貴方が出会ったのも

彼らを滅する決心をしたのも

半身として互いの剣、盾になろうと

誓いを交わしたのも

ならば、ここで終わらせよう

青きステンドグラスを通す光に照らされた

貴方の瞳が二度と曇らぬように

ここで、私の光と共に

10/17/2024, 6:07:43 PM

すべてを忘れて、貴女は幸せになって

そう言って微笑んで、花と消えた貴女を

私はずっと、心に想っている

愛を知ってはいけないなんて

あれは女神様の意地悪ではなかった

気高き存在と呼ばれる私たちは

誰かを愛して、堕落してはいけなかった

すべてを捨てて貴女と堕ちたのに

貴女は何も残さず消えてしまった

この哀惜を忘れてしまわなければ

直に私も消えてしまうだろう

でも、どうして忘れることができるというの

貴女の存在を

貴女を想った証を

そのすべてを失うというのなら

私も、貴女の愛と共に花となって消えよう

10/16/2024, 4:04:34 PM

王国は度重なる天災に見舞われ

恐怖と焦燥に駆られた国民は

森の民が神の怒りを呼んでいるのだと怒り狂った

暴動が起こるのも時間の問題だったのだ

私は一人の騎士を呼び出し命令を下した

異端の民を根絶やしにせよ、と

優秀な騎士であり古くからの友人である彼は

私の意図をすぐに理解したようだった

長きに渡る親交の末の裏切り

彼らには生涯恨まれるだろうがそれでいい

私はただこの罪と無念を吐き出すように

やわらかな光が照らす肖像に祈った

愛しき妻よ、許してくれ

貴女の家族を裏切り、森の最奥へ追いやることを

無二の友よ、許してくれ

憎まれ役、愛する者との別れを強いることを

そして神よ、お許しください

民の恐れも晴らせぬ、安寧も守れぬ

この弱き王の無力を、独白を

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