その日は彼氏の就活の結果発表の日だった。
第一希望先だったから普段通りに過ごすようにしていたけど、今思えば全く普段通りの行動はとってなかったなと思う。
いつもはしない家の近くの土手を散歩しながら、合格したら遠距離だねなんて話してた。
土手で発表時間を迎えて祈るようにスマホを覗いたら見事合格。
人目も気にせず2人で大はしゃぎしながら空を見上げたら水平虹が出てた。
全く雨も降っていない晴れの日だったから珍しくて記念に撮った写真は今でも大切に残してる。
虹を見ながらこれで遠距離確定かぁ、なんて思ってたけど、あの時土手に散歩行って良かったねって、今でも旦那とよく話す。
「君と見た虹」2025.02.22
「なー、海行こう」
塾の帰り道、勉強の息抜きに海に行くことになった。
気分転換には丁度良い。
こういう時は海の街で育ったことを誇りに思う。
午前中だけ授業の日だったので、太陽の位置もまだ高い。
途中コンビニに寄り道して買ったソーダを飲みながら浜辺を目指した。
「おーおー輝いてんな」
「眩し……!」
「なんかいい石ないかな」
太陽の光が海に反射し思わず目を細める。
今日は本当に良い天気だ。
ヤツは海で水切りでもするつもりなのか小石を探している。
水切りがしたいなら川のほうが良かったんじゃ……と思いつつ近くにあった手頃な棒を拾った。
そのまま砂浜に文字を書く。
「今日の復習です」
「んぇ?」
気の抜けた声の主は手頃な石がなかったのか、落ちてる貝殻を吟味していたようだ。
左手に2、3枚貝殻が乗っている。
「ほら復習、【蛍雪】」
「あー、けいせつ」
「【放埒】」
「ほ、ほうらつ……」
「【誤謬】」
「なんだっけこれ!!」
間違えたんだよなぁ、と砂浜を眺めるヤツを横目に波打ち際に向かう。
先ほどと打って変わって水を含んだ砂に書く文字は少し重たい。
二文字を書き終え叫ぶ。
「じゃあこれはー!!」
「あー?なんでそんな遠いとこ書くんだよ!」
文句を言いながらも駆け寄ってきたヤツがたどり着く前に、大きな波が書いた文字を攫っていった。
「消えてんじゃん、愛……昔……?」
そんな言葉あったか?と、顔を傾けながら私が書いた文字を想像している姿に笑ってしまう。
手に持ったソーダを一口飲み、まだ冷たいボトルをヤツの頬にくっつけた。
今はまだ、波が攫ってくれるくらいがちょうど良い。
「ひそかな想い」2025.02.20
あの日見た
懐かしい影に
立ち止まり
話しかけるは
誰ぞ彼時
「あなたは誰」2025.02.19
拝啓
春まだ浅き今日このごろ。
寒さに震え、ヒートテックを2枚重ねても芯から冷えた体には無意味でした。
周りからはヒートテックよりもしっかり食べてミートテックをつけろと言われますが、
お生憎様、私の1日に食べれる量は微々たるもの。
テクノロジーの発展に甘んじ今度は極暖を2枚重ねてみようかと思います。
2月も中旬となりました。
1ヶ月半もすれば3月も終わり、2025年の4分の1が過ぎようとしています。
子供の頃は1日1日を長く、そして楽しく感じていましたが、今や家と職場を往復の日々。
1日の時間は短いのに、月曜から金曜の5日間は恐ろしく長い。
このような状況ですから、土曜・日曜の愛しい双子の休日は少し目を閉じている隙に私を置き去りにしてしまうのです。
さて、皆様におかれましては同じく仕事・学校、その他様々な事情でご多忙のこと、推察いたします。
来る春に向け、雪風に吹かれながら芽吹く準備をしている人もいるでしょう。
芽吹かないと決めた人も、芽吹く気力がない人もいるでしょう。
私は芽吹く気力がない方です。
とはいえ春はいずれ来ます。
春は変化の多い季節。
出会いや別れもあるでしょう。
この手紙をここまで目を通してくれた貴方との一期一会のご縁に乾杯。
明日も貴方の思うがままにお過ごしください。
梅薫る季節、幸多き春の門出となりますよう心よりお祈り申し上げます。
どこの誰でもない私より
今日を生きる貴方へ
「手紙の行方」2025.02.18
瑞風に 揺られ水面に 溶けゆくは
待宵の月 君と僕をも
「輝き」2025.02.17