そう聞いてるうちは、到底無理
水底に潜って泡を掴むような感覚に襲われる
三十作目「なぜ泣くの?と聞かれたから」
それは悲哀を模るグランギニョルだったかもしれない。
星の見えない真夜中の、御伽噺とは言い難い滑稽な物語。
つくづく言葉選びを間違え続けた己への戒め、或いは他人へのこの上ない執着と束縛が今、消え失せた気がした。
勿論そんなことは無いのだけれど、自分の中で確かに何か変わった気がした。
飽くまでも自分は天使になれず神に見初められず薬を酒で呑み込んでは吐き出す堕落的な人間であるし、元より人間性や倫理という詞とは対極であるが。
故に、言葉にならずに蒸発してった嫉妬の数々が、どす黒く澱となって蓄積されている訳なんだろう。
後悔とか焦燥とかもう聞き飽きた。
圧倒的多数が、これは悲劇と宣うであろう。
だが、もし、一人でも、これを自業自得だと叱責するなら、或いは喜劇と云うなら、その時点で終演だ。
それでも今、いちばんしたいことは、ただ、安らかに、沈んで、
そして光に導かれ、在るべき場所に還ることだと思うんだ。
今、私の左手に貴方の右手が重なった、そんな幻覚を見た気がした。
また薬を飲まなきゃ。汚い物を洗い流そう。
【Repeat】
二十九作目「言葉にならないもの」
言葉にしたくないから、敢えてならないふりをしている
白い自動車に紅色が散った塾帰り
夜というのに蒸し暑くて蝉の声が煩かった
二十八作目「真夏の記憶」
やさしさなんていらなかった。
一刻も早く、こんな体躯に閉じ込められてしまった臓器達を解放してあげたい。
愛されないと死んでしまうが、反対に、愛されなければ死ねるのだ。
僕はずっと考えていた。
どうすれば生きたいと思えるか、そのために、どうすれば君に愛されるか。
容姿も言動も性格も、何もかもに気を遣った。
君の好みになりたかった、ただ、愛されたいが為に自己を捨て他人の理想に成り代わった、それが今の僕で昔の僕はまるで別人だ。
それでも塵屑は塵屑のままで変わらず、僕はいつまで経っても結局流れる血は変えられずその毒を巡らせ続けている。
だからもう辞めにしたい。
僕は演技が下手だから、それに思ってもないことをつらつら口に出せなかったし、相当な苦労を以て他人になった。
でも全部無駄だった、僕は幸せにはなれないから、君に愛されなかったから。
中途半端な好きも愛も要らない、やさしさなんて要らない、早く殺してよ、そしたらようやく、生まれてきたことを後悔しなくなるから
二十七作目「やさしさなんて」
いつだって、心の羅針盤の指し示す方角へ歩いてきた。
それが招く結果が幸か不幸かは分からずとも、自分の気持ちに正直に生きていたいと思っていた。
だがその偉大なるコンパスは狂ってしまった。
自分は遭難した、広大で荒れ狂う海の中。
そのとき気が付いた。
自分が乗っていた船は豪華客船でもなくて、マグロ漁船でもなくて、
ただ、泥に塗れ船の形を騙る木片であると、或いは温度の無い鉄の塊であると。
あぁそうだな、これからはもう、沈む以外に無いんだ。
社会の荒波に呑まれて精神を擦り減らした。
心の羅針盤は正しかった、しかし、脆かった、耐えられなかった。
でももう必要無い、行く場所はひとつ、水底へ堕ちるだけだから
二十六作目「心の羅針盤」
曖昧がだいすきな曲を彷彿とさせるキーワード。
現在精神的な問題で執筆が難しく、日を空けての投稿が続くと思います。最近はずっとそうだったので今更それ言うのかという感じですが…。それと、いつも♡をくださる方々には本当に感謝しています。