それは悲哀を模るグランギニョルだったかもしれない。
星の見えない真夜中の、御伽噺とは言い難い滑稽な物語。
つくづく言葉選びを間違え続けた己への戒め、或いは他人へのこの上ない執着と束縛が今、消え失せた気がした。
勿論そんなことは無いのだけれど、自分の中で確かに何か変わった気がした。
飽くまでも自分は天使になれず神に見初められず薬を酒で呑み込んでは吐き出す堕落的な人間であるし、元より人間性や倫理という詞とは対極であるが。
故に、言葉にならずに蒸発してった嫉妬の数々が、どす黒く澱となって蓄積されている訳なんだろう。
後悔とか焦燥とかもう聞き飽きた。
圧倒的多数が、これは悲劇と宣うであろう。
だが、もし、一人でも、これを自業自得だと叱責するなら、或いは喜劇と云うなら、その時点で終演だ。
それでも今、いちばんしたいことは、ただ、安らかに、沈んで、
そして光に導かれ、在るべき場所に還ることだと思うんだ。
今、私の左手に貴方の右手が重なった、そんな幻覚を見た気がした。
また薬を飲まなきゃ。汚い物を洗い流そう。
【Repeat】
二十九作目「言葉にならないもの」
言葉にしたくないから、敢えてならないふりをしている
8/13/2025, 10:59:35 AM