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5/9/2025, 11:18:26 AM


本日のテーマ『夢を描け』

描く。夢を。ノートに。

最初の1ページ目に『ケーキ屋さんになりたい』と書いた。
母さんが毎年誕生日に買ってきてくれるイチゴの乗ったショートケーキが好きだったから。
でも皆から男のくせに変なのと馬鹿にされて恥ずかしかったので破り捨てた。
2ページ目に『宇宙飛行士になりたい』と書いた。
俺が小学生の頃に人気だった職業だから。
本当はたいしてなりたくなかったし興味もなかったのですぐに破り捨てた。
3ページ目に『漫画家になりたい』と書いた。
自分より遥かに絵を描くのが上手い同級生がいて、その人の描いた絵を見た時にページを破り捨ててノートごと踏みつけたくなったがなんとか我慢した。
4ページ目に『インテリアデザイナーになりたい』と書いた。
専門学校にまで通ったのに普通になれなかったので破り捨てた。
5ページ目に『お金持ちになりたい』と書いた。
通帳の残高を見ると悲しくなってくるので考えるのをやめた。

なんだこれは……俺にどうしろっていうんだ……!夢も希望もなにもないぞ!
夢を描くノートに残っているページの枚数も中盤くらいに差し掛かってきている。
ここらでなんとか軌道修正しないと、チラシの裏に書いた感想文のまま俺の人生は終わってしまうかもしれない。
なにか、なにかないのだろうか、俺にはもう夢がないのか……
そんなふうに考えながら、どこに持ち込むでもない、誰に見せるでもない漫画を一人で描いている。
6ページ目には加えられない。漫画でいうところの外伝ってやつだ。

4/23/2025, 12:51:55 PM


目まぐるしく過ぎた4月も終盤に入った。
もうすぐ皆が心待ちにしていたGW(ゴールデンウィーク)がやってくる。
直訳すると黄金週間。
今年のソレは最長で11連休もあるそうだ。それだけ休みがあれば何でもやり放題で、その気になれば徳川の隠された埋蔵金を求めてトレジャーハンティングに時間を費やすことも可能である。
上手く事が運べば大判小判がザックザクでウハウハの、まさしく黄金週間といった感じだ。
まぁそんな簡単に妄想が現実化するわけない。
だいたい一般の人は11連休も休みを与えて貰えない。そこまでたくさん休めるのは大手の企業に務めている人とか経営者の人くらいのものである。
実際、俺だってちょっと無理して無理やり5連休作るので精一杯だったし。
休み明けに連勤になるのを加味して考えると、黄金週間っていうより休日を前借りしてるだけの借金週間って感じだ。
それでも連休は連休である。じゅうぶんにGWの気分を味わえることだろう。
…と、いうわけで、さてGWは『どこへ行こう』
ここで大事なのは出来るだけ具体的に行き先を思考することである。
ぼんやりと、どっか行きたいなぁ、と考えている程度だと結局、何もせずに家に閉じこもって連休を無為に消化してしまう。
たとえば皆さんも今日は仕事の日だから仕事に行く、洗剤のストックが切れたから買い物に行く、余裕を持ってこう考えていると必ず仕事に行くし必ず買い物にいくはずだ。
そう、大事なのは、やれるかやれないかではなく、好きか嫌いかでもなく、目的を事前に決めているかどうかだけなのだ。
なのでせっかくだしココで目的を決めてしまおうと思う。
目的……GWにやるべきこと……草津温泉に行く。
数珠繋ぎのように直ぐに答えは出た。
というのも、知ったこっちゃないだろうが俺は無類の温泉好きである。
これまで俺は数えきれないほどの温泉地やスーパー銭湯を湯めぐりしてきている。その過程で右足の小指と薬指の間に水虫までうつされているのに、それでもやめられないくらい好きなのだ。
そんな俺が温泉マニアのメッカといっても差し支えない草津温泉に足を運んだことがない。屈辱でしかない。
草津町公式ユーチューブチャンネルをチャンネル登録しているこの俺が。
行く必要がある。現地名物の銘菓、花いんげん甘納豆も食べてみる必要がある。
GWの5連休という好条件を前にして行かない理由はどこにもなかった。

しかし草津温泉は遠い。
行くとしたら泊まりになる。
旅館を今から予約するのは難しいので、ネカフェやビジネスホテルで宿泊することになるだろうが、まぁそれはべつにいい。
それに幸い、金はある。
もちろん散財できるほどはないけど、人生経験のために使用する費用なので、ソシャゲに課金したり使いもしないクレープ製造マシーンや綺麗な丸い氷を作れる製氷機を通販サイトで買うよりかは有益なお金の使い方であるはずだ。

とにかく。
今年のGWは草津温泉に行こう。決定だ。
どうか皆、今年のGWは草津温泉「湯畑」湯滝前のライブカメラの映像から目を離さずチェックしていてくれ。
馬鹿でかいリュックを背負って帽子を被った変なヤツがカメラ目線で手を振っていたら、ソイツが俺だ。

4/19/2025, 5:48:00 AM


『物語の始まり』を目にした時、俺はいつも目を輝かせて食い入るように画面を見つめている。
いくつか例を挙げる。
たとえば映画。
目が覚めると病室。辺りはシーンと静まり返っている。長い眠りから覚めた状態で意識が混濁しているのもあって、何がなんだか分からないといった表情で病室から出てあたりの様子を覗う主人公…
周辺に転がっている半壊した車椅子や散らばった書類、それに血塗れの脱ぎ捨てられた白衣…自分が眠っている間に暴力的な出来事が病院内であったのは確かだ。その原因を探るべく不穏な雰囲気に臆しつつも光が差す方向へ歩を進めていく主人公…『物語の始まり』として完璧だ。
たとえばゲーム。
近未来的な工業コンビナートのような情景の一部分に画面がズームアップされていく。
そこに走っているのは電車。ホームに停車した電車の中、ではなく、なんと上から飛び降りてきた謎の集団が『なにやってんだお前ら!?』と駆け寄ってきた駅員を蹴り飛ばして気絶させる。
駅員を一蹴した謎の集団が走り去って行った後、一呼吸おいて電車の上から飛び降りてきた謎の集団のリーダーと思われる筋骨隆々な浅黒い肌の男が最後に降りてきた金髪ツンツン頭の男に向かって言う。
『行くぞ新入り! 俺に続け!』
そこでイベントは終わり、プレイヤーは金髪の男を操作できるようになる。何がなんだか分からないままそれでもとりあえずリーダーの後を追うしかない。隠された謎を解明するために前に進む。『物語の始まり』として最高の導入だ。
たとえば現実。
目が覚めるとボロアパートのベッドの上。
仕事が休みなので電車に乗って近くのショッピングセンターでやっているフリーマーケットを覗きに行く。
茶碗の良し悪しなんてなんにも分かってないくせに、青色の綺麗な飯茶碗を手に取って眺める。つけられている値札を見たら800円もしたので壊さないようにソっと定位置に戻す。
フリマの催しに伴って出店している屋台でたこ焼きでも買って食べようかと思ったけど、お金がもったいないと思い直して往復の電車賃だけ使って何も買わず何も発せぬままアパートに帰宅して酒を飲む。
『物語の始まり』において最悪の始まり方だ。何かが始まる気配すらない。酒を飲んでしまっているので今日一日が無駄に終わるだけまである。

それでも俺とて出来る限り家に閉じこもらないことを心がけている。
それは自分から動かなければ何も始まらないのを俺は知っているからだ。まぁ動いてみたところで事態は好転しないので結局一緒なのだけれど。
俺が取っている行動は仰向けになってしまったセミが起き上がろうと必死にもがいているのと同じで、やってみたところで無駄な足掻きなのと同義なのかもしれない。
しかし映画やゲームで例えたのだからそれらにならうと、俺の人生なんて視聴やプレイを始めてからまだ30分を過ぎたくらいのはずだ。
30分間なんてグダグダでしょうもない日常を延々と描写されていたとしても、そこから一気に面白くなってきたり、どんでん返しがあったりするのを期待できる微々たる時間である。まだ慌てる時間ではないのだ。
……そうだよな?
誰にともなくたずねてみる。

4/14/2025, 5:35:07 AM


『ひとひら』

そう聞いて何を思い浮かべるだろう。
大半の人は桜の花びらが宙に舞う様を連想するんじゃなかろうか。
逆に他に何があるのだろう。足りない頭を使って考えてみるものの、しゃぶしゃぶの肉を『ひとひら』ヒョイっと掬って口に運ぶ。うーん、美味しい、くらいしか思い浮かばない。そんなので一つのテーマを書き上げられるはずもない。
なので、本日のテーマは休みの日に家に閉じこもってソーシャルゲームや動画投稿サイトの視聴に没頭してないでたまには外へ桜の見物にでも出かけてみたらどうだ?と遠回しに告げられているように感じた。
なにはともあれ、そう決めたら行動は早かった。

着替えて帽子を被り外出する。
外は快晴だった。
直射日光を浴びないように帽子を装着していたのに、それでも降り注ぐ光の暴力によって反射的にどでかいクシャミがでた。
太陽光を直視した際にクシャミが出る現象のことを『光くしゃみ反射』というらしい。
この症状は日本人の約25%の人に認められている遺伝性のものである。どうでもいいことだが、主な症状は眩しさを感じるとクシャミが出る、それだけだ。たぶん俺のご先祖様はモグラかミミズだったのだろう。

そんなことを考えながらとぼとぼ歩いていると、ほどなくして公園に到着した。
近くにあったベンチに座って満開の桜並木を見物する。
『ひとひら』というか、大量の花びらが頭上から降ってきた。肩に積もった桜の花びらを埃でもはらうように排除する。風情の欠片もない。
しばらくの間ボケっと桜を眺める。
…詩的な言い回しはおろか、本日のテーマ『ひとひら』に関するネタすら降ってこない。
歳のせいか、それとも元から空虚な人間性なのが原因か、とにかく感受性の燃料が完全に枯渇している。
ベツに拗らせて斜に構えているわけではない。桜を見たら俺だって『綺麗だな~』って思う。『綺麗だなぁ』って思った後、3分くらいで『さあ花も見たし帰るか』ってなるだけだ。
…言い訳したつもりなのに文章にすると尚のこと拗らせた嫌なやつに見えてくるのが不思議だ。
無言でベンチから立ち上がる。
そもそも正味の話、花見が目的で外出したわけではない。
俺は帰りにスーパーに立ち寄って、ボディーソープと台所用洗剤と酒を購入して自宅に帰宅した。

ボロアパートに帰って上着のパーカーを脱ぐ。
この時、花見の際に付着していた桜の花びらが『ひとひら』パーカーから零れ落ちてくれれば、なんだか良い感じに話をまとめられたのになぁ、と、ふと思った。
…現実はそんなに甘くないか。

4/10/2025, 5:53:27 AM


今日のお題『元気かな』

そう訊かれたので答えてみる。
体の状態で言うとスーパー銭湯で誰かにうつされたと思われる水虫は高い塗り薬を塗布しているのに一向に治る気配をみせないし、心の状態で言うとなんだかよく分からない感じで金がぶっ飛んでいく時期なので、漠然とした将来への不安が募って気分が沈んでいる。
ようするに、あんまり元気じゃない。
でも現実でそう人に訊かれたら俺はきっとこう答える。
「ああ、はい、元気ですよ、はは……」
思い返してみれば、小学生の頃に朝のHRで先生から今日の体調を訊ねられた時以来、ずっとそうだった気がする。
だって皆だって嫌だろう。
『元気ですか?』って何気なく聞いてみたら『元気じゃないです…』ってしにそうな顔で呟いて急に自分語りを長々と話し始めるヤツなんて。
俺だってそうだ。
『元気かな』って聞かれたら本当は元気じゃなくても「元気ですよ~! 今日も一日頑張りましょ~」ってカラっとした笑顔で言ってくれる人のほうが好きだ。
だから俺もそうしている。
……ぶっ壊さなければならない。そんな悪しき建前は。
そもそも皆なにかしら体や心に不調を抱えながら現代社会で生き続けているのだ。元気なわけがない。
元気がない時には『元気じゃないです……』って言うべきである。助けてほしい時には『助けてください』と言うべきなのだ。
皆がそう言える世の中にするためにも意識改革を行う必要がある。
そのために俺は今のろくでもない人生の全てを犠牲にできる覚悟があった。

とは言ったものの……
(さて、どうするか……)
ディープステート関係の陰謀論を声高に語るユーチューバーの動画を視聴しながら考える。
やはり、ここは味方を集めるべきだろう。
一人で叫んでみたってそれは俺が見てるユーチューバーのように、ただの気が触れた頭のネジが外れた人だ。けれど皆で言えばおかしいことでも正論のように思えてくるのを俺は知っていた。
仲間を集めなくては……
スマホを開いてアドレス帳を見る。ちょうどよく高校や専門学生時代の旧友たちの名前が並んでいた。
『みんな、突然だけど聞いてくれ! 元気じゃない時に元気ですって答えなくてもいい世の中にしよう!』とショートメッセージを作成し一斉送信しようと思ったが……いや、思う前にやめた。
かつての同級生たちは家庭を持っている人や、それなりの役職に就いている人もいる。黙って縁を切られるだけならまだしも、優しい旧友たちは良い大人になった俺を説教してくるかもしれない。大人になってからの説教はありがたいが、される本人はたまったものじゃない。新社会人の人は知っておいてほしい。大人になってから叱られるのって一番効くのだ。

それはさておき、旧友たちの名前を久しぶりに目にして懐かしさを覚えた。
みんな『元気かな』
もう何年もやり取りしてない人がチラホラいるけど、名前を見れば、かつての面白い思い出が頭に浮かんでくる。
元気でいてくれたら嬉しい。
ユーチューバーによると、世界はエイリアンと契約を結んでいる上流階級の人々に支配されているらしい。だとしても俺は大切な人たちが元気でいてくれればそれでいい。
その人たちが今元気じゃなかったとしても、『元気かな』と思いを巡らせるのは俺の自由だ。
仮に『元気かなと思って』とメッセージを送っても、みんなは『元気だよ、そっちは?』と返してくれるだろう。
そう返してほしいと俺も望んでいる。
だから意識改革の件は白紙に戻そう。
そしてくだらないことを考えるのはやめて仕事に行こう。出勤の時間だ。

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