僕は僕を否定する。心臓は脈打ち、血は走る。止まるんじゃないぞ。止まるんじゃないぞ。時間が過ぎていく。時間だけは無慈悲に過ぎていく。大人になればなるほどわからないものが増えた。許せないものが増えた。
本を読んだ、物語を書いた。考えて、考えて、考えて、考えた。止まれなくなった、止まらなくなった。僕は僕を否定する。僕は僕を否定する。でもそれでいいんだ。
静かな怒りが、否定だけが静寂の中心にいる。僕はまた机に向かう。自分を許さないために。僕が僕であることを肯定するために。僕はきっと間違っていない。
夢へ!
飛んでいけ。飛んでいけ。
すべてをかなぐり捨てて、明日も今も知らないように、今日死ぬように。今死ぬように。
必死に、必死に、死ねばいい。死ねばいい?
諦めるとか諦めないとかじゃない。やるしかない。進むしかない。使命でも、願いでもない。決定事項だ。
殺せ、殺せ。弱い自分を殺せ。
挫折も苦悩も見ないふりをしろ。知らないフリをしろ。
お前はヒーローだ。主人公だ。
周りがなんだ。数字がなんだ。やる気がなんだ。途方もないからなんだ。やると決めたらやるしかないだろう。
殺せ、殺せ。
平和とか幸せとかそういう言葉を投げかけられると僕みたいなひねくれ者は真っ先に拒絶反応を示してしまう。
現実はいつだってうだつが上がらない。働かなくちゃご飯は食べられないし、どんなに綿密に計画を描いても成し遂げることなく、ベッドの上の妄想に終わる。
他人と比べられることが怖くて、「あなたとは違います」って顔して生きている。その実、当たり前みたいな顔をして人を嘲る。自分の矮小さに目を瞑って。
「小さな幸せ」と言われて、「小さな」という言葉が気に食わなかった。大したことがないように、控え目そうなふりをしている。
幸せが幸せであることに変わりはない。感情や感覚に客観的な基準はない。だからそれは人に語るための幸せだ。他人に語るための幸せだ。
ある人が語る小さな幸せが別の人にとっては一生をかけてでも手に入れたい幸せなのかもしれない。それは言い過ぎかもしれないが、「小さな幸せ」という言葉が僕のように自分の矮小さを隠して、人を見下しているかのように感じてしまう。
ごめんなさい
母親の声が聞こえた気がして目を覚ます。
一人暮らしの春
夢から覚めた僕はとても恐ろしい気持ちになっている。思考と現実が混同して白濁して、それまで確かな存在感を持っていたはずの世界がぼろぼろと瓦解していく。寂しさと困惑。
僕は一体どこにいるのだろう。
「もううんざりよ」
本当にうんざりだった。こうして彼と向かい合って話すことも、彼のために朝食を用意することも。夜な夜な知らない香水の匂いを漂わせて千鳥足で帰ってくる彼。口からはアルコールの臭いがし、いつの間にか纏うようになった加齢臭にムッとしながら、私は彼のカバンを受け取り、肩を抱えてなんとかベッドまで連れて行った。
「お酒を飲むのはいいけど、私の知らないところで飲んでよね。」
彼は何も言わず、曖昧な微笑みを浮かべた。その微笑みには、少年のような無邪気さと疲労が混じっていて、彼も歳をとったんだなと感じさせた。愛情なんかとっくに尽きているはずなのに、私は彼を捨てることができない。
「おいで。」
甘い声で彼が囁く。その声はお腹の底から響くように、毛布に包まれるような安心感をもたらす。細く長い腕、少しくたびれた肌、高く鋭い鼻。そして、目元には微笑みが浮かんでいる。私はやっぱり、どうしようもなく彼が好きなんだと思う。
彼は私を愛していたし、私も彼を愛していた。けれど、彼は私以外の女も愛していた。彼が言うには、みんな平等に愛しているというけれど、それでもやっぱり寂しい。それでも彼を愛してしまうのは、もはや何かの罰なのかもしれない。
彼の腕に包まれると、すべての怒りや悲しみが溶けていってしまう気がする。彼の温もりは、いつも私をだめにしてしまう。私は目を閉じ、彼の鼓動を感じながら、自分の中の矛盾を噛みしめていた。
夜が明け、彼がまたどこかへ出かける。出かける前、いつものように「愛してるよ」と言って。何度も聞いたはずのその言葉なのに、私の心は今でも跳ね上がる。そんな自分にため息をつきながら、そっとコーヒーをテーブルに置いた。