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11/30/2024, 1:24:29 AM

 空気が締まって体の芯に冷えが届く。
 吐く息は白い蒸気になって視界を曇らせる。
 衣服の隙間から入り込む冷たい風に身震いしつつ、黄緑色に光る地平線を眺めながら暗がりの街を歩いた。

「なぁ、肉まん食わねえ?」
「俺おでん」
「やべえ、金あっかな」
「お前チャージしてねえの?」

 夏はスナックのチキン一択だったのに、湯気立つものばかり選ばれるようになると、ああ、冬が始まったなって思う。

「矢野、お前何する?」
「あんまん」
「お前ほんっと甘いの好きだな」

 あたたかい光、美味しそうな出汁の香り。
 そんな誘惑に負けて、俺たちはまんまとコンビニへ吸い込まれていくのだ。



『冬のはじまり』

11/28/2024, 11:04:48 AM

 まだ始まってすらないのに

 あなたと歩む人生を

 勝手に終わらそうとしないで


『終わらせないで』

11/27/2024, 11:53:56 AM

「親に感謝するのは当たり前です」

「ここまで育ててもらった感謝を伝える日ですよ」

「なんで素直になれないんですか?」

 こちらが大人げないほど
 親に反抗し続けていると
 信じて疑わない彼女
 その真っ直ぐな目に
 私はたじろいで口を閉ざした

 きっとこの子は親の愛情を一身に受けて
 曲がらないよう丁寧に育てられてきたんだな

 だから親との確執がある私が
 ただ素直になれない大人にしか見えないのか

「それはとても良い親御さんね」

 無理矢理口角を上げて目を細めた私に
 彼女は笑顔で頷いた

 この子と私は別世界を生きている

 そう認識して傷つかないために心を遠ざけた


『愛情』

11/26/2024, 1:14:29 PM

 仕事から帰ると熱っぽくて
 体温計で測ったらほんのちょびっと熱が出ていた。
 でも明日はシフト上どうしても休めないから
 気合いと解熱剤で下げて
 翌日も出勤していた頃が懐かしい。




 だからといって誰があの頃に戻りたいと言いますか。
 体調不良で休める世の中になって私は嬉しいです。


『微熱』

11/26/2024, 7:51:56 AM

 すくすく育つ緑の春
 灼熱の中見つめ返す黄色の夏
 冷たい空気に穂を揺らす茶色の秋
 眩しくて目を細める白い冬


『太陽の下で』

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