空気が締まって体の芯に冷えが届く。
吐く息は白い蒸気になって視界を曇らせる。
衣服の隙間から入り込む冷たい風に身震いしつつ、黄緑色に光る地平線を眺めながら暗がりの街を歩いた。
「なぁ、肉まん食わねえ?」
「俺おでん」
「やべえ、金あっかな」
「お前チャージしてねえの?」
夏はスナックのチキン一択だったのに、湯気立つものばかり選ばれるようになると、ああ、冬が始まったなって思う。
「矢野、お前何する?」
「あんまん」
「お前ほんっと甘いの好きだな」
あたたかい光、美味しそうな出汁の香り。
そんな誘惑に負けて、俺たちはまんまとコンビニへ吸い込まれていくのだ。
『冬のはじまり』
11/30/2024, 1:24:29 AM