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8/3/2024, 1:12:43 AM

 仄かに漂う消毒液の匂い
 廊下の賑わいからかけ離れた静寂の部屋
 一定のリズムを刻む電子音
 ベッドに横たわり眠っている君

 「   」
 名前を呼んでも目は開かれない
 「   」
 手を握っても握り返されない
 「   」
 君の目が閉ざされて何日経ったのだろう

 近くにあったスツールに腰を下ろす
 どうにか暇を作ってこの部屋を訪れているが
 君の経過はあまり良くないらしい

 君の両親と鉢合わせることもあるが
 会釈だけして何の言葉も発せてない
 そもそもまだ恋人の段階で
 お見舞いに来させてもらえてること自体が有難い

 本当は真っ先に駆け付けたかった
 君がどんな苦しい状態なのか
 先生から直接聞きたかった

「目が覚めたら渡したいものがあるんだ」
「こっちの都合で悪いんだけど」
「大事な時真っ先に駆け付けられる立場が欲しい」

 目を瞑って君の手を自分の頬に当てる
 ここに確かに君の温もりがある
 それに安心して涙が滲んできた



 君の指が僅かに反応したことに気づくのは
 まだしばらく先の話


『病室』

8/2/2024, 9:30:46 AM

 繁忙期の残業続きで疲れ切った体に鞭を打つ。ちょうどいい温度で湯を張って、ゆっくりと浸かる。
 胸まで浸かると、お湯の温かさに包まれてほうっとため息が出た。クーラーで冷え切った体が芯から温まる感覚がする。あまりの心地良さにウトウト眠気を誘われながら、浴槽の縁に頭を預けた。
 明日は休みで誰とも会う予定がないから、お風呂に入っても入らなくてもいい。汚れた自分に接するのは私だけだから。
 でも歳を重ねるごとに睡眠の質が関わってくるのだと気がついた。夜ぐっすり眠るには、体を温めたほうがいい。それからは休みかどうか関係なく、湯船にまで浸かっている。

「あーーー、明日どうしよう」

 一人暮らしを始めてから、明らかに独り言が増えた。なるべく外で声に出さないよう堪えているが、家だと人目がないから我慢せず口にしていた。今のところ近隣から苦情が来ていないため、多分ポツポツ喋る分には平気だろう。
 手を動かして、肩の方までお湯をかける。足元では急騰の吸い込み口がゴウっと鳴った。

「明日晴れるんだよね確か」

 電車の中にある液晶画面で見た天気予報を頭に思い浮かべる。酷暑と呼ばれる最高気温でカンカン照りらしい。

「あーーー、じゃあシーツ干すか」

 ついでに布団も。あとデニム類も洗おう。
 ゲリラ豪雨が例年より多い今年は、油断して外に干したまま出かけると雨に降られる可能性が高い。明日は一日家から出ないと決めたから、万が一ゲリラ豪雨がきても取り込める。
 だから明日は洗濯日和にしよう。
 こめかみからじんわりと汗が垂れてきた。結構浸かっただろうか。急騰のモニターを見るとたった十分しか経ってない。冬だと二十分でも三十分でも浸かっていられるのに。やはり夏は暑いし堪えられない。
 私はそそくさと湯船から出てシャワーを取った。お湯を抜いて掃除をしたら私のお風呂ルーティンは完成である。ささっとぬるま湯で流しつつ、今日は早く寝ようと決めた。


 実際起きたら日が若干傾きかけてたんですけどね。


『明日、もし晴れたら』

8/1/2024, 6:27:21 AM

 冗談で言った言葉が全部真に受けられる

 心から賛同しても自分の意見がないと言われる

 多くの約束を守っても些細な一回で信用されなくなる

 勘違いのまま発言して嘘つき呼ばわりされる

 勝手に他人からのイメージを押し付けられる



 別にいじめられてない

 ハラスメントも受けてないし

 暴力を振るわれたわけでもない

 ただどうしても

 相手の何気ない一挙一動に過敏になるだけ

 多くは杞憂に終わって心が疲れるだけ



 だったら最初から一人でいい


『だから、一人でいたい』

7/30/2024, 3:31:14 PM

 嫌なところ、汚れたところ、腐ったところが
 視界に入るたび不愉快で仕方ないから
 瞳を濁さないと生きていけない人生です


『澄んだ瞳』

7/29/2024, 11:49:13 PM

 公共交通機関が動いていたら
 出勤や登校しなきゃいけないの
 マジでどうにかしてくれ

 行けちゃうの
 行けちゃうのよ
 迂回ルートがありすぎて


『嵐が来ようとも』

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