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4/18/2024, 12:05:59 AM

 じっくり蕾を膨らませ、ようやく咲いて満開になったと思えば、あっという間に散っていく。
 桜の花は他の花と比べると、咲いている時期が短く感じる。強い風や激しい雨で派手に散っていくからだろうか。実際のところはそう変わらないはずなのに。
 その短命さに大昔から儚いとも、忙しないとも言われてきた。時には人生や恋愛を重ねて。
 桜は人々の生活の中で身近な存在だった。

 だからって一巻丸々桜散る和歌読まなくてもいいでしょ、平安鎌倉歌人め。
 何なら前巻の途中から絶え間なく散り続けてるんだけど。
 早くない? 春終わるの早くない?
 え、収録されてない和歌がもっとある?
 知らないよ、入れとけよ。
 もういいよ、お腹いっぱいだよ。

 おかげさまで課題が全然進まないんだよ!


『桜散る』

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そんな学生時代の思い出

4/17/2024, 7:27:24 AM



 羨望心

 嫉妬心

 好奇心

 恐怖心



 頭も心もぐちゃぐちゃなのに視界は良好

 あと少し

 もう少し

 無我夢中の先は誰にもわからない



『夢見る心』

4/15/2024, 12:44:08 PM



 朝電車の中で終始咳き込む、隣の席に座ったおじさんにも。

 日中散々接客して何度も戻ってきたのに、結局買わなかったおばさん客にも。

 面談の日程リスケリスケ、やっぱなし、やっぱ本社ならできる、やっぱなしと電話で振り回してきた本社の上司にも。

 明日自分は休みだからと閉店一時間前に数百点もの返品伝票を切って、明日の業務増やすだけ増やして上がった先輩にも。

 私の一に対して、ひたすら仕事の愚痴と自慢、何度も聞いた過去の栄光とを百で返してくる母親にも。



 部屋に一人で閉じこもって、ようやく一息つくことができた。

「あー、よかった」

 小さく呟いた私の声は、意外にも明るい。

 明日のことを考えると色々落ち込むけれど、ひとまず今日を乗り切れたことに達成感があった。

 コンタクトからメガネに付け替えて、メイクを落としながらしみじみと思った。





 よかった、本当によかった。

 この殺気が届いてなくて。



『届かぬ想い』

4/14/2024, 11:52:09 PM


謹啓 陽春の候 ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

 さて、こうしてお手紙を書かせていただいた経緯は、誠に勝手ながら私から神様へお願いがございましたためです。

 その前に、日頃の感謝を申し上げます。本年、私は本厄の年に数えられております。新年を迎えて約三ヶ月半が過ぎましたが、これといった病気、怪我、不幸に見舞われておりません。これは初詣の際、神様にお祈り申し上げたからではないかと考えております。本当に心からお礼申し上げます。ありがとうございます。

 ……え? 部屋に飾ってあるのは仏閣のお札だろう?

 えぇ、神様のお住まいであるお社のお隣に大師がございましょう? そちらが大変有名な厄除祈願を執り行う寺院でして……。
 いやちゃんと神様のところにもお詣りいたしましたよ! お忘れですか、私のこと!
 五百円玉を賽銭として投げるな? しかないでしょう、硬貨が一円玉と五百円玉しかなかったんですから!
 そのあとくじを引いて去って行った? 神様、ご自身のお正月の人気ぶりを分かっておいでですか!?
 厄除けの御守りを頂戴しようと拝見していたら巫女様に「くじですか?」って聞かれて仕方なく、先に引くことにしたんです。結果? 中吉でしたよ。
 それであまりの人の多さでしたし、くじの内容よく読むために授与所を離れたら、もう戻れなくなってしまったんですよ。だから仕方なく、本当に 仕 方 な く その場を去りました。

 ……その、もし不愉快な思いをされたのでしたらこの非礼をお詫び申し上げます。本当に申し訳ございません。
 私の無病息災が守られているのは、神様仏様のご尽力あってこそです。そのように訂正いたします。

 気を取り直して本題に入らせていただきます。
 誠に勝手なお願いであることは自覚しております。それでも、こういったことは神様でしか解決できないと思っております。重ねて申し上げますが、身勝手な願いであることは承知の上です。せめて内容だけでもお知りおきください。

 どうか、私が旅行や行事の時に災害や異常気象、感染症の大流行が発生しにくくなるよう、お願い申し上げます。

 私の短い人生を振り返りますと、入学式は基本雨でした。卒業アルバムに載っている入学式の集合写真は、大抵体育館で行われておりますのが証拠です。高校生の時は春の嵐でピカピカの制服が一瞬でビショビショになりました。
 高校の修学旅行は新型インフルエンザが大流行し、危うく中止になりかけました。卒業式は、未曾有の大災害が起き、自粛ムードの中で行われました。
 成人の日、東京にも関わらず積雪二十センチ以上の雪に見舞われました。
 社会人になり長期休暇の折、旅行へ出かけた際は、ただの雨が三回、晴れのち雹が一回、台風が一回、集中豪雨が二回、二月の夏日が一回。計画を立てるたびに天候の荒れる女でございます。
 これほど大荒れになると、確かに記憶には残ります。しかしながら、やはりハレの日では太陽が燦々と輝く中、記念写真を撮りたいものです。
 どうか、前向きなご検討の程、よろしくお願い申し上げます。

 春爛漫のみぎり、健康には十分にご留意なされ、さらにご活躍されますよう、お祈り申し上げます。

敬白



『神様へ』

 令和六年四月十五日    139

4/14/2024, 5:20:33 AM

 今朝テレビでお天気お姉さんが今日は雲ひとつない晴れであること、最高気温二十二度で暖かいこと、花粉や黄砂の飛散が昨日よりも少ないことを教えてくれた。これはまごう事なき洗濯日和だと思って布団も一緒に干した。

 私にベッドから蹴落とされた夫は、ソファを陣取ってスマホをいじっている。そのお腹には、ソファの前に座る娘と息子の頭が寄りかかっていた。
「お昼ご飯何にする?」
 私の呼びかけに満場一致で「カレー」と声が上がった。リクエストには答えていきたいが、一昨日と昨日の二日かけてカレーだったので却下である。
 諦めて冷蔵庫や冷凍庫を漁る。すると、冷凍庫から以前試しに買ったものが出てきた。具材も揃っているので、今日食べてしまおう。
「煮込みラーメン食べる人ー!」
 リクエストは叶えられなかったが、ラーメンと聞いた三人は立ち上がって「はーい!」と返事した。私は早速調理に取り掛かった。
 ほどなくしてできた具沢山の煮込みラーメンは、家族四人では物足りないくらい美味しかった。締めにご飯と卵を入れて雑炊にしてみたがかなり美味しかった。これは近いうちに第二弾を開催しようと、頭の中の献立表に追加した。

 洗い物を済ませコーヒーを淹れて、ソファに近づく。先ほどからテレビの音しか聞こえないのだ。
 上から覗いてみると、真ん中に座って眠る夫に、左側から夫の膝を枕に眠る娘。息子は右側に並んで座っているが、夫にしなだれかかるようにして眠っていた。
 私は正面に回り込んでじっくりとその光景を見た。やはり親子だ、寝顔が一緒である。なんだかおかしくて、声を出さないように笑った。スマホを出し写真を撮ることも忘れずに。
 
 こんな穏やかな日が続けばいいと思った、昼下がりの出来事。




『快晴』

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