朝電車の中で終始咳き込む、隣の席に座ったおじさんにも。
日中散々接客して何度も戻ってきたのに、結局買わなかったおばさん客にも。
面談の日程リスケリスケ、やっぱなし、やっぱ本社ならできる、やっぱなしと電話で振り回してきた本社の上司にも。
明日自分は休みだからと閉店一時間前に数百点もの返品伝票を切って、明日の業務増やすだけ増やして上がった先輩にも。
私の一に対して、ひたすら仕事の愚痴と自慢、何度も聞いた過去の栄光とを百で返してくる母親にも。
部屋に一人で閉じこもって、ようやく一息つくことができた。
「あー、よかった」
小さく呟いた私の声は、意外にも明るい。
明日のことを考えると色々落ち込むけれど、ひとまず今日を乗り切れたことに達成感があった。
コンタクトからメガネに付け替えて、メイクを落としながらしみじみと思った。
よかった、本当によかった。
この殺気が届いてなくて。
『届かぬ想い』
4/15/2024, 12:44:08 PM