そんじゅ

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11/2/2022, 10:43:57 AM

私、あなたのこときっと永遠に好きだと思う。

どうしてこんなに好きなんだろう。あなたの姿かたちや仕草はもちろん、考え方や性格だってとっても好ましくて、嫌だと思うことがひとつもない。

私達はどうしたって他人同士なんだもの、嫌いな部分や分かり合えない事もあって当然なのに。なんでこんなに全部ぜんぶ好きなんだろうって、ずっと考えてた。

それでふと思ったの。

ひょっとして私、出会う前からあなたのこと好きになるよう決められてたのかな。だから嫌いなところなんか何一つなくって、ただ好きな気持ちばかりがあふれてくるんじゃないかな、って。

だから今も、これからも、いつか命の終わりがきてもずっとずっとずっと、好きで居続けるんじゃないかしら。

あなたは私のこと、ずっと好きでいてくれる?

私がいつか骨になって、骨が粉々に砕けて、土に還っても、土ごと好きでいてくれる?

土が川に運ばれて海に溶け、いつか私を形作っていた元素が散り散りになって地球に混ざってしまっても、そうしたらこの星全部を愛してくれますか?

ねえ、神様。


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「永遠に」

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所感:
永遠のように思える何かはあっても、本当の永遠ってどんな状態なのでしょうか。一日では答えが出なかったので、神様に丸投げしてしまいました。

11/1/2022, 7:35:36 AM

いじめもケンカも戦争も、あらゆる争いのない世界。
醜い犯罪のない、誰一人脅かされる者の居ない世界。
飢えも渇きも病の苦しみも、老いの恐怖もない世界。

これこそ理想郷。誰もが望み、憧れる幸福な世界だ。
正直に言うと、今も僕はこの通り強く確信している。

「理想郷は消去法ではつくれないよ」

そんな風に君が否定するものだから一寸腹がたった。
例え夢物語だとしても、理想なのだから良いだろう。
僕は、その苛立ちをうっかり口にしてしまったんだ。

「それなら君は付いてこなくていい」

僕は厳しい戦いへ身を投じ地獄の日々を生き延びた。
そして辛く苦しい年月の果てにここまで辿り着いた。

戦争も犯罪もなく、恐怖や苦しみもなくなった世界。
安らぎのなか、風が穏やかに吹きそよぐ幸福な世界。

そして僕が君を連れてくることのできなかった世界。

僕が「要らない」と言った全てが消え去ったここは、
僕の願い通りであり、けれど、もはや理想郷でなく。


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「理想郷」

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所感:
なぜそう書き進めてしまうのか自分でもよく分析できていないのですが「君」と「僕」を文章に登場させると、もれなく「僕」が可哀想な人になってしまいます。

10/31/2022, 12:58:11 PM

なにせ極楽では全てが満たされていて、困ることも苦しいことも何一つない。

六道輪廻を巡り尽くしてやっと辿り着いたんですから誠に有り難いことなんですけれど…夜な夜な聴いてたメロディックデスメタルが突然ヘンデルのメサイヤに変わったみたいな、じんわりした居心地の悪さ…って言って伝わりますか?ははあ、やっぱり分かりにくいですよね。

満ち足りすぎて物足りないだなんて贅沢でしょうが。
でもどうしてだか昔を懐かしく思うことが増えてしまって、ついに「僕らあの頃は大変だったけどね」なんて、地獄の思い出話に花を咲かせた瞬間です。五色の彩雲が一瞬で真っ黒に濁ってぽかりと大きな穴があきました。

そこからもんどりうって真っ逆さま、今こうして冥府の穴へ向かって落ち続けてるってわけです。
永劫の時をかけてあんな高いところまで昇っていたのに堕ちるのはあっという間なんだなァ。

今度は鬼に追われながら「極楽に居た頃は大変だったね」なんて言ったらどうなるか試してみるつもりです。


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「懐かしく思うこと」

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所感:
懐かしく思っているだけじゃ戻れはしない場所があり、戻せもしない仲があります。上手くいくか失敗するか、ともかく何か行動してみて駄目だった人の話です。

10/30/2022, 11:29:59 AM

映画でもラノベでもループものって人気あるでしょ?

壊れたレコードみたくひたすらループする時の中に突然放り込まれた主人公。目覚めるたび同じ日付同じ時刻を繰り返す、その謎を解き明かせ!みたいな。

ちょっと不思議だったんだよ。

原因究明してループをつき破れば元の時間軸に戻れるって前提で登場人物みんな頑張るじゃん?本当に戻れる保証もないのに楽観的すぎやしないかってね。

あれ、なかには解決してないケースもあるのさ。

ループを切って繋がった先が、実は異次元異世界で。
物語の続きは、またもう一つの物語。

ぴったり元の世界に戻ったようでもどこかが違う。
たとえほんの僅かな誤差だったとしてもだ。
……僕はうっかり気付いちゃってね。けどまたループし続けて元の世界を探すのは諦めることにしたんだよ。

走馬灯に君の顔しか映らないだろうってくらい毎日毎日君のお通夜に立ち会って、延々と不気味な事件のヤマを追って、正体の分からない何かと戦って。

もう、いいや。

今こうして君は生きてるし、僕も生きてる。
それでもう充分かなって思えちゃった。

ただ君の薬指の指輪が僕の贈り物じゃないだけさ。



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「もう一つの物語」

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所感:
本当はアプリの過去文章から一つ選んでビハインドを書いてみたかったのですが、上手くまとまらず時間切れ。仕方なく、また可哀想な「僕」が一人生まれました。

10/29/2022, 11:41:04 AM

「自分の指も数えられないこんな暗がりの中でも君がそうして光って見えるのは、君の力じゃない。遥か彼方の太陽が君を照らしているだけだ。

君自身が輝かしい存在かなんて誰一人気にしちゃいない。僕もそんなことどうだっていい。善人なのか悪人なのか、そもそも人間なのかすら関係ない。

君はただ、太陽の光をその身で存分に反射し、この世界へわずかにでも影と境界線をもたらす灯りとしてそこに在れば良いんだ。そこに居てくれさえすれば。

誰かの役に立ちたいって言っただろう?
何もせずただ居るだけで良いなんて上等じゃないか」

そして八千万年。

知らない神にそそのかされた私が、万物に影と輪郭を与える灯りの役割を任されて長い時が過ぎた。

私が他には何の役にも立たぬと判じた神よ。
どうやらそれは間違いだったようだよ。

光を反射するだけでなく、私のこの身体は太陽の光を八千万年に渡って吸収し内へ内へ蓄え続けてきた。

今日、ついに蓄光の限界を迎えた私の身体は、初めて自ら煌々とまばゆく輝いた。暗がりも私も神も光の奔流に飲み込まれ、あらゆる影も輪郭も明るく融けていく。

白い光に満ち満ちて、やがて世界は消滅した。

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「暗がりの中で」

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所感:
暗さが分かるってことは、きっとどこかから光が届いているはずで。じゃあ、その光源の在処を探してみよう…と思ったら明るすぎてバッドエンドになりました。

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