そんじゅ

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「自分の指も数えられないこんな暗がりの中でも君がそうして光って見えるのは、君の力じゃない。遥か彼方の太陽が君を照らしているだけだ。

君自身が輝かしい存在かなんて誰一人気にしちゃいない。僕もそんなことどうだっていい。善人なのか悪人なのか、そもそも人間なのかすら関係ない。

君はただ、太陽の光をその身で存分に反射し、この世界へわずかにでも影と境界線をもたらす灯りとしてそこに在れば良いんだ。そこに居てくれさえすれば。

誰かの役に立ちたいって言っただろう?
何もせずただ居るだけで良いなんて上等じゃないか」

そして八千万年。

知らない神にそそのかされた私が、万物に影と輪郭を与える灯りの役割を任されて長い時が過ぎた。

私が他には何の役にも立たぬと判じた神よ。
どうやらそれは間違いだったようだよ。

光を反射するだけでなく、私のこの身体は太陽の光を八千万年に渡って吸収し内へ内へ蓄え続けてきた。

今日、ついに蓄光の限界を迎えた私の身体は、初めて自ら煌々とまばゆく輝いた。暗がりも私も神も光の奔流に飲み込まれ、あらゆる影も輪郭も明るく融けていく。

白い光に満ち満ちて、やがて世界は消滅した。

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「暗がりの中で」

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所感:
暗さが分かるってことは、きっとどこかから光が届いているはずで。じゃあ、その光源の在処を探してみよう…と思ったら明るすぎてバッドエンドになりました。

10/29/2022, 11:41:04 AM