真夜中
夜の帳が下りた頃
辺りは何も見えなくて
町並みはがらりと様子を変え
1寸の先さえも分からぬまま
人々の喧騒は消え
いつもなら聞こえない音すらも顔を出す
光すらも見えないこの道で
ただ彷徨う
いつもの道もまるで違う道の様に
少しの不安と焦燥が何処か刺激的で
あてもなく歩く
ふと空を見上げてみると
いつもは町灯りに光を奪われてる粒が
今は夜の帳を彩る
幻想的なこの空に心が奪われ
さっきまでの不安や焦燥は無くなり
感動と希望に満ちてゆく
空を見上げているこの時だけは
現実を忘れさせ
時間の概念すらも無くなっていく
気がつけば夜明けが近づき
いつもの様相へと戻って行き
また現実へと戻ってゆく
風に身をまかせ
気の向くままに
漂ってゆく
草木の匂い
潮風の匂い
乾いたコンクリートの匂い
幾度の匂いが通り過ぎ
幾度の月日を思い出す
あの頃の面影がセピア色になってよぎり
あの時と変わらない風景
少しずつ変わっていく町並み
過去と現在が混ざり合い
その月日の重さに気づいてく
ただ日々が雲のように風に流されて
あの時の理想とは程遠い
今を生きている
そして風に身をまかせ
辿り着く先はいつもの居場所
初恋の日
それは意図せずやってきた
まだ幼いながらに初めて他人を好きだと思った
肉親ではない
育ってきた環境も違う
性格だって違う他人を
初心な気持ちで
愛おしいという感情すら分からないけど
今思えば愛おしいという感情
傍に居たい
知りたい
触れていたい
初めての感情を抱き
心が揺れ動いたのを感じた
その日から見える景色が確かに変わっていったんだ
その子の言動や行動に
一喜一憂し
何故かその子が居ると力を貰えた
それと同時に痛みや辛さを知った
色んなことに心が動き
色付いては色褪せて
あの時の自分は何でも出来るような
そんな無敵な気持ちだった
今でも鮮明に君を想い出す
何年も何十年経った今でも
もう会うことは無いけれど
何処かで幸せに暮らしているのだろうか
懐かしい香りが漂う日に
そんな事を想い出し
密かに微笑みながら
あれは確か初恋の日だったと
明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。
何も考えず欲しいものを買い占めよう。
美味しい物をたらふく食べよう。
好きな人に告白しよう。
友達と朝まで一緒に遊び尽くそう。
大切な人とずっと傍にいよう。
今まで言えなかった事をぶちまけよう。
やってはいけない事を片っ端からやってみよう。
どうせなくなるのだから何もしない。
色んな願い、想い、そんな事を思いながら
1日を過ごす
世界がなくなる時初めて色んな事が出来る事に気づく
終わる前から可能性はいっぱいあったはずなのに
願うだけで行動に出す勇気が無くて
終わる時にその勇気が出る
1日1日を最後の日だと思いながら過ごせてたら
何か変わっていたのか
多分大抵はいつも通りになるんだろう
それが自分の、人の弱さなんだとひしひしと感じる
明日世界がなくなるとしたら、何を願おう。
願いながら多分いつも通りの日常に帰結するのだ。
そして、世界はなくなるのだ。
ここではない、どこかで出逢えていたら
また違う関係性だったのかもしれない
価値観や趣味も似ていて
好きな物も好きな場所も同じで
あなたと居ると毎日が色付いて
こんな風にずっと居れたらどんなに幸せだろうか
そんな事をいつも思っていた
あなたと居る日々が
年を重ねる事にどこか窮屈で
すれ違いが大きな溝になっている事に
その時が来て理解した
始めはあなたが最後でいいと思えた
でもいつしか価値観が変わって
あなたを見る目も変わって
お互いに変わってない筈なのに
お互い変わったと言い合うようになり
そして終わりを迎えた
でも今はあなたを想い出して思う
もしここではない、どこかで出逢っていたら
多分今の私は居ないんだと
あなたと過ごした毎日は
今の私という成分の1つの要素になっていて
多分必要な出逢いだったんだと
もし同じ様な人生なら
またあなたみたいな人と出逢い
多分その時は
ここではない、どこかで