こうして置いた最初の一文字が、一番悩む。これはホントの話。
漠然としたイメージがあるから、無ではない筈なんだけど。いざ打ち出してみたら、なんだこれは。我ながら気持ち悪いな、全く一致しないじゃないか。
原稿用紙をくしゃくしゃくしゃ~って、文豪とかが悶えてるシーンはなんか想像つくけど、確かにやりたくなる……実際は画面の中なので、スマートフォンをぶん投げたくなってる。流石に自重する。
ただ、思い通りに描けたとしても、ドン引きすることはままある。笑うしかねぇ、みたいなテンションで、まあ、でも、なんか出来たから、取り敢えず投稿してみる。
どちらにしても、嫌悪嫌悪。生み出した世界、環境で、生み出した言葉を発する誰か、受けとる誰か。それは私の文の上でしか居ない筈だけれど、それでも。絶叫させて、心を抉って……まあ、高い壺割ったみたいな気分になる。代弁者? それでも、心の真に触れる言葉が描きたいんだ。ごめんね。
ああ、でも。いずれにしても、私の想像の中で完結しようが、ここに書き出そうが、私の中では、どんな言葉も、物語も、0のまんまです。
私の意図も、伝えたい事も、何も何も関係なく。
読まれて、人の中に入って初めて、にょきにょき言葉が生き始める。想像されて、十人十色に紡がれて、万通りの解釈が生まれて。
やっぱりそこが、スタート地点じゃない?
一方通行、着払いで勝手に送りつけた0からの景色を、情緒を、これからも楽しんで頂けたら幸いです。
【0からの】
お嫌いですか?
…………ああ、そうですか。
え? ……私は、別に。
同情を誘う、とか、言いますしね。
舞台の演出なんか、良さげでは?
例えば照明を寒色にしたり、ね。
まあ、でも、口にするとあざといですねぇ。
難しい。
皆普通にやってる事だと思うんですけどね。
でも、この二文字にするとチープになる。
──だから、我々は、直接書かずに表す術を聞かれてるのでは無いですか?
【同情】
※例によって三本立てです。
お気に入りの本を見つけました!
3日で読んで捨てました
お気に入りの服を見つけました!
古着屋で高く売れました
お気に入りの曲を見つけました!
サブスクで20分聞きました
お気に入りの店を見つけました!
見て楽しいって素敵でした
お気に入りの人を見つけました!
近すぎて嫌いになりました
…………飽きっぽいですか?
でも、
月曜日はあの本を読んで泣いて、
火曜日はあの服を着たい気分で、
水曜日はあの曲がずっと流れてて、
木曜日はあの店の商品が欲しくなって、
金曜日はやっぱりあの人が好きでした
全部、嘘じゃないです
否定なんて出来ないです
そうして思った事を、私はずっと、覚えてます
移ろいやすいこと、好きなものがいっぱいあるってことでしょう?
ね、ね、
そんな人生、素敵じゃありません?
【お気に入り】
______________________
知人に聞いた話だと、さようなら、は、一生の別れを彷彿させる言葉らしい。『左様なら』、だ、そうだ。これにて御免、と後に続く、とも、どこかのサイトに書いてあった。
拙いなりにイメージをした。
意思か、運命か。ともかく、分かたれたのだ。一緒に、時に交わり、時に添うように、進んできた己らの路が、真っ二つに、割れた。岐路に立たされて、また隣のそいつと歩く事も選択できて。
でも、なんか……嫌だったんだ。なんか、許せなくて、自分の信念とか、立場とか、プライドとか。そういうものが邪魔をして、お前がそう言うのなら、もう一緒には、歩けない。きっぱり言い切って、左様なら。軽く頭を下げて立ち去るとき、きっと振り返りはしないんだろう。
選択だ。
別れは唐突に、そして望まずやってくるものかもしれないけれど。さようなら、そう言ったのなら、それは自分の選択になるんだ。別れた君とは、同じ場所へ同じ様には行けない、という、選択なんだ。
だって、いらないだろう? そんな言葉は。
言わずとも、勝手に明日はやってくるんだから。時計の針はずっと進んで、いつの間にか24回刻んだら、それで今日は、もう、終わりだ。そんな面倒なカウントをしなくたって、刹那の連続の日々で、一瞬に前さえ決して戻れない。勝手に、過去になっていくんだ。
でも言葉にしたかった。それは何故?
大切な何かを決めたのかい。
少しだけ、ブルーな気分だったりしたのかい。
もしかして辛いことがあったのかい。
とにもかくにも、『今日』とかいう奴とは、そいつが象徴するなんかとは、もう一緒に居れん、と。言葉に出してきっぱり割り切りたくなる時があって。今日とかいう勝手な奴に振り回されたんじゃなくて、自分でお前にエンガチョしてやったんぜと言いたくて。
ぴぃ、っと一本線を引く。今日、はここまで。君とはばいばい、さよならだ。もう二度と会うこともないんだから、その感傷を、明日に持ち越さないでくれよ?
【今日にさよなら】
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例えば、枯葉が積もったら腐葉土になる。
腐葉土は栄養豊富な土だ。土壌の生物が生きる上では欠かせない。
決して、無駄にはならない。失われるものではなく、また新たな命を育む糧となる。
或いはそれを、循環や、生の象徴と見ることも出来るだろうに。
何故僕らの目にはそれが哀愁に映るのだろう。
【枯葉】
『つくづく自分が嫌になる』。
詩的だな。随分綺麗な言葉じゃないか?
なんだ、つまり。
嫌になったら辞めるのか。
全く、呆れたものだ。一体それで、何を成す?
吠えるならちゃんと傲慢になれよ。希望? 夢? 願い? 欲望? 志? 或いは正義か、それとも狂気?
なんでも良いさ。それが世間一般に美醜が云々、なんて、関係はない。
でも、欲しいんだろ、なら。
誰よりも先に行け。何を踏みつけても、ただひたすらに、先頭を目指せ。
……それが出来ないなら、良い子に自分を嫌って生きろよ。もしかしたら、誰よりも愛されるかもしれないぜ?
【誰よりも】
3日前にこの言葉拾ったんですよね……めちゃ悩みました。
拝啓。そんなものがひつようですか。
『君は凄い奴になる!』
あなたからの沢山の手紙、拝見しました……わたしにどうしてほしいんですか?
『稀代の才能の持ち主だ! 私も鼻が高いよ』
なにを、なにを。やればいいんですか。
『次の作品も楽しみにしているよ!』
どこまで成せばいいんでしょうか。
『10年もしたらダヴィンチだって抜かせるさ!』
──今私は、正しく貴方に殺されそうです。
【10年後の私から届いた手紙】