澄んだ空気が肺を満たす。
伸びとともに息を吐いて、
ひんやりとした空気がぴしゃりと身体を整えてくれる。
悪夢のような昨日が少し薄まった気がした。
ポットのお茶はもうとっくにからっぽだった。
まどろみのなかで息をする
私の名を呼ぶ声はいつかの夢の続きのように柔らかい。
答えられたらいいのだけれど
もうずっと閉じたままだったせいでまぶたがとっても重たいのだ。
春が終わったと思ったらとても暑くてね、初夏のようだよと嘯くあなたの顔を見たいのに。
ああ、けれど
初夏を纏った風にゆられながら
あなたをひとりじめできるのなら
あともうすこし、このままでいいのかしら。
つぎに目がさめたときもあなたがそばにいてくれますように。
お題:今日の心模様
これが右、こっちは左
右手に持ったのがお箸、左手に持ったのがお茶碗
おみそ汁はふぅと冷ましてから口をつけるのよ。
夏は虫かご、麦わら帽子、真っ赤なほっぺ、
かがんで虫さされをぽりぽりと掻いてると思いきや
次の瞬間にはきゃーっと声を上げて走り去る
小さな手のひらの汗のにおい
眩しいひだまりを両手で抱きしめたような柔らかい体温
沢山の外の香り、小さな身体が見つけてきた沢山の世界の欠片
お帰り、ただいま、今日ね、あのね、あのね
見つけてきたものぜんぶ
まるで宝物でも見たように一生懸命伝えてくれるから
ぴょんぴょんと跳ねるから
ランドセルが歩いてるような後ろ姿を
なんども振り返っては手をふる姿を
もうなにをしたって二度と見送ることの叶わない思い出だとわかっていても
「たとえ間違いだったとしても」
理不尽に奪われた命の代償を
差し違えてでも求めましょう
自分が恥ずかしくて逃げるように駆け込んだ
同じ気持ちだと思っていた
通じ合っていると思っていた
全て勘違い、舞い上がった気持ちが真っ逆さまに墜落した。
なんてみっともない、なんてひとりよがりな日々!!
持ち帰ったお弁当箱を流しに叩き込む。
悔しさに膝を抱えるほど弱くはない
笑い飛ばせるほどの強さもない
日常に消化して忘れ去ってしまえばいい
耐えきれずこぼれおちた雫はハンバーグに溶けていった。
もしかして、もしかすると理想の自分になれるかもしれない。そんなわくわくした気持ちを抱えて願うだけ、思うだけだ。今日も今日とて布団にくるまったまま、窓の外をみるだけがせいいっぱい。空は青く雲は白く、ぽかぽかとあたたかなひだまりで野良猫たちが寝転がっている。もし願いが一つ叶うなら?超能力、大金持ち、誰もが振り返るスーパーモデル、それとも異世界転生で無双?惜しいけど、違う。いまの記憶を持ったまま保育園の頃から人生をやり直したい、だ。何を始めるにしても遅いことなんてないって成功した人達はみんな言うけれど、成功したから言えることだってそうじゃない人達はみーんなわかってる。俺だって、俺だっていまから初めて成功できること見つけたい。一発逆転、脅威の人生盛り返し。当たり前だけどそんなものはない。それなら願うのは一つ、物心ついたばっかの頃に戻って自分の人生をなぞりつつ少しほんの少しだけクオリティを上げたいのだ。あのときこっちを選んでいたら、あの日きちんと祖母の家に行ってたなら、何十年経ってもこびりついて離れない罪悪感を晴らしたい。人生リセットボタン、そんなのが目の前にあったら迷わず押す。ああなんで、なんでずっとここから出られないのだろう。外はあんなにもあたたかそうなのに。