NoName,

Open App
6/18/2024, 10:54:23 AM

あの雨の日の夕方、俺が予定もきかずに突然映画に誘ったら、先輩は「ごめん、子供を迎えに行かなきゃ。」と言った。
独身とばかり思いこんでた。子供もいるのか。
俺は秒殺された。家庭と仕事と子育ての3刀流、そりゃ仕事もテキパキとこなせるわけだ。
俺の表情が曇ったことを先輩は見逃さなかった。
「シングルマザーは大変なのよ。でも…。」一呼吸おいて先輩は続けた。「男の人に誘われたの何年ぶりだろう?子持ちのオバサンを、一瞬でも女性扱してくれたって、勘違いしてもいいかな?嬉しかった。ありがとう。」

え?じゃあ今は結局独身?
映画館の前で別れて先輩を見送った時、俺は小っ恥ずかしいが、恋に落ちたと思う。いや思うじゃない、恋に落ちた。

オバサンなんて言うなよ。1コしか違わないだろ。先輩がオバサンなら俺はオジサンか。
会社での先輩しか知らないけど、先輩は素敵な女性だ。誘ったことを嬉しいと言われて、胸の中がどれほど踊ったことか。
先輩の子供のことは正直悩む。嫌なのではなく、母子で既に構築された生活に、俺が割り込む隙があるのだろうかと不安なのだ。まずは先輩に俺を、俺がどういう人間かをよく知ってもらおう。俺も先輩をもっともっと知りたい。そこから始まるんだ。



お題「落下」

6/17/2024, 10:31:45 AM

ある日、娘夫婦とともに遊びに来ていた孫が、私にこう尋ねた。
「おじいちゃん、大きくなったら何になるの?僕ね、スーパーヒーローとね、お花屋さんとね、サッカーの人とね、お婿さん。ね、おじいちゃんは?」
恐らく孫自身が、まわりの大人に聞かれることをそのまま私に聞いてきたのだろう。
「ほー、すごいな。いっぱいあるんだな。おじいちゃん楽しみだ。ご飯いっぱい食べて大きくならんとな。」
「だから、おじいちゃんは?」

まだ聞くのか。うまく話をそらせぬまま、私は天を仰いだ。
さて困った。
そろそろなれそうな「仏さん」なんてこたえたら、娘にひどく怒られるだろう。
でも私は今年72歳だ。
大きくなったら?ここ数年縮む一方なのに?
考えたこともなかったよ。
お前に広がる未来と私のそれとではまったく異なる。それが老いるということだ。

キラキラした目で私の答えを待つ孫に、どう答えるのが正解なのか。とりあえずウルトラマンでお茶を濁すか?あまりの難題に私は頭を抱えた。



お題「未来」

6/16/2024, 11:05:40 AM

ちょうど1年前の今日、僕は生まれてはじめての告白で撃沈した。
断られた挙げ句、いくつかのダメ出しもくらった。
他の女の子だったら1年後にもう1度告るなんて思わなかっただろう。
でも僕はこの日のために精一杯努力した。

何故か。
それは僕らが小学2年生の頃だ。僕がクラスメイトに受けていた嫌がらせを、やめさせるきっかけを彼女が作ってくれたんだ。「嫌なことは嫌だってちゃんと言わなきゃ、ダメだよ。」
それから僕が頑張って嫌だと言うようになると嫌がらせは少しずつおさまっていった。ぼくがいつもニコニコしているから、ぼくが嫌だって思っているとは、そいつらは思ってなかったのだった。そのすぐ後、彼女は転校した。

そんな勇気と救いだった彼女が、再び僕の前に現れた。すぐに彼女だとわかった。
変わらず可愛くて格好いい女の子だった。
僕は他の男にとられたくないと焦ってしまった。
自分の焦りという都合だけで告白したのだから、伝わるわけがなかったし、彼女にしてみれば、僕のことなんて覚えてるはずがなかったんだ。

だから僕は1年後を目標に毎日身なりを整え、勉強にも水泳部にも打ち込んだ。成績も少し上がって体にも筋肉もついてきたと同時に、自分に自信が持てて背筋を伸ばして歩くようになっていた。
彼女にふさわしい男になっただろうか。
その間にも彼女は何人かの男に告られたらしく、その噂を聞くたびに焦りが蘇ってきたけど我慢して自分を磨いた。

そして今日、彼女を再び呼び出そうとした矢先、彼女の友達が僕を呼び出しに来た。
え?どういうことだ?何だろう。何かしたか?
動揺を隠せないまま、僕は呼び出された場所に向かった。


お題「1年前」

6/15/2024, 6:49:49 PM

国語辞書(紙)


お題「好きな本」

6/15/2024, 3:55:07 AM

曖昧なのは、未だ梅雨入りしていない天気ではなく、私自身だ。

離婚して息子と2人で暮らしながら、今の仕事をしている。子供の将来のためにはもっと収入の良いところに転職した方がいいのかな?。子供との時間を優先するなら、もっと時間が自由になるところに転職すべきかしら?

けれど貯金が少しできる収入と毎日ではないけれど定時で帰ることや有休をとっても文句を言われない、今の会社から転職するのが本当に最善?なんて考えてばかり。
迷ってばかりで決断できず、資格を取るみたいな些細な行動すらおこせずに、日々に追われて生活しているのだ。
そのくせ、この前の雨の夕方、後輩君からの突然の映画のお誘いに一瞬ときめいたりして。即、断ったけど。最後に映画に誘われたのはいつだったっけ。



そんなことより。
さぁ、どうするんだ私。どうしたら良いのだろう私。


(一部加筆修正いたしました)
お題「あいまいな空」

Next