〈お題:小さな勇気〉
勇気って何?恐怖に打ち勝つことですか。
ならば私は、蛮勇しか知らない。
勢いに任せて飛び込んで走り出す。
それだけが取り柄でもある。
惰性で走ってますかね。
えぇ、無謀なことも繰り返せばきっと…。
後悔はしている。人生を振り返れば、後悔の上塗りで今を生きている。そればっかりです。でも、そう…慎重になってみました。
後悔を辞めたくて、慎重になりました。
でも、後悔が止まりません。
あぁ、何度立ち止まっても変われません。
そうですね。臆病になっているだけかもしれません。立ち止まると後悔に襲われるから。だから勢いに任せて生きて来たのです。
走り出したら止まらない。止まれない。
転んだ時にだけ、少しばかり猶予が出来る。
同情の猶予が。時間が経てば失われる安息の地。遠退く居場所。追い掛けて走る。進む速さに自分が付いていけず、様々を取りこぼしてしまうのです。
ですから、どうか私が倒れ伏さないように支えてくださいませんか。息が絶え絶えで、声も出せないんです。背後が怖いんです。
そうですね。私に引き返す勇気をください。
〈お題:わぁ!〉
わあっ!っと人々が駆け寄った先には、新オープンした『なんでも屋』があった。
セレモニーを終えた店の一階は開店セールで溢れた商品がずらりと並んでいた。
とある市が総力を挙げて作り上げた店である。
老舗のほぼ全てが一つ屋根の下、仲良く商品を並べている。
『なんでも屋』独自のポイント制を導入し、客離れを予防しつつ長期的には客側へ無視できないリターンを用意したことで、地元民の了承も得ることができた。
廃駅一歩手前の駅を丸ごと改修して作られた『なんでも屋』は観光地へ向かう旅行客をメインターゲットに地元民に優しいポイント還元を行っている。
将来的には映画館や本格的なゲームセンターも参入できるようその為のスペースを確保してある為、狙った企業との連携も抜かりない。
しかし、新型コロナウイルスの煽りを受けて営業時間の制限など、コロナの影響によって観光客の足が遠のき、今年の赤字経営が確定してしまう。
そうして三年間もダラダラと観光客不足に喘いだ結果、維持管理費が嵩みポイント制を一時停止。地元民の不満が高まってゆく。ついに経営難から従業員の数を減らすことになる。
少子高齢化の歯止めとなるはずだった地元離れを阻止できず、倒産。名ばかりの『なんでも屋』の看板が残ることになった。
老舗もこれを機に廃業してたとか。
〈お題:終わらない物語〉
知らないことを知ると頭の中で錆び付いた知識が顔をのぞかせる。点と点が線になる。
そうなることを期待する。
終わったはずの妄想が息を吹き返す。
「パレートの法則」や「バーナム効果」
一見関係の無さそうな概念が、心理学で結ばれる。試行錯誤によって得られた情報を元に築き上げて来た東洋の薬剤。葛根湯を片手に『プラシーボ効果』を期待する。科学的にも効果が云々。
一息ついて、夜空を見上げる。
『ねぇ、夜空の何が一番好き?』
かつて誰かと語らいだ記憶が蘇る。
『うーん…星座かな』
占星術という言葉しかしらないが、古代から脈々と受け継がれてきた星読みの技術。
『星座って一つ一つに物語があるんだよね』
その通り、星座はそれぞれ固有の物語を有している。今は亡き星の輝きに思いを馳せる。
『実は、こうして見えている星の中には"もう存在しない星"があるんだよ』
たしか…君は『へぇ…なんでみえるの?』ってそういっていたんだっけ。
『今見えてる星の殆どが恒星といって自分からピカピカ光っていて、今もその光が地球に降り注いでいるんだ』
『太陽みたいに?』
どんな声だったかな。どんな顔だったかな。
『太陽みたいに』
そう答えたことだけは確かだ。
『うーん…星が消えていても光はまだ消えてないってこと?』
理解の色を示してくれた君を思い出す。
『そうだよ』
あぁ、そうだった。
『ねぇ。星座は何が好き?』
この質問に自分はどう答えたか。
『星座かな』
流れ星のように過ぎ去った時間を惜しむ。
『ふっ、なにそれっ』
微かに弾んだ声色に心が浮ついた。
「あと一時間後に雨予報」
雨雲レーダーの訴えをチラリと見れば予報は間違いなく当たりそうだ。
「ちょうど夜も明けてきましたから、お開きですね」この記憶はついに終わりを迎える。
死んで星になる。
終わったはずの運命が、今もこうして広大な宇宙で語り継がれている。きっとそれは未来永劫終わらない物語なのだろう。
〈お題:やさしい嘘〉
「悪くない」
鏡を見てそんな感想を残す。かなり適当な感想だ。改善点すら言わないこの手の言葉の内側は"普通"という、感情の起伏が起こり得ない感想に占められる。
「無難が一番」
鏡に映るその姿に1度目の感想で気を悪くした可能性を憂慮して付け加える。
しかし、それこそが悪手。
「無難か…」
おそらくは…きっと、それなりに時間を掛けて決めた服なのだろう。この言葉を聞いて悪手を打ったことを知った。気の利いた言葉は今や後手でしかない。
ならばやる事は一つ。
“無難な服"が輝ける場所へエスコートする事だ。出掛け先はこちらが決める事。
服に似合う場所は何処だったか。着こなし具合を改めて見る。似合ってるよ。
心に秘めた感想はまた次の機会に落ち込んだ時にでも言おう。
〈お題:瞳を閉じて〉
そう、これは瞳を閉じてしまった結末である。
私の日常は驚きを齎してくれることはない。
仕事へ向かう途中、電車に揺られる。
これは。文章を長く書きたい時の表現。
眠い。
↓
瞼が落ちる
↓
時間がゆったりと過ぎるのを瞬きの速度が物語る。
感情!
私は怒っていることを表現するために、あえてソレとわかる様に「私は怒っている」と書く。
感情!
「鈍感系の視点」怒り
彼女の足音が心なしか大きく聞こえる。
ジッーとその眼が私を映す。
「察しのいい視点」怒り
彼女の身体がわなわなと震えている。
事実を主観にすると文章が物語になる。
例ー眠い→酷く退屈だ。
感情のない視点。
箇条書き。
視点にどれくらい感情を込めるかで、文章の個性が決まると私は思います。
客観的なのは読者と書き終わった後の筆者(推敲する時)。
文脈も必要。
緩急を付ける。
↓例
『
「あっははは」
声を張り上げて笑った私が、造った笑顔で彼を見つめる。彼は一瞬の間を置いて「失格」の二文字を放った。彼の興味も無さげな目を見て小さく笑った。(嗤ったが伝わればいいな)』
感情の出発点が違う。
「プライドからくる」薄ら笑い。
「劣等感からくる」嘲笑。
「愉快」で高笑いする。
すべて笑い。
目を閉じて…書く技術を高める方法を考える。