ナナシナムメイ

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〈お題:終わらない物語〉

知らないことを知ると頭の中で錆び付いた知識が顔をのぞかせる。点と点が線になる。
そうなることを期待する。

終わったはずの妄想が息を吹き返す。
「パレートの法則」や「バーナム効果」
一見関係の無さそうな概念が、心理学で結ばれる。試行錯誤によって得られた情報を元に築き上げて来た東洋の薬剤。葛根湯を片手に『プラシーボ効果』を期待する。科学的にも効果が云々。

一息ついて、夜空を見上げる。
『ねぇ、夜空の何が一番好き?』
かつて誰かと語らいだ記憶が蘇る。
『うーん…星座かな』
占星術という言葉しかしらないが、古代から脈々と受け継がれてきた星読みの技術。

『星座って一つ一つに物語があるんだよね』
その通り、星座はそれぞれ固有の物語を有している。今は亡き星の輝きに思いを馳せる。
『実は、こうして見えている星の中には"もう存在しない星"があるんだよ』

たしか…君は『へぇ…なんでみえるの?』ってそういっていたんだっけ。
『今見えてる星の殆どが恒星といって自分からピカピカ光っていて、今もその光が地球に降り注いでいるんだ』

『太陽みたいに?』
どんな声だったかな。どんな顔だったかな。
『太陽みたいに』
そう答えたことだけは確かだ。

『うーん…星が消えていても光はまだ消えてないってこと?』
理解の色を示してくれた君を思い出す。
『そうだよ』
あぁ、そうだった。
『ねぇ。星座は何が好き?』
この質問に自分はどう答えたか。

『星座かな』
流れ星のように過ぎ去った時間を惜しむ。
『ふっ、なにそれっ』
微かに弾んだ声色に心が浮ついた。

「あと一時間後に雨予報」
雨雲レーダーの訴えをチラリと見れば予報は間違いなく当たりそうだ。
「ちょうど夜も明けてきましたから、お開きですね」この記憶はついに終わりを迎える。

死んで星になる。
終わったはずの運命が、今もこうして広大な宇宙で語り継がれている。きっとそれは未来永劫終わらない物語なのだろう。

1/26/2025, 6:21:29 AM