〈お題:花咲いて〉ー評価:良作
雨に打たれて、踏まれても天高く背を伸ばす。
道半ばで倒れ伏したその姿をなん度も見てきた。
そして、今。
様々な困難の先に目を向ければ花が咲いているのを見つけることが出来る。
精一杯生きている。
花が咲いたのだ。努力の方向性は正しい。
きっと花咲く奴の努力はそのまま実を結ぶに違いない。
踏み躙られても耐えて耐えて開花させた、その凄さを分かって応援してくれる奴は多いかもしれない。
それでも努力が実を結んだことを純粋に褒める奴は多くはない。その成果をきっと多くの奴が虎視眈々と狙っているのだ。
気を付けたまえと私は果汁100%のジュースを飲みながら思った。
〈お題:もしもタイムマシンがあったなら〉
ー評価:駄作
夢は見みます。
大きなお金を手に入れる夢です。
宝くじには必ず当選して、博打を打てば勝利する。未来すら予見して、過去を振り返れば過ちは無し。そんな人物に成っていました。
夢を見ました。
小さな幸せを得る夢です。
行く先々で事故を防止し、ポイ捨てを拾う小さな善行が、人を救う。街を救う。日常を救う。
それを自覚した人物に成っていました。
夢を見ました。
大きな助言をある日貰って、助言通りに動く夢です。
…。
気が付いたら、この世の反対側で世界の滅亡が始まるのです。
その夢を叶える為にはタイムマシンと何かが欠けています。
〈お題:今一番欲しいもの〉ー評価:凡作
眠い。
枕はふかふかで、布団はツルツルで、感触がヒンヤリしている。
時間も既に11時を過ぎている。
寝るにはちょうど良い時間だ。
風呂にも入って、歯磨きも終えて、飯も8時半には食べ終わっている。
後は寝るだけ。明日に備えて寝るだけである。
明日の予定は、いつもと同じ。仕事。
仕事の合間に飯食って、仕事終わりに飯買って、たまに日用品も買い足して帰る。
明日のシュミレートが終わった頃には布団は暖かくなってる。
早起きは三文の徳というけれど、三文に価値を見出せてないうちはきっと、無用の長物に違いない。俗に言う豚に真珠だ。少し考えてみれば、早起きする為に健康的な習慣が身につくと云うのはお得かもしれない。
夜更かしはお肌の敵と云う。ストレスもお肌の敵だろう。時間に追われるというのはストレスを感じる要因である。早起きをすれば時間に追われるという感覚はかなり改善され、ストレスを感じにくくなる。
何より、待つという行為を楽しめる様になる。
これだけ、早起きの事を考えていても、ちっとも寝れない。
あったらいいな、快適な入眠。
〈お題:私の名前〉ー評価:凡作
道草。枯れ木。赤く点滅する信号機。
映像に捉えた日常に、我は存在しない。
撮っているのも、我の両親である。
我は常に両親の撮る映像を眺めている。
外に出たいと願う事はあっても、それを許してくれる両親ではなかった。
なにより我が自由を望む事を許さない。
両親はしょっちゅう授業を映像に収めては我に勉強すべしと言い付ける。
我は勉強が嫌で、故に反抗するが両親はとても弱い。心身共に弱い。とても簡単に引き下がってくれる。
外に出なければ、大抵のわがままを許してくれた。昔は外に出てよく遊んでいたのに。
昔は、我が映像の主役だった。
今はもう、映像を傍観するだけである。
日常をひたすらに見せられる。
飽き飽きしていても、両親は嬉々として映像を撮る。我には少し退屈なシーンが続くのに、両親は楽しそうである。
我は不貞腐れるのにも飽きているから、「あーだこーだ」言いながら視聴するしかない。
両親の身体はとても弱い。心身共に弱い。
だから、両親が疲弊して寝込んでいる時には外に出て遊ぶ事ができる。
外の人たちは両親と仲が良いから、外で遊んでいるのがバレたら両親にチクるやつばっかりである。堂々と外出出来ないのが辛い。
だから、我は両親が疲弊して寝込んでいる時や、疲れて眠り転けている時に隠れて遊ぶ事が得意になった。両親から奪ってしまった非日常を持ち腐れさせるわけにはいかない。
我は、両親から非日常を奪ってしまった悪い子なので、両親に苦労はかけたくない。
今日も疲れが溜まっているのか、深く寝ている。いつものように外に出ると、両親の目の届かないところで我は叫ぶのだ!
「非常に解放されよ!」
非日常はとても賑やかで、日常では見向きもされなかった両親は更に疲れて床に臥せてしまったらしい。
非日常は素晴らしいことがよく起こる。
なんと私の名前がテレビや新聞に掲載された。
〈お題:視線の先に〉ー評価:良作
その男を一言で表すならば、一視同仁。
仏様も顔負けする程にお人好しである。
怒りを知らないその人の周りには、精神的に弱い子が群がっている。彼らの要求は、その男に注目される事である。
男の視線はまさに彼らの光であり、温もりである。男に注目されない誰かは、光を失い、不安になる。温もりも冷めてしまうので注目される為に自暴自棄になる。
彼らは旧態依然である。いつ、彼らは変わるのか。その疑問に内職の手が止まる。
「そろそろ休憩かな」
新鮮な足音に誰が来たのかと目を向ける。
「…?」
自律している若い女性。足取りがしっかりしていて、見慣れてしまった奇抜な格好とは程遠い簡素な容姿。着飾る必要のない事を全面に押し出している立ち振る舞いに男は目を奪われる。
「仏様も怒りはするのよ。仏様が怒る理由は何なのかしらね?」
澱みなく、無駄のない問い掛けにむしろ戸惑ってしまっている。
「わ、わからない…です」
仏の顔も三度までと言うことわざは知っている。言われてみれば、何故三度までなのか。
「それが貴方には足りてないのよ」
「足りない…」
男が必死に答えようとしていると女性は踵を返して歩き出していた。
「優しさは毒よ。与え方を間違えれば中毒を起こしてしまうわ」
仏様は優しさが毒と判って三度目には優しく接することはしないのだろう。
彼らはきっと優しさの過剰摂取に苦しんでいる。
歩を止めて振り返った彼女の目は口ほどに物を言う。
男は造花を見つめた。