〈お題:目が覚めると〉ー評価:駄作
そこは、浜辺と森の境界線に築かれた防衛拠点である。
諸外国の侵略から身を守る為に存在するため、性質上、常時警戒する必要性に駆られていた。
海の脅威といえば、津波などの災害が一番に警戒される。
津波への対処として、敵の侵攻を阻止できる条件下で最も適切な処置は人工的な丘を幾つか作って、津波の勢いを殺してしまうことである。
平時には見張り台として、有事には防壁としてその丘は機能している。
認識としてはまさにその通りであるが、俺にとっては拠点で訓練しつつ海を眺めるだけで生活できる良い場所である。
諸外国の存在だって言葉の通じない漂流者が幾人いるというだけで、攻めてくると警戒する必要は本当にあるのか、疑問に思ったりする。
上層部のこの判断に救われて俺はこんな楽な仕事につけているから、文句はないが。
「今夜は少し荒れてるな」
今年も蒸し暑くなってきたのだ、海が荒れるのも仕方のない事。
寝て覚めて外を見れば、きっと穏やかになってくれているに違いない。
「という、夢を今日二度寝をしたら見た。目が覚めると夢なのか妄想だったのかよくわからないよね」
(…最近腰を据えて考えられてないです)
〈お題:私の当たり前〉ー評価:凡作
当然、我々は生きている。
そこに主義主張が発生するのは道理である。
生きる目的が違えば、進む道も異なる。
因って、認識する事象は自ずと万化する。
その事象に先駆者は名前を付けて、理屈を付けて普遍とする。
然るに生きる目的もなく、日々を過ごしているならば、なるほど。
己が道も在らず彷徨えば、他者の道に土足で上がり込むこともありえよう。
その道を歩むに必要な道具もない無知蒙昧な迷い他人にしてみれば、知らぬ存ぜぬで通せぬ明確な道はさぞかし辛い事だろう。
自己分析すら、できておらぬからそうなる。
無能ゆえに希望も見出せず、凡弱がゆえに夢すら見れず、臆病風に吹かれて前すら見ない。
己の死を肯定するならば、せめて醜くとも生命賭して抗って現状を変える努力をしてみることだ。
「それが、私が『当たり前』に実行したいことである」
〈お題:街の明かり〉ー評価:駄作も駄作
雨が、降っている。
街灯が点滅している。
「そんなところで寝てるなよ。おい!」
私にとって、それは夢のような時間だった。
「こんな道端で寝てるなよ、おい」
全てが崩壊する。
見知った街並みが、赤褐色に染まる。
「聞いてるのか!おい!」
キィーンとした耳鳴りが徐々に高まっていく。
これはもう、助からない。
その直感だけが私の感ずる全てだった。
「返事をしろ!」
街が、知らない男の顔に成り代わって、その口が訳の分からないことを語っている。
「救急車はもう呼んだから、後は…後は!」
助からない。この男は、何をそんなに叫んでいるのか。私はこのまま、深い眠りへ、静寂を求める。
「頭を強打しているから、このまま動かさないで」
こんな風に時間を無駄にする男が憎らしい。
彼が複数人、いや、よく見たら何か違う。
「…現時刻から心肺停止を確認)
雨音が遠くて聞こえない。
耳鳴りが激しく鳴っている。
キィキィと頭蓋骨が軋む音だ。死の音だ。
死が目の前に迫ったのが分かる。
酷く寒くて、二度と戻れないと云う。
街灯の点滅が、街の明かりが脳裏に浮かぶ。
とても滲んだ赤褐色に私は縋った。
〈お題:七夕〉ー評価:凡作
七夕祭り。
今夜の空には橋が掛かる。
織り姫と彦星の一年に一度の邂逅を祝う文化は失われつつある。
実に浅ましい感性になったものだ。
自然豊かな環境に身を置きながら、感性を働かせるという文化を我々日本人は損ないつつある。
自然を前にして、感動できるのが人間性と私は思う。
〈お題:友達の思い出〉ー評価:良作
彼は夢中で走った。
今年の大会で優勝すると豪語した彼は、1日たりとも練習を休む事はなかった。
大会当日。
参加賞を携えた彼の薄ら笑いを収める。
彼の青春の一幕は、確かに見届けた。