〈お題:星空〉ー評価:駄作
星を数うる如き所業と思ってみても歳を重ねて見れば容易い事もある。
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「夜は好きです。アナタは夜が怖いようですね。少し、昔話をしよう。聞いてくれるね?」
俺は宝石類の付いたネックレスや、イヤリング、指輪、ブレスレット等を紹介している番組が好きだった。
うちは貧乏で、そんな高価な贅沢品を買う余裕がない事は、小学校に入学する前に痛いほどわかっていた。
そんな俺だから、物を大切にすると云う、もったいない精神が他のクラスメイトよりも強い。ボールや、手作りのお人形という高価な遊び道具は使わずに、公園に落ちている短い木の棒を駒にして擬似的なままごとに勤しんでいたくらいである。
筆圧も極力抑えられ、消しゴムも惜しんで使わず済むように出来るだけ綺麗に正確に書くことに拘った。
漢字練習は指でなぞって練習して、試しに書いてみるという方法を取っていた。
そんな俺が学校の生活に慣れてきた頃、七夕祭りの季節がやってきた。
どうやら、短冊に願い事を記載して、ササに吊すという儀式である。
俺は薄い文字で「無限に散らばった宝石を眺めたい」と書いて短冊を吊るした。
そうそう、星空を宝石と揶揄できる感性が身に付いたのは、つい最近。夢を叶えたくば、惜しまぬことです。でないと中々叶いませんね。
「私の夢が、20年越しに叶った。というそんなたわいないお話です。」
〈お題:神様だけが知っている〉
書く習慣。
私は続けられているのでしょうか。
これから先も、続けられているのでしょうか。
私が、アプリを開いて考えに耽る事ができているでしょうか。
私には、私の未来が分からない。
日常の一幕に、今の私は存在しうるのでしょうか。
私は、自ずから、応えを導き出すでしょう。
その軌跡を神様だけが知っている。
〈お題:この道の先に〉ー評価:良作
カントリーロード。
閑話休題。
「僕たちは此処に居るんだよ」
此処を訪れる人々は、何を想って僕を見つめるのだろう。
僕は、そんな君に夢を叶えて欲しいから、問い掛けている。
「君は何を目指す?」
僕は無力な存在だけれど、少し色褪せた議題を提示するよ。
「君が歩んだその軌跡の先には何がある?」
僕は、困り顔で立ち止まってくれた君が、暗闇に光を見出せるかもしれないと思っているんだ。
「君は現状を楽しめているかな?」
僕にはわからないけれど、君に見つめられると嬉しくて堪らないんだ。
そういえば、自己紹介がまだ終わってなかったね。「僕の名前はミチシルベって言うんだ」
〈お題:日差し〉評価:良作
日射量が増えて来たことで、朝まで読み耽っていたことを知った。
夜通し本を読み進めてしまう悪癖をどうにかしたいと思いつつ、やはり自分の性分かと判って本を閉じる。
外はもう、随分と明るかった。時計を見れば、もう昼前だというに何者も私に連絡を寄越しはしなかったらしい。
あと、数時間で仕事へと赴かなくてはならない。
「日差しが強い」
眠たい体には昼前の日光は辛い。
まるで、ヴァンパイアになった気分だ。
〈お題:窓越しに見えるのは〉評価:良作
「37.9度…夏風邪ね」
お母さんの心配そうな目を見て少し心が痛む。
「安静にしているのよ」
俺は今日、お母さんに仮病を訴えたのである。
ごほっごほっ。
鍛えに鍛えた仮病の為の咳払いは、見事お母さんを欺いた。我ながら素晴らしい出来だ。
「お母さん、もう出掛けるからね、お腹空いたらゼリーとおじやがあるから遠慮せずに食べるのよ。学校には連絡しておくから」
俺は勝利のファンファーレを聞いて、心が満たされていく。
遠くの方からお母さんが電話をしてるのが聞こえる。ここまで来ると、どんでん返しはない。散々、仮病で稼いだ風邪薬が家にあるので、病院に行くという選択肢は自然と消えていた。
「それじゃ、何かあったら連絡するのよ」
「うん…」
元気じゃないふりを徹底する。
玄関が閉まるその瞬間まで、床に伏せる。
ガシャンと、扉が閉まる。勝利の美酒に酔いしれる為にゼリーを求めてキッチンに赴いた。
「うまい!」
早々にゼリーを平らげた俺の身体が二度寝を求めている。その証拠に目蓋が重い。
俺は、この後大事なゲームのレベリングがあるのだ。寝ている暇はないと、体に鞭打って自室へ戻る。
「…でもちょっとくらいなら寝てもいいよね。二度寝は仮病の特権だし…」
俺は窓越しに見える夕焼けを見て、全てを悟った。