〈お題:街の明かり〉
雨が、降っている。
街灯が点滅している。
「そんなところで寝てるなよ。おい!」
私にとって、それは夢のような時間だった。
「こんな道端で寝てるなよ、おい」
全てが崩壊する。
見知った街並みが、赤褐色に染まる。
「聞いてるのか!おい!」
キィーンとした耳鳴りが徐々に高まっていく。
これはもう、助からない。
その直感だけが私の感ずる全てだった。
「返事をしろ!」
街が、知らない男の顔に成り代わって、その口が訳の分からないことを語っている。
「救急車はもう呼んだから、後は…後は!」
助からない。この男は、何をそんなに叫んでいるのか。私はこのまま、深い眠りへ、静寂を求める。
「頭を強打しているから、このまま動かさないで」
こんな風に時間を無駄にする男が憎らしい。
彼が複数人、いや、よく見たら何か違う。
「…現時刻から心肺停止を確認)
雨音が遠くて聞こえない。
耳鳴りが激しく鳴っている。
キィキィと頭蓋骨が軋む音だ。死の音だ。
死が目の前に迫ったのが分かる。
酷く寒くて、二度と戻れないと云う。
街灯の点滅が、街の明かりが脳裏に浮かぶ。
とても滲んだ赤褐色に私は縋った。
〈お題:七夕〉
七夕祭り。
今夜の空には橋が掛かる。
織り姫と彦星の一年に一度の邂逅を祝う文化は失われつつある。
実に浅ましい感性になったものだ。
自然豊かな環境に身を置きながら、感性を働かせるという文化を我々日本人は損ないつつある。
自然を前にして、感動できるのが人間性と私は思う。
〈お題:友達の思い出〉
彼は夢中で走った。
今年の大会で優勝すると豪語した彼は、1日たりとも練習を休む事はなかった。
大会当日。
参加賞を携えた彼の薄ら笑いを収める。
彼の青春の一幕は、確かに見届けた。
〈お題:星空〉
星を数うる如き所業と思ってみても歳を重ねて見れば容易い事もある。
ーーー
「夜は好きです。アナタは夜が怖いようですね。少し、昔話をしよう。聞いてくれるね?」
俺は宝石類の付いたネックレスや、イヤリング、指輪、ブレスレット等を紹介している番組が好きだった。
うちは貧乏で、そんな高価な贅沢品を買う余裕がない事は、小学校に入学する前に痛いほどわかっていた。
そんな俺だから、物を大切にすると云う、もったいない精神が他のクラスメイトよりも強い。ボールや、手作りのお人形という高価な遊び道具は使わずに、公園に落ちている短い木の棒を駒にして擬似的なままごとに勤しんでいたくらいである。
筆圧も極力抑えられ、消しゴムも惜しんで使わず済むように出来るだけ綺麗に正確に書くことに拘った。
漢字練習は指でなぞって練習して、試しに書いてみるという方法を取っていた。
そんな俺が学校の生活に慣れてきた頃、七夕祭りの季節がやってきた。
どうやら、短冊に願い事を記載して、ササに吊すという儀式である。
俺は薄い文字で「無限に散らばった宝石を眺めたい」と書いて短冊を吊るした。
そうそう、星空を宝石と揶揄できる感性が身に付いたのは、つい最近。夢を叶えたくば、惜しまぬことです。でないと中々叶いませんね。
「私の夢が、20年越しに叶った。というそんなたわいないお話です。」
〈お題:神様だけが知っている〉
書く習慣。
私は続けられているのでしょうか。
これから先も、続けられているのでしょうか。
私が、アプリを開いて考えに耽る事ができているでしょうか。
私には、私の未来が分からない。
日常の一幕に、今の私は存在しうるのでしょうか。
私は、自ずから、応えを導き出すでしょう。
その軌跡を神様だけが知っている。