ナナシナムメイ

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7/3/2024, 4:49:58 PM

〈お題:この道の先に〉

カントリーロード。
閑話休題。

「僕たちは此処に居るんだよ」
此処を訪れる人々は、何を想って僕を見つめるのだろう。
僕は、そんな君に夢を叶えて欲しいから、問い掛けている。

「君は何を目指す?」
僕は無力な存在だけれど、少し色褪せた議題を提示するよ。

「君が歩んだその軌跡の先には何がある?」
僕は、困り顔で立ち止まってくれた君が、暗闇に光を見出せるかもしれないと思っているんだ。

「君は現状を楽しめているかな?」
僕にはわからないけれど、君に見つめられると嬉しくて堪らないんだ。

そういえば、自己紹介がまだ終わってなかったね。「僕の名前はミチシルベって言うんだ」


7/2/2024, 3:04:01 PM

〈お題:日差し〉

日射量が増えて来たことで、朝まで読み耽っていたことを知った。
夜通し本を読み進めてしまう悪癖をどうにかしたいと思いつつ、やはり自分の性分かと判って本を閉じる。
外はもう、随分と明るかった。時計を見れば、もう昼前だというに何者も私に連絡を寄越しはしなかったらしい。
あと、数時間で仕事へと赴かなくてはならない。

「日差しが強い」
眠たい体には昼前の日光は辛い。
まるで、ヴァンパイアになった気分だ。

7/1/2024, 2:29:41 PM

〈お題:窓越しに見えるのは〉

「37.9度…夏風邪ね」
お母さんの心配そうな目を見て少し心が痛む。
「安静にしているのよ」
俺は今日、お母さんに仮病を訴えたのである。

ごほっごほっ。
鍛えに鍛えた仮病の為の咳払いは、見事お母さんを欺いた。我ながら素晴らしい出来だ。

「お母さん、もう出掛けるからね、お腹空いたらゼリーとおじやがあるから遠慮せずに食べるのよ。学校には連絡しておくから」
俺は勝利のファンファーレを聞いて、心が満たされていく。

遠くの方からお母さんが電話をしてるのが聞こえる。ここまで来ると、どんでん返しはない。散々、仮病で稼いだ風邪薬が家にあるので、病院に行くという選択肢は自然と消えていた。

「それじゃ、何かあったら連絡するのよ」
「うん…」
元気じゃないふりを徹底する。
玄関が閉まるその瞬間まで、床に伏せる。

ガシャンと、扉が閉まる。勝利の美酒に酔いしれる為にゼリーを求めてキッチンに赴いた。
「うまい!」
早々にゼリーを平らげた俺の身体が二度寝を求めている。その証拠に目蓋が重い。
俺は、この後大事なゲームのレベリングがあるのだ。寝ている暇はないと、体に鞭打って自室へ戻る。

「…でもちょっとくらいなら寝てもいいよね。二度寝は仮病の特権だし…」

俺は窓越しに見える夕焼けを見て、全てを悟った。

6/30/2024, 4:59:08 PM

〈お題:赤い糸〉
当時、紡がれた言の葉に私は運命を感じていた。
「ありがとう」
遠い空の向こう側からカーテンを薙いで、微かに残光が差し込む先には一通の手紙があった。

赤黒い封筒に包まれたその手紙の中には、私への想いが綴られている。
私はその手紙に込められた想いと引き換えに未来を得て余生を過ごしたのである。

「ありがとう…」
もう充分です。私はその手紙に恩人を重ねては心の中で詫びている。感謝の念は日を追うごとに、死への恐怖を掻き立てるからである。

難病だった私をこの歳まで掬ってくれた。
もう、手紙を手に取る事すら叶わない。
「…ごめんなさい」
アナタの元へ向かうには遅すぎたから。
きっと、私を私と判らないでしょうから。
運命の赤い糸で私を留めたアナタには、もう。
「こわいよ…」