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4/15/2026, 1:42:25 PM

届かぬ想い

 私はとある貴族の姫君に仕えている侍女だ。名を仮に
アリとここでは名乗ろう。彼女とは遠い親戚同士で本家と分家の関係だ。
 正直、本家に産まれなくてよかったと最初は思っていた。何せカミに祈りを捧げるために18歳になる時にその身を命を捧げなければならない。ようは生贄というやつだ。
 私が12歳、お嬢様が5歳の時に逃げ出さないように捧げられるという場所に連れてこられた。彼女は出れないため最初は泣きじゃくっていた。だが、もう出ることは叶わないとわかったのかだんだんと泣かなくなった。そうして徐々に優しく柔らかく笑っているが時折諦めがついたような表情もするようになった。

 彼女が16歳の時に死神と会ったようでとても嬉しそうに笑っていた。どうやら同い年だったようで楽しそうだった。その頃にはすっかり私はお嬢様のことを妹のように大切な存在になっていた。

 だからこそ悲しくも恨めしかった。あと2年もしないうちに彼女は死んでしまう。その身を代われるというのならばかわって差し上げたかった。最初お会いした時にどうして自分でなくてよかったと思ってしまったのか恨めしく思った。だが、そのことは己の立場では伝えることもできない。せめて逃げて幸せになってくれたらなどと、この届かぬ想いをどうすれば良いものか。

......そう考えながら日々が消えていった。

3/31/2026, 7:47:43 PM

幸せに

死神は必死に走っていた。途中で転びそうになっても、たとえ間に合わないとしても、それで姫君の命が助かるならばと。ぜぇぜぇ息が上がる。
姫君の棲家の塔に着いた。

これであの子を救える、幸せにできる。そう思いながら扉を開けてこう呟く。

「貴方さまどうか幸せに。」

3/30/2026, 5:35:00 PM

何気ないふり

彼女に、死神に花束を渡したいと思い悩みながら数日がたった。もう死ぬまであまり時間がないからそんな余裕もないのだが。それでも死神のすました顔を崩してみたい、そう思いながら何気ないふりで訪れた彼女にこう聞いた。

「ジャック、あなた好きな花はあるかしら?」

死神は一瞬かたまり、こう答えた。

「ジャックは花を見たことがないので、好きも嫌いもありません。人や動物ならまだしも植物は枯らしてしまうので.....。」

表情は相変わらず無表情だったが、どこか悲しげな雰囲気でそう答える。

「そう....。」

そう答えるながら、どうしたものかと心の中で頭を抱えていた。

3/29/2026, 4:34:20 PM

ハッピーエンド

結論から言うと僕たちは悪魔の討伐に成功した。
そりゃあ、まあ完全に誰も傷なく終えられたわけではなかったけれども。

勇者である僕や魔法使い、戦士、それに大事な人である聖女も皆生きていた。

それだけで十分だ。命あってこそのものだ。

それから僕らは王都へ帰り、帰還のお祝いもして、
王様から一生暮らせるだけのお金や土地もいただいた。

そうして人があまりいない田舎で聖女と結婚をして子供もいる。

時折喧嘩することもあるけれども、それでも。
幸せにしたい、守りたい人たちがいる。それだけでなんてハッピーエンドだろう。