【凍える指先】
凍結・凍死・冷凍保存・手袋・愛情・飢え・マッチ棒・タバコ・ライター・ストーブ・かまくら・遭難・雪山・雪崩
悴む手先で覆いながら、ライターで火をつける。ボッ、という音と共にタバコに火がついた。そのままゆっくりと煙を肺に入れていく。この瞬間が1番たまらない。この一時のために生きている、と確信をもって言える。
ホウと息を吐きながら、しかし思考は回る。果たしてこの瞬間は幸せと呼べるのだろうか。この瞬間のために生きている、と錯覚しているだけで、本当はそう思い込むしかなかっただけでは?考えないようにしていても、チラとでもその考えが頭をよぎれば、考えずにいられなくなる。
また煙を吸う。どうでもいい。どうでも良いのだ。人肌の温もりなど得られなくとも、この火の温もりは間違いなく私を温めている。
そのどうでも良いが現状を停滞させている腫瘍だろうが、それももう良いのだ。この一時が最も幸せと錯覚するほうが、私に取っては都合が良いのだ。
悴んだ手先は、とうにまともな感覚を伝えなくなっている。タバコが落ちた。拾う気力もなかった。
【きらめく街並み】
夜景・ネオン・クリスマス・イベント・イルミネーション・嘔吐物・広場・住宅街
状況:クリスマスイルミネーションを眺める主人公たち。
目的:クリスマスイルミネーションをより綺麗にする。
行動:部品を取りに行く/取りに行かない。
行動により変化すること・結果:夜景が綺麗になる/ならない。
【あとがき】
今日からゲームシナリオを簡単に作っていく、というテーマと一緒にやっていこうと思います。この試み、名付けてワンシーンゲーム。今回は初めてということもあって、本当にゲームか?という出来ですが。続けていくと伸びるでしょう。気長に、ですよ。
ところで、きらめくから嘔吐を連想した自分を殴り飛ばしたい。
【秘密の手紙】
開けてはならない・世代を超える・封蝋・封緘・ラブレター・機密事項・郵送・配達
俺は重大なミスをやらかしたのかもしれない。扉の前で空を見上げていた。
「はい〜」
おっといけない、だからって仕事を疎かにする訳にはいかない。
帽子を深く被り直し、手紙に視線を下す。
「日本郵便です〜」
声にも気合いが入らなかった。別に名乗りに気合を入れたことなんてないが。
いよいよここの住人と対面か。一対どんな反応をするだろうか。男だったり荒っぽかったりしたら嫌だった。
しかしその点、声質的にはおっとりした40代〜50代の女性だろう。まぁ女性の年齢なんて予測できない。30代だと思っていたら60代なこともあるし、その逆もある。なんなら男性だった。なんてことすらある。
なんにせよ、声質は割とおっとりしていた。手紙を渡した途端いきなり怒鳴られる、なんてことはないだろう。
手紙を届けて叱られるなんてこと滅多にないが、流石にこんな手紙を届けてもなぁ。
ドタドタと慌ただしい音を立てた後しばらくして、戸が開いた。
「お屆け物です」
さぁ、どんな反応を見せる?顔をチラリと伺う。そこで気付いた。淒い美人だ。所々に皺があり、生きた年の長さを感じさせるが、肌のハリツヤは落ちていない。ガラスのように光を反射して白く輝いている。もし俺が同年代、60代くらいだったら惚れるんだろう。
その顔が見る見るうちに変化した。具体的に言えば、顔のシワが増えた。主に額の。困惑の表情だった。
「開けましたか?」
「いえ」
「……」
女性は不審な表情を変えないまま手紙を受け取り、また見つめながら、そのまま突然年老いたかのようにゆっくりと戻っていく。
「っふぅ〜」
とりあえず、ミッションクリアだ。いやはや、「配達屋さん、開けてください」と縦橫にびっしり書かれた手紙を見た時はどうしたものかと焦ったが。おっとりした女性で本当助かった。
とはいえ、この手紙を出した意図というのはとても気になる。女性に会うまでは、調査なのかと思った。開けてください、と書いてあっても開けない勤勉な配達員かどうかの調査かと。だとしたら女性はこの事実を事前に知っていたはずだし、困惑するはずもない。まぁ、めちゃくちゃ舞台派な可能性は残るけど。
あとは、なんだ。その可能性がなければ単純に女性に対して変な手紙を送っただけ?高齢ではあったが美人だし、異質なストーカーか?でも俺に中身を見るように指示する必要ないしなぁ。
なんにせよ、中身はもう知りようがない。まぁでも、帰ったら一言、真面目にやったことをアピールでもするかな。
【あとがき】
短めにするつもりでしたが、案外長くなりました。それと、早めに明かしたかったのですが手紙の奇妙さが随分後半の開示となりました。その分どんな手紙なんだろう。とモヤモヤしている間、イメージが膨らむという面では面白い。しかし単純に「早く教えろよ」と飽きられてしまう可能性もあります。
最後まで読んで貰わないといいねをもらうことは不可能に近いでしょうし、最後まで読んでもらった方が私にとっては得です。ですから、前半に明かしたかったのですが……
あと、今日のテーマ。最初は世代間を超えて受け継がれる誰も開けていない謎の手紙。を描きたかったのですが、配達員にあけることを指示している謎の手紙、という構図が面白かったのでこちらを採用しました。怖いですよね。でもありえないとは言えない。そして中身がわからない以上、この話ってホラーにもラブロマンスにもなりきれていないんですよ。多分。
【冬の足音】
寒い・冷気・忍び寄る・幽霊・残雪・初冬・恐怖・逃避・忌避・精神
意識が飛びそうになった。ううん。本当は飛んでいた。その言葉を見て呆けてから、もう何分経つんだろう。ストーブを付ける気にすらなれなかった。部屋の中だというのに、いつもよりずっと寒い。
これからどうしよう。なんて、決まってる。フラれたからって人生が終わるわけじゃない。でもずっと好きだった人に他に好きな人ができたって言われて、えぇ……?本当頭が追いつかない。
これからマフラーを繋いで、手を繋いで、ちょっと恥ずかしいけどあったかいね、とか言ってみたりしてクリスマスデートするんだと思ってた。
本当笑えるよね。そんな妄想をしていたのは私だけで、彼は全く別の人を見ていたんだから。
ああ、寒い。これから、ずっと寒い冬がやってくる。
【あとがき】
冬の足音→冬の訪れ→精神的な冬の訪れと連想して書いてみました。今日もずいぶんうまく纏まったと思います。少しずつ情景描写を増やすことにも慣れてきた気がします。文字数を制限している以上、いかんせん情景描写に割ける字数も減りますが。
最後の一文で、主人公の少女に訪れた心の冷えを感じてもらえたらな。と思います。
【贈り物の中身】
今年のプレゼントは期待しててね。昨日玲奈が言っていたことを思い出した。忘れたい、と思っている時に限ってアイツが決まって笑いかけてくる。その笑顔も、もう記憶の中でしか見れない。
後悔しても仕方がないのは分かっている。悪いのは俺じゃない。居眠り運転が一方的に悪い。重々承知だ。でも、もしあの時バスまで見送っていれば。結果は変わっていたのではないか。
棺から除いた顔は、穏やかだ。ただ少し眠っているだけにしか見えない。初めて添い寝したのは付き合って3ヶ月の時だっけ。
何も考えたくない。玲奈の親にもそれなりの言葉しか返せなかった。お互いがお互いを見ていたのに、気持ちだけが別のところを向いていた。去り際にラッピングペーパーを貰った。
玲奈が生前、ラッピングペーパーを楽しそうに見せびらかしてきたのだと。……こんなもの、貰ってなんになるんだ。
玲奈は形から入る奴だった。クリスマスプレゼントも、まずはラッピングペーパーだけ先に買って、何を渡すかも決めてなかったのだろう。何を買ったら喜ぶだろうとか考えてウキウキしている玲奈の姿が浮かぶ。これまで玲奈を想う時間は幸せだった。昨日の今日でこうにまでなるのか。
贈り物の中身は、もう知ることはできない。
【あとがき】
100文字でも良いから小説を書こう。と思ったのが1週間前。そして一昨日、昨日と文量が自然に伸びました。自然にかける、ということは良いことだとは思いましたが、ダラダラと書いているだけで締まりがなく、このまま続けても意味がないと思いました。そこで、今日は「ギュッと詰め込む」をテーマに書いてみました。
結構綺麗に纏まったんじゃないかな。と思います。
ただ一点だけ。一点だけツッコミます。みんな思ったでしょう。葬儀するの早すぎるだろ。ってね。ま、許してください。